尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「リンダ リンダ リンダ」と「ナビィの恋」

2017年01月02日 22時59分49秒 |  〃  (旧作日本映画)
 2016年の映画見納めは、キネカ大森の名画座二本立て。「ナビィの恋」と「リンダ リンダ リンダ」。あまりに面白かったので、書いておくことにしよう。日本の10年ちょっと前の映画は、なかなかスクリーンで再会しにくい。もっと昔の映画の方が、デジタル化されて上映されている。フィルム映画の上映環境が少なくなる昨今、こういう機会は貴重だと思う。(どちらもフィルム上映。)

 世界中で作られている音楽映画、その数多しといえど、日本のこの2本も最も面白いものの中に入るだろう。2016年も「シング・ストリート」や「ハートビート」、ここで書かなかったけれど「ストリート・オーケストラ」(ブラジルの貧民街の子どもたちでクラシックのオーケストラを作る)や「イエスタデイ」(ノルウェイの少年がビートルズに憧れてバンドを作る)など、なかなか面白い音楽映画があった。

 でも、僕は「リンダ リンダ リンダ」はもっと面白いと思う。ごひいきの山下敦弘(のぶひろ)監督のリズムがあってるということでもある。2005年のキネ旬6位選出。高校文化祭映画としても、「青春デンデケデケデケ」を超えてベストワンだと思う。この映画のいいところは、初めからやる気いっぱいの部活動じゃなくて、ゴタゴタ続きで出るか出ないかというところからもめてることである。

 この映画では、軽音部の女子バンドの中で、ケンカしてケガもして、一度空中分解しているらしい。もう文化祭前日だというのに。そこが超リアルで、現実に教師として経験したトラブルを想起せざるを得ない。抜けた人を除いて、それでもやろうというのが集まる。抜けたメンバーが書いたオリジナル曲はできないから、部室であれこれ何やろうと相談して…突然ブルーハーツの「リンダ リンダ リンダ」をやろうと盛り上がる。だけど、ヴォーカルがない。と目についたのが、韓国からの留学生ソンさん。

 突然留学生がいるというのがおかしいけれど、ここでペ・ドゥナをキャスティングしたのが、この映画の成功の最大原因だろう。僕の大好きなペ・ドゥナがでているだけでうれしいんだけど、年齢不詳だけに高校生でも通じる。(1979年生まれだからホントは苦しいはずだが。)そして一生懸命歌の練習をしている。夜の体育館の舞台で幻のメンバー紹介をしている場面は、映画史に残る名場面だと思う。そして、まだ名前を認識していなかった時代の松山ケンイチが思わぬ形でソンさんに絡んでいた…!

 バンドの主要メンバーは、前田亜季香椎由宇、そして音楽活動中心という関根史織(Base Ball Bear)。香椎由宇って誰だっけと思ったら、オダギリジョー夫人である。10代で演じている役柄は等身大の女子高生バンドという感じで、現実に会ってきた高校生のだれかれをつい思い出してしまう。顔立ちもそうだけど、性格付けなんかに、相似たものを思い出してしまうのである。そして、いろいろあって(お約束的にいろいろある)、最後に体育館で演奏ということになる。いや、良かった。

 もう一本、「ナビィの恋」は音楽映画でもあるとともに、「沖縄映画」という位置づけをした方がいい映画である。でも、全編にわたって音楽が満ちていて、琉歌ばかりでなく、なぜかアイルランド人が来ていてフィドルを弾いている。主演のナビィ役の平良とみ、夫役の登川誠仁(のぼりかわ・せいじん)はともに亡くなっているので、こっちは追悼的な気分で見ることにもなる。

 京都出身ながら沖縄で映画製作を続けている中江裕司監督が、1999年に製作した最高傑作である。東京では2000年に公開され、キネ旬の第2位にランクインした。当時は大評判となり、沖縄サミットを前に急逝した小渕総理も見に行った。今見直しても素晴らしい出来栄えで、思いが歌とともに深く揺さぶられる。風景も美しいし、編集のリズムもきびきびしていて飽きない。

 東京から沖縄・粟国島(あぐにじま)に戻ってきた奈々子(西田尚美)。家にはオバアのナビィ(平良とみ)がブーゲンビリアの世話をして過ごしている。おじいは毎日牛の世話に出かけている。そんなナビィは最近どうも様子がおかしい。船で一緒だった謎の人物が関わっているらしい。そのサンラーは60年前にナビィと恋仲になったが、ユタの「認めない」というお告げで島を追放される。そうして今やっと、ブラジルから戻ってきたのである。という古い古い恋の物語を劇中では、白黒の無声映画で表現する。

 一方、フラッとやってきた福之助(村上淳)はおじいの仕事を手伝いながら、いつの間にか家に住みついている。連絡船の運転手、ケンジも奈々子に夢中で、老若二人のヒロインの周辺はザワザワしてくるのだが…。という主筋が歌に乗せ語られていく。一種のミュージカル的手法でもあるけど、沖縄の風土ではそれもリアリズムかなと思わせる。奈々子の家は東金城家で、「あがりかなぐすく」と読ませる。 

 舞台の粟国島は、那覇の北東にある小島。人口743人という。最近は製塩で知られている。この島の魅力も映画の力になっている。一種「現代の神話」のような感じでもあるけど、共同体的なありようの不自由さも感じられる。音楽がいっぱいで、その魅力で輝いているような映画だと思う。中江監督はこの映画の後は、本格的な劇映画を作っていない。そろそろ期待したいところ。

 どっちも公開当時に見た時から、また見たいと思うような映画だった。今回も気持ちが満たされたような映画体験で、音楽の力は大きいなと思う。沖縄映画という意味では、その最高峰とも言える高嶺剛監督がいるが、しばらくぶりの新作がもうすぐ東京で公開される。それに伴って今までの特集上映もある。2017年最初の期待は高嶺剛特集。
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