森の空想ブログ

森の空想ミュージアムと九州民俗仮面美術館のお知らせブログ

森の蛍を見ながら [森へ行く道<29>]

2017年05月26日 | Weblog


夕方、敷物を持ち出して、家(九州民俗仮面美術館)の前の広場に広げ、寝転ぶ。西の山が茜色に染まり、それから深い藍色に沈み、森が陰影を濃くする。
広場は、二十年ほど前まで子供たちが運動場として使っていた空き地で、今は草地となっており、小さな白い花が咲いている。寝転んだまま、その花を眺めると、深山のお花畑にいるような風情である。森を闇が包み、木々の姿が夕空に黒い樹形を描くころ、森の奥からヒメボタルが舞い出てくる。
ちかちか、ちかちか、ちかちか。
赤紅(あかべに)色の細かな点滅を繰り返し、蛍は闇の中を飛び交う。闇が深くなるにつれて、その数は増え続けてゆくが、周囲が明るくなるというほどの光度ではない。森の闇はあくまで闇であり、蛍は明度をもたない光源である。けれどもそのはかなくかそけき点滅は、漆黒の森に無数に象嵌された神秘のともし火となって煌き、揺れ、乱れ、逍遥し続ける。

ヒメボタルは「森の蛍」とも呼ばれる陸生の蛍である。このヒメボタルに比べたら、ゲンジボタルはよほど大きな蛍といえる。1センチに満たない巻貝を食餌として生息する。この巻貝の育つ環境がなければ生きられない。森の蛍はまさしく森によって生かされている蛍である。
時折、広場から「九州の民俗仮面」が展示してある部屋のほうへとさまよい出ていく冒険者がいる。ガラス窓にその明滅が映る。仮面の部屋が、ひととき、幻想空間となる。





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