「007/カジノ・ロワイヤル」の公開を勝手に記念して、歴代ジェームズ・ボンド/007を不定期に振り返ってみたいと思います。記念すべき第一回目は3代目ボンド、ロジャー・ムーアです。
初代ボンド、ショーン・コネリーを飛ばして一回目からいきなり3代目のロジャー・ムーアなんですが、個人的にジェームズ・ボンド/007と言えばやっぱり子供の頃にリアルタイムで観たボンド、ロジャー・ムーアになります(なんせヒーローと言えば戦隊物よりもジェームズ・ボンドというおませな子供でした)。もちろん歴代ボンドの中でも最多の登板数(コネリーが6作に対し、ムーアは7作)を誇ります。
ロジャー・ムーアのボンドと言えば、どんなピンチでもユーモアを放つ余裕を持ち、一方でサラリとウンチクを傾ける。そして、特製のロレックス・サブマリーナや潜水艇に変形するボンド・カー、ロータス・エスプリといった秘密兵器をいとも簡単に使いこなす。ボンドガールをセクシーに口説くのはもちろん、敵の女性に撃たれても笑顔で会釈する。歴代ボンドの中でもっともスマートに任務をこなしたのがムーア=ボンドと言えます。
ムーア=ボンドの代表作と言えば、初登場となる8作目「死ぬのは奴らだ」、殺し屋・スカラマンガとの死闘を描いた9作目「黄金銃を持つ男」も捨てがたいですが、やはりムーア=ボンドの魅力がたくさん詰まった10作目「私を愛したスパイ」ですね。コネリー=ボンドと比べるとギャグが多く、一見軟派なムーア=ボンド。「死ぬのは奴らだ」でワルサーPPKに代わりS&W44マグナムを使うなどコネリー=ボンドとは違うアプローチでボンド役にあたった感がありますが、大人になって「私を愛したスパイ」を改めて見直して気づいたのが過去のボンドを決して忘れてはいなかったということ。劇中6作目「女王陛下の007」でのエピソード(宿敵ブロフェルドにヒロインを殺される)に触れられ、一瞬キレるシーンは7作目「ダイヤモンドは永遠に」で復讐に燃え、宿敵ブロフェルドを追うコネリー=ボンドよりも迫力がありました。それはムーアがこれまでのボンドを踏まえた上でボンドに自身の個性を持たせたことによって007が現在まで続くシリーズになった要因になったのではないでしょうか。