川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

「グーグル・アマゾン化する社会」と「人体 失敗の進化史」

2006-09-27 11:47:51 | ひとが書いたもの
きょうは余裕があるで、最近読んだ新書にコメント。次の二冊。はからずも光文社。

グーグル・アマゾン化する社会グーグル・アマゾン化する社会
価格:¥ 735(税込)
発売日:2006-09-15


人体 失敗の進化史人体 失敗の進化史
価格:¥ 777(税込)
発売日:2006-06-16

まずは、森健さんの方から。
やたら売れた梅田望夫氏の「ウェブ進化論」以来、「ロングテール」なんぞがキーワードになって、こと素人同士の会話でweb2.0がどうしたなんてことも飛び出すようになり……そんな中、若干感じていた違和感に答えてくれた本。

ロングテールは、たぶん、個人的にはありがたい。
たとえばぼくの仕事で、恐竜の頭のようなメガヒットはあまり出そうにない。よくて「首から肩」。悪いと腰まで振れちゃうかも。もちろん、過去作品は尻尾の彼方……。
とはいえ、この時、ロングテールをビジネスに取り込むのに成功しているのって、ぱっと見、アマゾンだけで、儲かっているのかどうか分からないけれど「続いている」対抗馬として、bk1やら楽天書店やらがある程度。

多様性の維持と一極集中がワンセットというのが、なんとも皮肉で、なんでこんなことになるんだろうと思っていた。
森健さんの回答は「スケール・フリーネットワーク」であり、そのこと自体は聴いた瞬間に膝を打つことなのだけれど、現状分析から丁寧に起こして、まわりを固めて展開しているので、ぼくみたいな「ネット使いではあるけれど、ネットウォッチャーではない」者にとっては、ありがたかった。

たぶん、ぼく的クラスター(?)の人にはお勧めできるか、と。

さらに、遠ちゃんこと、遠藤秀紀さんの本。

これは、また例によって、よい本。
遠ちゃんが書くものは、動物の遺体を扱って、数々の感動に満ちている。
今回の本では、生き物が進化の中で、さまざまな器官の設計変更を繰り返してきたことに焦点を当てている。

たとえば、人間(哺乳類)の耳の耳小骨は、祖先の動物の顎関節の一部で、さらにその顎関節は、もっと前を言うと、魚類の鰓弓だった可能性が高いそうだ。つまり、進化史上、呼吸器官→咀嚼器官→感覚器官というふうに転用されてきたわけで、なんとも凄まじい。

ただ、はじめて、遠ちゃんの本に批判的なコメントをするなら、「筆が立ちすぎる」。
この本の場合、「失敗の進化史」というコンセプトがまずあるので、そのコンセプトにストーリーをたえず関連づけつつ議論が進むのだけれど、それがあまりにすんなりすっきり進みすぎて(つまり、筆捌きがすばらしい)、逆に、え? ほとんうにそれだけなの?って気分にさせられた。

遠ちゃんは人間の体を「行き詰まった失敗作」と表現し、実際に語られるエピソードはそれを支持して余りあるのだけれど(どんなところが失敗作なのかは、読んでくださいね)、つい、本気でそう思っている? とも聞きたくなってしまう。
だって、遠ちゃんなら、「失敗の歴史」じゃなく、「進化ってワンダフル」という本だって、同じネタを元にして書けてしまいそうだ。

というわけで、とにかく推奨すべき本ですが、同時に、「パンダの死体はよみがえる」も読んでいない人はぜひ、なのでした。
パンダの死体はよみがえるパンダの死体はよみがえる
価格:¥ 735(税込)
発売日:2005-02-08


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なるほど、「パンダの死体はよみがえる」読んでみ... (ヨーダ)
2006-09-29 20:23:21
Web2.0への違和感をもっとストレートに、毒も含めて率直に表現してくれている本として「Web2.0が殺すもの」があります。こちらもオススメです。
了解です。 (本人)
2006-09-29 21:35:15
今度、ネットな気持になった時に読んでみます。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。