森の空想ブログ

森の空想ミュージアムと九州民俗仮面美術館のお知らせブログ

野葡萄で明るい「金茶」と渋い「銀鼠」が染まる  [空想の森の草木染め<53>]

2016年10月19日 | Weblog
21日からの秋の森の草木染めワークショップ予告です。3年前の記事を再録。



野葡萄の紅葉が始まった。

私たちが住んでいる「森の空想ミュージアム/九州民俗仮面美術館」の周辺の森には、櫟や栗、樫、杉、檜などが繁る混生林があって、午前中は、日向灘から上った太陽が森を暖め、午後になると、陽射しは黄金色となって森に降りそそぎ、大地も暖かな茶褐色となって、農地に植えつけられた野菜を温める。
その農地と雑木林との間、日陰と日なたとが交差する地点に、一本の大きな野葡萄の蔓が垂れ下っている。杉の大木に巻き付いた蔓の一端が中空へと伸び、その重みで下へと垂れて、また上へと伸びて行こうとする蔓などと絡まり合ったまま、実を付けているのだ。その一房を摘み取り、口に運ぶ。甘酸っぱい味と香りが口中に満ちる。


もはや、遠い風景となってしまった出来事だが、ある秋の日、麗しい美少女と二人で山を越えたことがある。その頃、すでに別のひとと暮らし始めていたのだから、この事態は世間の常識に照らせば不適当な関係に該当するかもしれないが、峠道で野葡萄の蔓を見つけた時に生じた衝動は、制御できない強さで若者の行動を促した。彼(すなわち若き日の筆者)は、その一房を摘んで、彼女に与え、自らも口にした。彼の直感と予測によれば、二人はその直後には野葡萄を含んだ唇を寄せ合う段取りであった。ところが、彼の口中に広がったのは、爆発的な苦みと、辛味と悪臭の混じった衝撃であった。なんと、野葡萄の房には、あの、地上最強の悪臭を放つ昆虫「カメムシ」が含まれていたのだ。
破局は、悪臭と苦くて甘酸っぱい味覚とともに、突然訪れたのである。



野葡萄の房を丹念に摘み取り、ホワイトリカーに漬け込んでおくと、簡易の葡萄酒ができる。若き乙女が口に含み、壺や甕の中にに吐きだして蓄え、発酵させたものが最上の葡萄酒であり、古代の女性シャーマン(日本では卑弥呼や神功皇后など)が新穀(米)を噛み、醸して酒を造り、神に捧げた祭りが高千穂神楽の「酒濾しの舞」のような芸能と結びついた。森の古木の祠などに猿やリスなどが貯蔵しておいた木の実が発酵したものを「猿酒」という。



野葡萄の蔓・葉・実を一緒に採集し、染めると、銅媒染で秋の夕陽の色を映す「金茶」が染まり、鉄媒染で「銀鼠(ぎんねず」が染まる。
いずれも、もとの植物からは予測できない深い味わいの色である。
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