↑長久堂「背くらべ」外が外郎、中は白あん。
五月は馬(午)の月で邪気を祓う月。しかも田植えをはじめる大事な月なのです。
だから色んな行事がのこっています。
・菖蒲
菖蒲(しょうぶ)はよく節供には活けられます。また軒先に菖蒲やヨモギをさしたり、菖蒲湯に入ったりします。菖蒲は、ハナショウブやアヤメと間違われていますが、別の植物です。全体によい香があります。サトイモ科の植物なんです。ハナショウブやアヤメは共にアヤメ科なのです。葉っぱが似ているので混同されます。
菖蒲の葉のように香の強い植物には、魔除けの力があると昔から信じられています。
端午の節供は、早乙女(さおとめ/田植えをする女性)という神を迎える女性を穢れから遠さける意味でお籠りをしていました。その時に魔除けの力のある菖蒲の葉をその籠る家の周りにつけて、女性のお守りをしたのです。
↑京都の老舗旅館「炭屋」の玄関先の菖蒲飾り
いまでこそ五月五日は子供の日といわれていますが、もともとはこの女性のための節供だったのです。その時期に女性がそういう形でいないので、男ばかりでお祝いをすることもあって、徐々に男の子の祭になったんと違うかな。
しかも、女性の守りの菖蒲が、尚武(武を尊ぶ)に通じることから、男性の武を競うものとして男性の節供になっていったのかも。
最近は、女性の尚武のお祝いに近い状態になっているんと違うかな・・・・。
・鯉のぼり
京都市内では、ほんとに鯉のぼりを見かけません。家が狭いし住宅密集しているからでしょうね。
鯉のぼりのいちばん上には、色の吹き流しがなびいていますよね。最近省略されていることが多いですね。ところがこの色の吹き流しがとっても大事なんです。
もともとはこの吹き流しだけを掲げていたんです。
これには、本来は京の都を守る青・赤・白・黒と中央の黄(土)の五色が用いられていました。ただ黒と白が入るとあんまり美しく見えないから、徐々に緑や紫が用いられるようになったようですね。
青・赤・白・黒とは、青が青龍、赤が朱雀、白が白虎、黒が玄武、いわゆる四神相応(しじんそうおう)になります。
そして中央に黄龍が座することになります。
だからこの五色の吹き流しを家にたてることで、その家の災難を除けて守るというのが本来の形。また矢車はくるくる回ることによって悪いものを除去するというような意味と音で魔を退散させるという意味があります。
「やねよりやかいこいのぼりおおきなまごいはおとうさん・・・」と端午の節供に歌をうたっていますがこの歌にはお母さんが登場しないのです。離婚をしたんじゃなくて、お籠り中なんですよ。だから留守が普通なんです。
・五月人形
京都では、武将飾りより、金太郎さんや桃太郎さん、鍾馗(しょうき)さんを飾る家が多かったように思う。最近はどうやろ。
なんで人形を飾るのでしょう?
それは雛人形もそうですが、形代(かたしろ)に穢れを移すことによってその家の子供たちを守るという意味があるのです。
張り子の虎なども魔除けとして必ず登場します。また陣太鼓も音で魔を祓うという意味があります。弓もそうです。弓の弦をはじく音が魔除けになるのです。
すべてが魔除けの五月の節供ですね。