京男雑記帳

洛中で生まれ育った京男が地元視点で見た日常風景や話を雑記的に掲載

二星を聴きながら

2007年07月08日 06時13分29秒 | 和菓子

↑白鳥座付近の天の川

「二星(じせい)」は朗詠です。

「二星適逢 未叙別緒依依之恨
   五夜将明 頻驚涼風颯颯之声」

にせいたまたまあひて、いまだべつしよのいいたるうらみをのべず、
ごやまさにあけなんとして、しきりにりやうふうのさつさつたるこゑにおどろく

二星(にせい)たまたま逢(あ)ひて、いまだ別緒(べつしよ)の依々(いい)たる恨(うら)みを叙(の)べず、
五夜(ごや)まさに明(あ)けなんとして、頻(しきり)に涼風(りやうふう)の颯々(さつさつ)たる声(こゑ)に驚(おどろ)く
高校時代の漢文を思い出すでしょ。あの頃はよさがわからんかった。
あの頃はわからんかったけど、いまは少しわかってきた。



↑二條若狭屋「天の川」葛製、白こしあん↓



これは、『和漢朗詠集』小野美材(おののよしき)
東儀秀樹氏「雅楽 天・地・空~千年の悠雅」(平12・TOCT-24293・東芝EMI)で「二星」が演奏されています。

雅楽〈天・地・空~千年の悠雅~
東儀秀樹
EMIミュージック・ジャパン

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私は、この朗詠がとても好きなんです。

東儀氏の解説は次の通りです。引用させていただきます。
平安時代の中頃に歌曲として完成された朗詠は、中国やわが国で作られた漢詩に曲をつけ、一管ずつの笙、篳篥、龍笛の伴奏で歌われるものです。内侍所(宮中の神殿のある所。賢所)の御神楽の儀に奉仕していた殿上人たちが神楽歌(御神楽の儀で使う歌曲)のような旋律を宴席などで歌いたいと思い、それを漢詩につけて歌い始めたのがきっかけだとされています。古くは数百首近くあったといわれますが今では15首くらいしか残っていません。                    
ひとつの詩を一の句、二の句、三の句と三つに分け、それぞれの句のはじめを独唱し、途中から斉唱(合唱)となります。二の句の独唱部は特に高音(通常より1オクターブ高い)なのが特徴的で男性にはとても苦しい音域となります。一の句が終り、いきなり高音をとるのが大変むずかしいことから、声につまる、つまり「二の句が告げない」という言葉はこの朗詠に語源があるのです。それでも私は二の句が好きで今回も二の句の独唱部を担当しました。                 
「二星」というのは彦星と織姫のふたつの星のことで七夕にちなんだものです。年に一度の出逢いの喜びを語り合ううちに夜が明け始め、別れが近づく。出逢いの喜びと別れの悲しさの間の短い逢瀬のせつなさを描いた詩です。         
 現在残っている朗詠のほとんどが祝賀の内容を表わしたり自然描写で哲学的な表現をするものが多いなか、この「二星」はとてもロマンティックな内容をテーマにしている点が個人的に興味深いところなので収録しました。



↑京都鶴屋鶴壽庵「星の光」葛製、黄あん↓



これを聴いているととてもやさしい気持ちになりますよ。
いつか草原に寝転がりながら星空をジッと見ていたことがあります。
あの時、宇宙の音が聴こえた感じになりました。
昔の人は、きっと宇宙の音が聴こえたんでしょうね。
現代人は、天(そら)を観る機会が少ないですね。
天はわれわれを見守ってくれているのに。
コメント (4)
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