森の空想ブログ

森の空想ミュージアムと九州民俗仮面美術館のお知らせブログ

森へ行く、森を歩く そして鹿の一群に遭遇 [小鹿田焼ミュージアム溪聲館から<54>]

2016年11月08日 | Weblog


散歩中に、園内で茸を見つけた。ハタケシメジである。
この茸は、裏庭の宝物という異名を持つように、畑の隅や庭先の木立ちの下など、身近な所に生えてくる茸だが、本来は雑木林の茸である。以前、由布岳の山麓で膨大な群生を見つけ、老母を連れていったところ、しゃがみ込んでその光景を見るなり、笑い出してしまった。
次に連れて行った仲間も、同じように笑った。でも、これはワライタケではない。彼女らは、うれしさのあまり、笑いがとまらなくなったのである。そして、このハタケシメジは美味しい。シメジの類でも第一級の茸である。

森へ行ってみよう、と思ったのは、由布岳の群生を思い出したからである。
こんな敷地の中にあるならば、森なら笑いが止まらぬほどの茸に出会えるかもしれない。



溪聲館のやや上手の河川プールのために設置された取水口の堰堤を飛び越えると、対岸の山へ行ける。増水した時にはどうどうと滝のように水が流れていて危険だが、減水期の今は大丈夫だ。

対岸に渡るとすぐに急な岩崖となる。絶壁とは言えないが、滑り落ちたら助からぬ、というレベルの傾斜だ。直下に小野川の流れと溪聲館の屋根が見える。

「今昔物語集」に、茸にまつわる面白い話が収録されている。
ある殿様の一行が、険しい山道を越えていたところ、殿様の乗った馬が足を踏み外して崖下へと落ちてしまった。家臣たちは、目もくらむ崖下を覗き込み、殿様は助からぬ、救出の方法もない、と嘆き悲しんでいたところ、はるか下のほうから、殿様の声が聞こえる。耳を澄ますと、「綱と籠を下ろせ」と言っているようだ。指示通りに綱を繋ぎ合わせ、籠を付けて下ろすと、「引き上げよ」という。やれうれしやと皆で引き上げるが、なんだか軽い。籠が届いてみると、なんとその中には大量のヒラタケが入っていた。殿様は、崖の途中の大木に引っ掛かり、難を逃れていたのだが、その大木に、大量の茸が生えていたのである。
悠揚迫らぬ殿様ぶりが可笑しく、うれしい。この殿様はよほどの茸好きだったのだろう。



崖の途中にけもの道がある。
鹿の通り道だな。



大岩の下のけもの道を辿って岩の上に出ると、椎、樫、楢、欅、山桜などが混成する巨樹の森に出た。
懐かしい林相だ。この尾根を東へと進めば、ふるさとの村がある。山の尾根を辿る道は、子供のころ遊びまわった森へと続いているのだ。

朴の葉が色づき始めている。



山桜の紅葉も始まっている。
午後の陽射しが森に射し込んで、金色と銀色の光が、繊細な糸を交織する。



鹿の寝た跡を発見。まだ新しい。



岩場が連続する尾根に出た。右側は急峻な崖の連続。
左側は、やや緩やかな斜面で、手入れの良くなされた杉山となっている。

――ピャッ!!
と鋭い声が森に響いて、鹿の一群が走り去った。一頭の大鹿と母鹿、三頭の小鹿。
警戒の一声とともに、カメラを構える暇もないほどの速度で、鹿たちは森の彼方へ消えた。
最後尾で振り返った大鹿と一瞬、目が合った。
群を守る雄鹿の気概のこもった鋭い眼光。

ごめんよ。
君たちを脅かそうと思って来たのではないのだよ。



尾根の最上部のやや平坦な地点に古代の神祭りの場のような巨岩があった。
鹿たちは、この下で休んでいたのだろう。
今日の散策はここまで。
茸には出会えなかったが、良い一日であった。

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