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小川の夏・フォト俳句 平成の桃源郷/西米良村小川エコミュージアム7

2011年09月08日 | Weblog
緑がまぶしく、水神の座す滝からは清冽な水が流れ下る西米良村・小川の夏。「おがわ作小屋村」にも多くの人が訪れ、谷間には蝉の声や鳥のさえずりが響いている。作小屋村と小川川の流域を散策しながら、写真と俳句で、小川の夏のひとコマを表現するのが「フォト俳句」である。源氏物語の昔から、日本には、絵に書(和歌)を添えるという美学がある。芭蕉、蕪村などが好んだ「俳画」もその伝統をふまえたものである。写真に俳句を添えるという表現法はまさに現代の俳画といえる。



参加者が集まってきた。作小屋村の軒下に置かれた大甕にはススキが活けられ、初秋の風情をかもし出していた。俳句の作り方、写真の撮り方は、小川神楽にもたびたび訪れている東京の石地まゆみ氏(俳人協会会員・未来図同人)を講師に招き、手ほどきをお願いした。石地さんは、九州・宮崎の神楽に魅せられ、10年以上宮崎通いを続けておられ、宮崎の山野にも精通。写真もプロ級の腕前。愛用のデジカメを持って参加した初心者の皆さんに、楽しく、やさしく教えてくださったのである。



レクチャーの後、早速現場へ。小川川中流の中入橋の袂に車を停め、渓流沿いの道を歩いた。晴れていた山に霧がかかり、雨が降ってきた。これもまた絶好の句材。谷沿いの道の脇には葛が葉を繁らせ、崖にはスゲやイワタバコなどの珍しい植物がみられた。スゲは菅笠の「菅」で、高山の岩場に生える。かつて米良の山には「スゲてご」という籠があったが今は作る人もいないという。イワタバコも渓流沿いの岩場に生える植物で、「チシャ」の葉に似た一枚葉が下向きに密集して生える。胃病に効く薬草として珍重される。この日、薄紫の可憐な花を付けていた。



さらに川沿いの道を遡ると、「蛇淵(じゃぶち)」と呼ばれる深い淵に到る。この淵には「うるし兄弟伝説」が伝わる。
「昔、漆取り兄弟の兄安左衛門は蛇渕の底に上漆が溜まっているのを発見。それを売りさばいていると、弟十兵衛が嗅ぎ付け、同じように蛇渕から取り出し売りさばいた。兄はその現場を見て、二度と取らせまいと木彫り職人に頼んで龍を作った。これを渕の底に沈め、弟が逃げ帰るのを見、ほくそ笑んで渕に潜ると、龍の目は爛々と輝き、のたうち、尾を振った。兄も恐れて逃げ出し、二度と蛇渕に潜れなくなった」
以上がその要約である。古い村の記憶を秘める淵は、今も青々と水を湛え、滝の音を森に轟かせている。木製の段々を降りて展望所から遠望するだけで、背筋にぞくりと寒気を覚えるほどである。



古老から蛇淵にまつわる伝説を聞き、草むらの野草に目を留める。ギョウジャニンニクやヘクソカズラの花なども発見。手帳がメモで埋まっていく。


 
上流へ向かうほどに谷は深く、険しくなる。この渓谷では、ヤマセミやアカショウビンなどの珍鳥を見かけることもあるが、この日は姿を見ることができなかった。谷に沿った道が大きな崖にぶつかる所で道は大きく左右に分岐している。左は天包山を経由して村所・椎葉へ到る道。右は銀鏡・尾八重・中之又と連なる米良山系の深奥部を貫く道。いずれも、古道の面影を残す山の道である。分岐点のすぐ右手に虹の滝が見える。水量の豊富な二段の滝である。その名が示すとおり、一年に何度かはこの滝に美しい虹がかかるという。
虹の滝から右へと上る道を500メートルほど進むと、左手に幅広く切り立った崖が見えてくる。その崖の最上部から、水は溢れ出し、垂直に落下してくる。途中で木立に遮られ、一部は段状に出張った崖を叩きながら飛沫となって飛び散り、また落ちて来る。穏やかな日であれば、水は白布を引いたように崖を装飾する。「布水の滝」と呼ばれる所以である。滝の水は、そのまま、巨岩が積み重なるガレ場を一気に200メートルも流れ下ってようやく鎮まり、小川川の清流となるのである。米良の山塊を背後に控えたこの滝を遠望すると、まるで天空から落ちて来る滝のようにも見える。この滝には、「布水の荒神」が鎮座し、村人の信仰を集めている。布水の荒神とは、米良の山神であり、水源を司る荒神である。毎年、十二月の第二土曜日に小川米良神社で開催される小川神楽では、この布水の荒神が青い荒神面を付けて降臨し、天地・自然の理(ことわり)や米良山根源の物語、神楽の由縁などを説く。



作小屋に戻り、美味しい「四季御膳」をいただいた後、講評と発表会。



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