尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

荒木一郎と芹明香の映画

2016年10月16日 21時37分07秒 |  〃  (日本旧作)
 昨日に引き続き、小さな話。「僕らは世界を救えるか問題」を書くつもりになっていたのだが、なかなか気分が乗らないのである。秋は日本映画の新作で毎年問題作が集中する。その上、映画祭や特集上映があちこちであるから、付き合っていると身が持たない。今もユーロスペースでは巨匠、小林正樹の特集をやってる。(見てないのを一本見たけど、長いのが多くて全部は見ない。)続いて、ユーロスペースではなくなったイランの巨匠、アッバス・キアロスタミの全作品上映もある。だけど、大体見てるからなあ。そういう巨匠の技より、ユーロスペースの一階上の「シネマヴェーラ渋谷」で、荒木一郎の特集が始まった。その次は芹明香の特集。こっちのB級テイストの方が見たいなあ。

 荒木一郎(1944~)という人は、僕は歌手として知った。「空に星があるように」。女優荒木道子の子どもで、青山学院高等部卒業後、文学座に属すとウィキペディアに出ている。その後、映画で不思議なムードの脇役として知られるようになるが、事件を起こしたりして、なかなかお騒がせの人生だったような記憶がある。大島渚監督の「日本春歌考」という僕の大好きな映画で、主演の大学受験生をやっていた。(年齢的にちょっときついけど。)

 それから、日活ロマポルノ初期の佳作、「白き指の戯れ」(1972)で主演をしている。これは同時代に見て、とても感激した映画なんだけど、数年前に見直したら「こんな映画だったのか」とビックリした。72年にキネ旬ベストテンに入選している。再評価が必要だと思う羽仁進監督の「午前中の時間割」はATG製作の不思議な感じの映画。若いころに2度見たけど、その後見てない。国木田独歩のひ孫という国木田アコが出ている「女子高生映画」。実験映画でもあり、今見るとどうなんだろうか。公開当時(1972年)、高校で生徒会活動をしていて、生徒会あてに割引券が送られてきたのを利用して見た記憶がある。

 今日見たのが、「0課の女 赤い手錠(わっぱ)」。1974年、野田幸男監督の東映セクシーバイオレンス映画の大傑作である。赤いトレンチコートに、赤い警察手帳、赤い手錠を使いまくる杉本美樹の無表情かつ棒読みセリフにノックアウト必至の名(迷)作である。昔から大好きで、もう4回目ぐらいだと思う。今回久しぶりに見たらラストの銃撃戦は、ジョニー・トーの「冷たい雨に撃て!約束の銃弾を」だなと思った。荒木一郎はナイフ使いの犯人一味。それにしても、東映では緋牡丹博徒やさそりなど、60年代末から70年代にかけて、女優によるアクション映画が量産された。その映画社会学的な意味は解明されていないんじゃないかと思う。

 もう一本、中島貞夫監督「現代やくざ 血桜三兄弟」も前に見てるけど面白かった。この映画の「モグラ」という荒木一郎の役柄は、脇役の中でも特に印象深いものではないかと思う。中島貞夫監督の出世作「893愚連隊」でも大活躍をしている。ところで今回の目玉上映は、和田嘉訓(よしのり)監督の未公開作「脱出」だろう。「自動車泥棒」「銭ゲバ」の他、ドリフターズ映画などを作った監督だが、恵まれない映画人生だった。1972年の「脱出」は、同年のあさま山荘事件と似ているとの理由でお蔵入り。よくフィルムが残っていたものだと思うが、貴重という他に言いようのない上映である。

 2週間の荒木一郎特集が終わると、今度は芹明香(せり・めいか)の特集。日活ロマンポルノ初期のミューズである。というか、ミューズは宮下順子とか中川梨絵とか片桐夕子だけど、芹明香は主演級を食っちゃうほどの異様な存在感を発揮した。美人ではないけど、すごい印象的で、あれは誰だと一瞬で覚えてしまうような存在だった。最高傑作は、誰が見ても田中登監督の「㊙色情めす市場」(1974)だろう。大阪の最下層を生きる街に生きる人生を描き切った大傑作。これも公開当時から3回か4回は見てるので、今回見るかどうかは判らないけど、一度は見るべき日本映画ではないか。

 僕が最初に名前を覚えたのは、多分神代辰巳監督の「濡れた欲情 特出し21人」(1974)かなと思う。日活ロマンポルノは名前が凄いけど、というか中身もストリッパーの世界だけど、特に神代監督作品などは骨があって素晴らしい。この映画も僕には思い出深いけど、数年前に見直したらなんだか案外だった記憶がある。その他、名前を見るだけではすごい映画が多いけど、「㊙色情めす市場」だってシナリオ段階の原題は「受胎告知」なのである。今になると、そっちの方がずっとわかりやすい。ずいぶん見てない映画も多いので、(14本中8本見てない)期待しているところ。(ただし、深作欣二「仁義の墓場」だけは、数年前に見直して、人生で2回見ればそれでいいと強く思ったほど、本格的に陰惨なので、今回はパス。)荒木一郎も芹明香も本人を呼んだトークショーがある。詳しくは劇場のサイトで調べて。
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