京の辻から  =My good days=

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

「この世界の片隅に」

2017年01月25日 | 映画・観劇

「『この世界の片隅に』が今年度のキネマ旬報一位になりました。見てなかったら行きませんか」
こんなメールに誘われて、今日という日を待った。

友人は、昨年11月の毎日新聞掲載記事「失われた町の営み描き 原爆投下前の広島と呉」とした切り抜きをコピーしてきてくれていた。「全国60か所で始まった上映が、最近では200カ所と増えています」と言っていたのは10日ほど前だったから、現在ではさらに増えているのだろう。呉の地元ではロケ地を“巡礼”するファンもいるらしくて、ロケ地マップが作られているのだとか。それを親戚に頼んで送ってもらったと話す。今日で3回目になる友人は多弁で、やたら熱く語ってくれる。

彼女ほどには興奮しないが、じんわり受け止めていた。涙がこぼれることはなかった。
あの時代、主人公・すずの日常と大きく変わらないたくさんの日常があったことだろう。そのすべてを失う戦争の悲惨さを正面切って突きつけるものではない。時代を超えて、すずと共に作品の中を生きることで、そうか、なるほど、ありうるかもしれない、などとうなづけることもあるし、共感も生まれた。慈しみのあるぬくもりを感じさせてくれるラストだった、かな。

「一つの絵を描くために膨大な資料を集め、架空の街ではなくしっかり当時の生活を再現した」「何度も書き直した。プロが描く一枚の絵が記憶を喚起し、忘れていた思い出を話す人もいた」「一人一人のささやかな記憶を大切にすることで70年後の今に伝わる街の存在感を描き得た」、と記事にはある。「製作資金を市民から募ったところ、わずか8日で目標額2000万円に達した」そうだ。

すずがもし生きていたら91歳。父親の年代だと友人は言った。私も“あの日”広島にいたという叔父を思った。すずは決してお話の中だけの架空の人物ではなく、感情を共有できるし、身近な人に想像を重ねることもできる存在だろうか。





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4 コメント

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『この世界の片隅に』 (Rei)
2017-01-26 21:24:18
アニメーション映画なのですね。
私はアニメショーンは殆ど見たことありませんが
「君の名は」も絶賛を博していますね。
日本のアニメは世界一良質とか・・・・
この時代を少しは知る私には共感できるような気が致します。
最近はすべての映画から遠ざかっています。

ふろふき大根の詩、温まりますね。
面取りは致しますが「隠し刃」は初めて聞きました。
アニメでも共感を、Reiさん (kei)
2017-01-27 10:25:27
杉浦日向子さんの「百日紅」が初めてで、これが3作目になるアニメ映画の鑑賞です。
あの時代を普通に暮らしていたたくさんのいのちが尊いことだと思ってみたりします。

「隠し刃」という表現はしませんが、隠し包丁のことでしょうね。
「自分の手で」、ことこと味を染ませた一日にしていきたいです。けど…。
アニメ (ryo)
2017-01-27 21:52:09
こんばんは!
私は本当にたまにですがアニメやコミックを
見ますが、この作品は知っていますが
見てはいないですね。
若い頃は戦争も原爆もまるで興味なく過ごした
私ですが、恐らくは戦死した父のことで、避けて
きた我が家の話題だったと思います。
最近になり、胸がとても痛むようになり、父のことでも涙がでることがあります。
戦争はいけません! 世界に向けての発進ですね。
いろいろな思いが浮かんで、ryoさん (kei)
2017-01-28 12:11:03
こんにちは。

表現しようとすることをくみ取らせてもらう、そんなスタイルで作品に入り込めました。
世界の各地で、こうした悲劇は形を変えながらも続いていますよね。
自己の理念や宗教が絶対的に正しいと確信すると、結局は破壊が起きるようです。
そういえば…、自分は間違っているかもしれない、そう考えることの大切さを何かで読んだ記憶が甦りました。

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