川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

「PTAは自由に入退会できる」と公に言えない行政にはどんな事情があるのだろう(やたら長文注意)。

2009-06-22 22:10:11 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
もう1ヶ月以上前のこと。
ある西日本の自治体とPTAのあり方について、何度もメールのやりとりをした。ウェブサイトに出ている公式の窓口を通じてのやりとりなので、「公式見解」であると理解しているのだけれど、なかなか珍妙な問答になってしまった。

そのきっかけは、教育長が出演する自治体のローカルFM局で、市P連の副会長より下のような質問があったこと。

***************
主に地方紙ですが,川端裕人さんの「PTA進化論」という連載が掲載され,さまざまな反応があります。学校・地域にいかに保護者の参画をしていただくか四苦八苦している中,組織の自由参加やひいては不要論に近い表現も見受けられ,同じPTAで活動するものとして残念でなりません。今,教育の現場でPTAに何を求め,何が必要とされているのかお聞かせください。
***************


「組織の自由参加」というのは、当たり前のことなので、それを問題視されてもこまる(というか、それを公にしないで運営しているPTAはこまる)ので、そこのところはっきりさせておこうと電話で問い合わせたのが始まり。すぐにメールのやりとりとなって、何往復も「自由な入退会」をめぐって、教育委員会の認識を問うことになった。

結論として、非常に驚いた。
ぼくはこれまで、たぶん10以上の自治体の教育委員会の社会教育主事やPTA担当者と話をしたことがあるけれど、誰一人として、「自由な入退会が原則」ということに異を唱えた人はいない。それどころか、その部分にPTAの悩ましさを感じてい ると表明する担当者がほとんどだった。

けれど、ここでは、少なくとも「公の発言」としてそれを認めることができない、というふうなのだ。

まずは、F市教育委員会の認識。
これはたぶん最初の電話で語られたものであると記憶している。

PTA組織は,社会教育関係団体であり,会員の意思で運営されるべきは当然です。

以降メールにて交わされた質問と回答を採録。
資料的に読んでください。

*************
質問1
(PTA組織は,社会教育関係団体であり,会員の意思で運営されるべきは当然です、との認識は)、社会教育関係団体であり、つまりは、会員はみずからの意志にもとづいて入退会でき、その上で、会員の意志に基づいて運営されるべきは当然。
と理解してよろしいでしょうか。

回答1
○PTA組織の性格について
PTAは,社会教育関係団体であることは言うまでもありません。したがって,その組織をどのように運営するかは,会員の意思に基づき,自主的に判断されるべきは当然のことです。

 
************
質問2
PTAが、自由に入退会できる団体であると認識されいているか、ご回答ください。
1.PTAの運営が会員の意志に基づくかどうかではなく、PTAに加入するかどうかを、個々人が選べるかどうか。
2.そして、入会後も、みずからの意志で退会できるかどうか。
これらについてどのような認識をお持ちか、ということです。

回答2
PTAにつきましては,その組織をどのように運営するのかは,会員の意思に基づき,自主的に判断されるべきことです。
 
*************
質問3
さて、質問の意図が、うまく伝わらず残念です。
また頂いた回答も、個別の質問に対して答えて頂けず、せんだっての回答を繰り返していただいたのみのような気がいたします。

そこで、質問を変えさせていただきます。

まだPTAに入会していない未加入の保護者は、当然ながら会員ではありません。
したがって、PTAの「会員の意志に基づいた自主的な判断」の適用外にいます。
こういった保護者が、未加入のままでいたいと考えた場合、加入せずにすむことを、ご確認いただけましょうか。
F市のPTAというくくりではなく、社会教育関係団体としての常識に照らし合わせて、社会教育に携わる行政サイドの見解として、ご回答お願いいたします。


回答3
前回の回答につきましては
○ 社会教育法第10条には,
「この法律で,「社会教育関係団体」とは,法人であると否とを問わず,公の支配に属しない団体で,社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするものをいう。」
とあります。
○ 公の支配に属しないとは,行政側から支配力を及ぼさないことであり,言い換えれば,その構成や事業内容等について,具体的な発言や干渉をしないことと解されます。
○ したがって,PTAのあり方については,
「PTAにつきましては,その組織をどのように運営するのかは,会員の意思に基づき自主的に判断されるべきことです。」との回答をさせていただいたところです。

今回のご質問ですが
○ 個人が団体に属さないことにいては、あくまで個人の判断に基づくことであり,行政としてコメントすべき問題ではありません。


****************
質問4
1. (文部科学大臣及び教育委員会との関係)第11条 文部科学大臣及び教育委員会は、社会教育関係団体の求めに応じ、これに対し、専門的技術的指導又は助言を与えることができる。
との条文からも分かるように、教育委員会は、PTAからの求めに応じて、助言を与える立場にあると理解しています。今、あるPTAより、「会員の中に、PTAは自由に入退会できるはずだと述べる声がある。PTAの社会教育関係としての位置づけ、その他、法規との整合性を考えると、PTAは自由に入退会できる団体だと考えるべきなのか」と相談があった場合、どう助言をされますか。
ちなみに、私が世田谷区で似たこと聞いた際、回答は「もちろん、自由に入退会できるのは、社会教育関係団体であり、任意団体であるPTAとしての前提であろう。しかし、会の性質上、できるだけ理解を求め多くの人に参加を求めていってほしい」という主旨の回答でした。

2.一個人が、会に属するかどうかは、個人の問題とのこと。
しかし、PTAについて思い詰めて、一個人が教育委員会に「正確な」知識を求めて連絡をしてくることがあると思います。また、それに対して適切な助言を行うのも自治体の生涯学習関連部局の役割と理解しています。
そこで、「子どもが入学したとたん、入会届けも出していないのに、会費の請求が来た。できれば入りたくないのだが、PTAは必ず入らなければならないものなのか」という問い合わせが来たとすると、どのように助言されますか。ちなみに、私が世田谷区で似たこと聞いた際、回答は「もちろん、入会しない選択肢もある」という主旨の回答でした。

議論におつきあいいただきありがとうございます。

回答5
今回のご質問ですが,直接のコメントは差し控えさせていただきますが,現在のPTAの状況につきましては,次のような答申も出されているところであり,今日的な状況をふまえるなかで,地域社会が学校を支援するような仕組みづくりが必要と考えています。

本年2月19日付けの中央教育審議会答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策~知の循環型社会の構築を目指して~」において,
4 具体的方策 (2)社会全体の教育力の向上?学校・家庭が連携するための仕組みづくりとして,「学校・家庭・地域を結ぶPTA活動の充実」について次のような記述があります。
(抜粋)
PTAは保護者と教員がお互いを高めあい,子どもたちの健全な育成を支援する団体であり・・・・・・・学校・家庭・地域を結ぶ重要な役割を担っている。近年,一部の地域では・・・・・・・・様々な価値観からPTA離れが進んでいるとの指摘もあり・・・・・・・・・・・・・。保護者にとって,PTA活動は,地域の社会活動への参加の端緒となるものであることから,学校・家庭・地域の連携・協力を進めるうえで重要であり,各地域におけるPTAの活動状況等に関する実態の把握及び活動の充実が求められる。


****************
質問6
最後の質問にしようと思っていましたが、回答が得られなかったため、もう一度だけ。
一般論としてで結構です。
すべての社会関係団体は、会員(あるいは会員になりうる者)が自分の意志で入退会を決めることができるものである。というわたしの認識は間違っておりますでしょうか。
ぜひ見解をお知らせください。


回答6
議論がすれ違いになってきており,PTAのあり方について,改めて,川端様の連載された「PTA進化論」を読ませていただいたところです。
そのなかで,『「PTAのための会員」ではなく,「会員のためのPTA」』であり,また,『「何が子どものためになるか」議論しおとなが考えを深めていくところから始まるのがPTAであって,保護者自身の成長を子どもに還元するのが本来の発想』というご意見には全面的に賛同するものです。

本年2月19日付けの中央教育審議会の答申には,「近年,一部の地域では,共働きや勤務形態の多様化により,PTA活動に参加したくてもできない保護者がある一方で,様々な価値観からPTA離れが進んでいるとの指摘もあり,活動が停滞しているPTAもあると考えられる。保護者にとって,PTA活動は,地域の社会活動への参加の端緒となるものであることから,学校・家庭・地域の連携・協力を進めるうえで重要であり,各地域におけるPTA活動状況等に関する実態の把握及び活動の充実が求められる。」とあります。

また,『東京都江戸川区では,「ボランティア制度」を取り入れるPTAが増えている』とのことですが,F市においても,できることから始めようとの考え方で,PTAとは別にスクールサポートボランティアも導入し,約8,000人の登録があります。

こうしたなかにあって,F市では,各小学校で保護者が児童に読みきかせ活動などを行う「図書ボランティア」や,中学校区の単位で「おやじの会」を組織して地域行事に参加するボランティア団体など,「地域の保護者が地域の学校を支えよう」という人の輪も広がりつつあります。

それぞれの保護者が,できるところから始めることが大切と考えています。

*****************
最後のメール

ご丁寧なお返事をありがとうございます。

議論はすれちがっていはないと思います。
わたしの質問は最初から一貫して、PTAの自動加入はいけないのではないか、社会教育関係団体はすべて自由に入退会できるものではないのか、という認識について、F市教育委員会の見解を問うているだけです。
ですので、すれ違いというよりは、悪い言葉であえていいますと「はぐらかし」だとかんじております。
あしからず。

目下、むしろ、私の関心は、なぜ「はっきりとした回答がいただけないのだろう」ということに移ってきております。
PTAが本来自由に入退会できること。
それは、我が国の憲法から、関連各法規に照らし合わせれば、いわずもがなの「常識」だとわたしは考えています。また、かつて、直接取材したり、非公式に会話をした教育委員会関係者、特に社会教育主事の方々から、異論を聞いたことがありません。
というより、自動的な全員加入ついても、むしろ、今のPTAの問題として考えてらっしゃる社会教育主事の方がほとんどでした。

しかし、公式の見解として、それを言葉にすることをためらわねばならない諸状況があるのだとしたら、いかなるものなのだろうか、と興味津々です。

もっとも、このようなことにご回答いただくわけにもいかないでしょうし、今回のメールは、これまでのやりとりについてのコメントとお考えになってくださって結構です。

F市で、PTA経由ではなく、直接、学校にかかわる方法を模索されているのは、すばらしいことだと思います。
ボランティアという形をとることで、「やりたくてやっている」「かかわることで、視野がひろがる」「子どもたちの笑顔に出会える」といったポジティヴな体験を積み重ねた保護者は、PTAで無理にたばねられてなにが子どものためになるのか分からないまま活動している保護者よりも、よりよい形で「地域への参加の端緒」に出会いうるかもしれません。

本年2月19日付けの中央教育審議会の答申には,「近年,一部の地域では,共働きや勤務形態の多様化により,PTA活動に参加したくてもできない保護者がある一方で,様々な価値観からPTA離れが進んでいるとの指摘もあり,活動が停滞しているPTAもあると考えられる。保護者にとって,PTA活動は,地域の社会活動への参加の端緒となるものであることから,学校・家庭・地域の連携・協力を進めるうえで重要であり,各地域におけるPTA活動状況等に関する実態の把握及び活動の充実が求められる。」とあります。


とのことですが、実は「各地域におけるPTA活動状況等に関する実態の把握」には期待しています。
価値観が多様化していることを前提に(価値観の多様化は社会の成熟とともに必ず起ることであり決して悪いことではありません)、なおかつ今のPTAの全員に自動的に網をかける「違法性」すらありそうな入会形式や、役員の非常な負担の重さ、時に人権問題にすら発展する役員・委員決めの苛酷さ、形骸化し純粋に子どものためになっているのか分からない事業や会議の多さなど(次年度の役員選出が年間を通じての最大の関心事であるようなPTAも少なくないのです)を、正しく理解すれば、安易に「PTA活動の充実」などとはいえなくなるはずです。少なくとも、今のままのPTAでは。

それでは、これまでのメールでのやりとりにおつきあいいただき、ありがとうございました。
私ももう少し早く、「あきらめる」べきであったかと反省しております。

川端裕人
******************

以上、やりとりの中で、一応すべてはつくしてあると思うのだけれど、たぶんメールの相手をしてくださった方も、直接会って非公式な立場なら、別にこんなふうな回答にはならなかったような気が強くいたします。
なぜ言えないのか、そのことに強く疑問を今も抱いております。



めずらしい現象

2009-06-22 13:46:51 | 自分の書いたもの
7月に出る本は、両方とも角川から、珍しいことだ。
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=200706000263
http://www.tsubasabunko.jp/03shinkan.html

BE-PAL (ビーパル) 2009年 07月号 [雑誌]BE-PAL (ビーパル) 2009年 07月号 [雑誌]
価格:¥ 680(税込)
発売日:2009-06-10

で、そのことと特に関係ないのだが、この号のビーパルにも、ちょこっと顔を出しています。
最近のこの雑誌は、「足下」をとても重視する姿勢がどんどん強くなっていて、ぼくとしても心強いのだ。
「この夏は田舎のおじいちゃん家から半径500メートルで野遊び」という特集がよい。