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日本の麻(大麻)文化の伝統を守るために[宮崎神楽紀行<番外>]

2017年06月14日 | Weblog


日本の麻(大麻)栽培の伝統が危機に瀕しているという報告がある。
作家の森まゆみ氏から贈られてきたメッセージを下記に転載。
・上記の写真は高千穂神楽に用いられる「御幣」。高千穂地方に20座を伝える「高千穂神楽」では、現在も古い時代に作られた「大麻」による「御幣」が使われ続けている地域がある。

               記

「日本の麻(大麻)の伝統を守るため責任ある議論を」

        日本麻協議会 事務局代表     若園 和朗

今年一月、横綱昇進を果たした稀勢の里関の綱打ち式の様子が大きく報道されました。そして、その綱の主材料は麻(大麻)※1の繊維であり、それは栃木県の麻生産農家、大森由久さんにより奉納されたものだと伝えられました。

一方、伊勢では「存続の危機に瀕している国産の麻(大麻)の伝統を守る目的で、神事に使うための大麻の栽培許可を三重県に申請したが、認められなかった」と報じられました。そして、最近も大麻の不法所持で逮捕された芸能人のことが新聞やテレビをにぎわせています。

繊維として使われている「大麻」と危険な薬物としての「大麻」、神事として奉納される「大麻」と取り締りの対象である「大麻」との間で、いったい何がどう違うのかと、混乱している方も多いのではないでしょうか。

日本の麻(大麻)は有害なのでしょうか?国産の麻(大麻)の伝統を守らなくてもよいのでしょうか?栃木と伊勢の事例から考えてみたいと思います。

まず心配になるのは、大森さんの麻(大麻)は有害な薬物として濫用されないかということだと思います。結論から言うとその心配はありません。なぜなら、栃木県の麻(大麻)は、濫用のもととなるTHC※2という物質の含有率が充分に低い、無害な品種だからです。もし吸引したとしても、ただ煙たいだけです。

実は、栃木ではかつて意図せずして有害な大麻との交雑が起こり、薬物濫用目的の盗難が頻発しました。そのため、それを乗り越える対策を講じた歴史があるのです。

「我が国の麻(大麻)は元来無毒だった。しかし昭和20年代頃に南押原一号という品種が、海外の有毒麻と自然交雑し有毒化した。昭和40年代になるとヒッピーブームなどの影響で、大規模な盗難が発生した。困った生産者たちは、無毒麻開発プロジェクトを開始。困難を乗り越えて無毒麻『とちぎしろ』を完成。昭和59年、同県の麻は全て『とちぎしろ』に転換されマヤク使用の温床となる麻の盗難は皆無となった。」栃木県庁のホームページより※3

伊勢での申請は、とちぎしろと同等の安全性を持つ「たね」を近隣の県から導入し、管理を徹底した上で栽培していくという計画でした。
今回の申請が認められなかった理由は、「薬物まん延を警戒した」「盗難対策が不十分」とのことですがこの判断について皆様はどのようにお考えでしょうか?

そもそも大麻取締法は大麻を禁ずるためにできたと考えられがちですが、本来は占領軍が押し付けようとした大麻全面禁止の処置から日本の麻(大麻)を守るために作られた法律です。

昭和21年に占領軍は、わが国に対し大麻栽培の全面禁止を命令しました。

しかし日本の麻(大麻)は無毒であることは経験的に知られており、それまで米に次ぐ農産物で、衣類、油、漁網、食料などとしてさかんに使われていました。このままでは、生産農家が困窮するとともに生活必需品の供給が止まってしまいます。それでは困るとして農林省(当時)がかけあい、一定の制約条件のもとなら栽培ができるようにした法律です。従って、制定時の精神からすると、今回の三重県の決定は不適切と言えるでしょう。

また麻(大麻)は、伝統的な使い方だけでなく、環境負荷の低い循環型の資源としても期待される作物です。茎は建材や燃料として役立ち、丈夫な繊維がとれ、たねは良質の油(オメガ3、6)を含む食料になります。そのため、海外では近年THCが少ない品種なら濫用に結び付かないとの理解が高まり、法や制度を見直し、栽培を奨励する国が増えてきました。

ヨーロッパやカナダでは1990年代に制度を整え、THCの含有率の低い品種を「産業用大麻」として一般産業に活用できるようになっており、例えばベンツやBMWなどが自動車の内装材に大麻素材を採用しています。
中国においても、2008年からTHC含有率によって品種名称が定義づけられ無毒な品種を古くて新しい環境に優しい資源として積極的に活用するようになっています
アメリカも2013年に法を改正し、無害な「産業用大麻」に限って栽培を推奨するようになりました。※4

わが国もTHCの含有率を元に品種を区別し、安全な品種を活用できるよう方針転換すべきではないでしょうか。

一方で、大麻の薬物濫用を広めようとするいわゆる「マリファナ解禁派」が、日本の麻の伝統保護を語りながら「マリファナ解禁」を目指すという不穏な動きをしています。
そのため厚生労働省が神経質になることはよく理解できます。こうした動きへの適切な対応が日本の麻(大麻)を守れるかどうかの要なのかもしれません。

残された生産者は全国でわずか30名ほど。手遅れになる前に、この問題に真摯に向き合い、わが国の将来を見据えた責任ある議論が始まることを祈ります。

※1 本稿では「麻」と「大麻」は共に「アサ科アサ属の草本:Cannabis sativa」の意味で使用しています。
※2 テトラヒドロカンナビノール (Δ9-Tetrahydrocannabinol; 略:THC, Δ9-THC)大麻濫用の元となる向精神物質。1964年イスラエルのワイズマン研究所の ラファエル・メコーラム等によって分離された。麻薬及び向精神薬取締法により麻薬に指定されている。

※3 参考 http://www.pref.tochigi.lg.jp/g59/documents/prox06asa.pdf
※4 参考 http://www.kosonippon.org/mail/detail.php?id=794
http://hokkaido-hemp.net/foreign.html
https://www.facebook.com/asafukuhemp/videos/407547622635086/

若園 和朗  (わかぞの かずろう)

2011年、筆者の住む岐阜県A町では祭礼のために栽培していた大麻の盗難事件が発生し、当局より栽培を禁じられ祭礼を続けることが困難な状態に。それを受け、大麻栽培復活のための活動を展開。その活動を通じて日本の大麻の窮状を知る。2014年より「日本麻協議会」を立ち上げ、わが国の大麻を守る活動を開始。現在、「日本麻協議会」事務局代表。

       ☆☆☆



写真は高千穂神楽。高千穂神楽や椎葉神楽、諸塚神楽、米良神楽など、九州脊梁山地の神楽には「幣神添」「大神」「伊勢」などの演目に大きな御幣を振りながら舞う演目が分布する。この御幣には、白い紙と麻の繊維(古くは大麻から得られた)が取り付けられている。これは上代朝廷の祭儀に用いられた「白和幣(しろにぎて)」「青和幣(あおにぎて)」の系譜を引く神事儀礼をその元とする。白和幣とは、楮の繊維(これを「木綿=ユフ」という)を取り付けた幣、青和幣とは麻(大麻)の繊維を取り付けた幣であり、この伝統は、天皇家の皇位継承の儀礼である大嘗祭に引き継がれている。神楽の御幣に用いられる麻(大麻)は神を招き、神が宿る神聖な繊維であった。



先日、高千穂町出身の作家、高山文彦氏と会う機会があり、各地で取り組まれている伝統的な日本の麻(大麻)の栽培が危機的状況にあるということを伺った。「薬物」としての大麻使用が事件がらみで報じられ、間違った認識で語られることによる規制の強化がその主因であるとのことであった。規制をかける前に、真摯な勉強の機会と実態の調査があったかどうか。このことも議論の対象として揚げるべきだろう。若園氏の記事はその格好の資料となろう。

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