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枇杷の花酒と電気ブランは「昔の男」の香り [花酒と旅の空<12>]

2017年06月20日 | Weblog


ビワ(枇杷)の実が熟れた。
ビワは、極寒の1月頃に目立たない灰白色の花を付ける。
神楽の季節、山深い村の「神楽宿」に隣接した畑から少しだけいただいてきたその花を、焼酎に漬け込んでおいたものが、いつの間にか琥珀色の花酒となっていた。飲んでみると、浅草の神谷バーの「電気ブラン」と同じような味がする。私は年に一度か二度東京へ行く仕事があるが、滞在中に、浅草に行き、一人で神谷バーへ行くのが楽しみである。そこには、席のあちこちに鳥打帽を被った初老の客がいて、静かにビールを飲みながら文庫本を読んでいる。広い東京で、私の居るべき場所はここだけだという気がするのである。卓上に「電気ブラン」の盃が置かれていることもある。電気ブランとは、アルコール度数40度の濃いリキュールだが、口に含むと芳醇な薬酒の香りがする。
ビワの花酒は、神楽の音楽を響かせ、「昔の男」の香りを漂わせる。



真冬に咲いたビワの花はいつの間にか散って、春の盛りに小さな青いつぶつぶの実が葉の陰に隠れるように固まって着き、雨が降り続く梅雨期に実る。過酷な条件を好むかのようなこの植物は、平安の昔から癌の治療に用いられた例がある。私は慢性膵臓炎に悩まされていた頃、居酒屋で出されたワインのような色をした枇杷茶を飲んだら、すーっと身体にしみ透るような感触がして、楽になった経験がある。以来、数種類の薬草を季節ごとにブレンドした「野草茶」を愛飲している。
葉を利用した温灸は筋肉痛や内臓疾患、ある種の癌治療などに即効性がある。ビワの葉風呂がアトピーに効果があったという報告もある。ただし、種に含まれる微量の青酸配糖体や葉裏のビロード状の粉末体が人体に有害であるという分析もあるから、内服の場合は連続服用は注意が必要。

ビワは染色素材としても一級品である。皮または葉で、熟れた果肉のような赤みがかった淡黄色が染まる。ビワの葉染めのガーゼのマスクは、花粉症や風邪の予防になる。




今年は、梅雨に入って晴天が続いたため、ビワの実が甘い。こんな甘いビワを食べたのは、少年の頃、学校帰りに、村はずれにあるビワの大木に登って食べた時以来のことだ。
その食べきれないほど実った実を、枝を揺すって落とし、拾い集めて、森にばら撒いておく。自然発芽を待つのである。
古来、ビワの木は畑の隅や人家から少し離れた場所に植えられるものとされた。有効と危険を併せ持つ植物だということが知られていたのである。
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