玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

白票と砂糖玉

2010年07月14日 | 政治・外交
ホメオパシーで使われるレメディ(砂糖玉)と選挙で投じられる白票は似ている。
どちらも白い(見たままかよ!)。
科学(医学)と社会の基本原理から外れていて効果が期待できない。
そして信じるものには自己満足を与える。


「ビタミンK与えず乳児死亡」母親が助産師提訴 : 週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 生後2か月の女児が死亡したのは、出生後の投与が常識になっているビタミンKを与えなかったためビタミンK欠乏性出血症になったことが原因として、母親(33)が山口市の助産師(43)を相手取り、損害賠償請求訴訟を山口地裁に起こしていることがわかった。

 助産師は、ビタミンKの代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与えていた。錠剤は、助産師が所属する自然療法普及の団体が推奨するものだった。

幻影随想: ホメオパシー助産師のビタミンK2の問題が裁判になった
ホメオパシーとビタミンKと刑事罰 - fuka_fukaの日記

Twitter / きっこ: 「白票を投じる」ということは無駄な行為ではありません ...
「白票を投じる」ということは無駄な行為ではありません。棄権する人が多くて全体の投票率を下がれば宗教団体などの大きな支持団体を持つ候補者が当選する確率が高くなってしまいます。これを阻止するのが白票なのです。

はてなブックマーク - Twitter / きっこ: 「白票を投じる」ということは無駄な行為ではありません ...
白票は 棄権するより なお悪い みたいな。 « おれせん?

ホメオパシーに具体的な医療効果がないのはあたりまえのことで改めて言うまでもない。
しかし、残念ながら現代医学よりもホメオパシーを信じた助産師の愚かな行為によって乳児が死亡する悲劇が起きてしまった。実に実に腹立たしい。法律的なことはよく知らないが、件の助産師には刑事罰を含めた厳しい報いが与えられることを望む。そして、厚生労働省と各自治体には医療関係者がホメオパシー等のニセ科学・オカルト「代替治療」にのめりこまないようしっかりと指導してほしい。

アルファブロガーであるきっこ氏が推奨する白票も、効果のなさではホメオパシーで使われる砂糖玉(レメディ)と同じようなものだ。
レメディの有効成分はゼロである。100分の一希釈を30回も繰り返せば元の物質は一分子も残らない。
白票にも候補者・政党名という「有効成分」は含まれない。無効票扱いとなり選挙結果に与える影響はゼロだ。

しかしながら、どちらにも「効果がある」と主張する人たちがいる。
「効果があると思う人にとっては効果があるんでしょうね(自己暗示として)」とは言えるけれど、人体の生理的に(ホメオパシー)あるいは選挙制度的に(白票)は何も根拠がない。思い込みだけだ。白票の意味は「政治への抗議」だとか「立候補者すべてに対する不満」といった説がある。政治への不満を示すのは悪いことではないけれど、白票で不満を示された政治家のほうも対応に困るだろう。
たとえばレストランに行って、サービスに不満を感じたとする。店員に文句を言うのも面倒だが、レジの横にアンケート用紙が置いてあるから何か書いてやろうと思う。単に「気に入らない」とか「ひどい店だ、もう来ない」とだけ書いて回収箱に突っ込んだら何の意味があるだろう。客は悪態をついてストレス解消になるかもしれないが、店側は「気に入らない」とだけ書かれたアンケートを見てもどこが問題なのかわからず、具体的なサービス改善につなげようがない。まして白紙だったら不気味なだけだ。

「政治家は白票に込められた思いを汲み取ってくれ」と言う人もいるだろうが、私には思い上がりか甘えているように見える。
政治家はエスパーではないし、気まぐれでわがままなご主人様の気分をうかがう召使でもない。さらに言えば、白票という無言の脅しのような無効票に気を遣っておたおたするような政治家は頼りない。私は白票の意志とやらに媚びる政治家よりも「白票は単なる無効票です、自己満足にしかなりません。私は自分に一票を投じてくれた有権者のために働きます」と言える政治家のほうがよほど肝が据わっていて信用できると思う。

仮に白票に意味があるとしたら、議会制民主主義を否定する思想の表現としてだろう。独裁志向あるいはその反対のアナーキズム。
たとえば阿久根市で独裁的な市長を支持する人たちが「市長の足を引っ張るだけの」市議会に不満を持っているとする。市議会議員選挙が行われるときに「市議会の存在自体にノーを突きつける白票を投じよう」という運動が起きるかもしれない。
逆に、「国家とか政府とかいらないよ」というアナーキストが白票を投じるのもラジカルな思想の表現として理解できる。アナーキズムのシンボルは黒旗なので白票ではなく黒く塗りつぶした「黒票」を入れるほうがもっとインパクトがあるだろう。
首長選で白票を入れる目的は「どの候補者も気に入らない」以外になさそうだが、結局は誰かが当選するわけであり、無効票(白票)を投じるのは棄権と同じく「誰が当選してもかまわない、有効票を入れる有権者の選択に任せます」という意味にしかならない。無駄なことである。

なんだかんだ書いてきたけれど、私はひとりひとりの有権者が自分の意思で白票を投じるのは勝手にすればいいと思っている。
投票用紙に「坂本龍馬」と書くのと同じくらい馬鹿げていると思うが、やりたい人は好きにすればいい。だけれど、「白票には積極的な意味がある」として正当化したり広めようとする言説は気に入らない。ホメオパシーの砂糖玉も白票も自己満足にしかならず、人間の健康を、政治のあり方をよくする力はないし、時には有害でさえある。


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1 コメント

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結構むなしい (生粋)
2010-07-14 23:12:47
今回の参院選はちゃんと書きましたが、衆議院選は白票を入れました。
白票を入れてやるぜ!と意気込んで行ったものの、書く振りをして、白紙の投票用紙を折りたたんで、投票箱に入れた時のむなしい事。
白票は制度的に意味を持たないので、投票率が上がる以外の効果は無いのでしょう。

他の白票を投じた人はどうか分かりませんが、私自身は高尚な理由はありません。
以前ほど支持する政党も候補もなくなったけど、政治には物申したいという、つまるところ自己満足。あと、一度白票を投じてみたいというノリ。

でも、あの虚しい感覚をまた味わおうとは思わないですね。意味もないですし。