玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

リニア路線問題はインド人に学べ

2009年06月20日 | 日々思うことなど
リニア新幹線のルート選定問題で諏訪回りの「Bルート」を主張する長野県(知事・県庁・県民)が叩かれてる。

痛いニュース(ノ∀`):リニア試算提示→長野県「6400億円の差額は小さい」「時間差はわずか7分」「差額はJRが負担を」
はてなブックマーク - 痛いニュース(ノ∀`):リニア試算提示→長野県「6400億円の差額は小さい」「時間差はわずか7分」「差額はJRが負担を」

うーん、どうなんだろう。
批判があるのは当然だけど、「恥を知れ」「長野県民はバカか」式の罵倒に何の意味があるのかわからない。単なる鬱憤晴らしのように見える。
デパートのおもちゃ売り場で「合体ロボがほしい!買って買って買って!!!」と駄々をこねる子供は確かにうるさいけれど、それをヒステリックにしかりつける母親のほうがもっと不快だ、という感じ。江川卓じゃないけれど、「みなさん、そう興奮しないで」と言いたくなる。
別に長野県(のBルート推進派)をかばうつもりはないけれど、彼らの一見すると理不尽な「ゴリ押し」にはそれなりの歴史と理由があるのだ。

リニア中央新幹線「1県1駅」方針と地元各県の反応。 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
80年代末の段階でルートを先送りしたツケが今来ている

 JR東海はリニア構想を発表した80年代末以来、そのルートについては明言を避けてきた。もちろん甲府から飯田へと直行する「Cルート」が念頭にあったからだ。

 リニア構想の前身である中央新幹線構想が話題となったのは、それより先の1973年。田中角栄首相の手で全国新幹線鉄道整備法の路線の中に盛り込まれたのが契機である。当時、飯田周辺では国鉄中津川線(飯田~中津川)の工事が予算が付かずに中途で放置されていた。試掘が始まっていたトンネルを中央新幹線に転用することが期待されたりもした。

 ただ、この時点では、甲府と飯田の間については何も明言されていない。

 そして、80年代、いつしか田中角栄は権力者の座から引き下ろされ、中央新幹線は新幹線形式じゃなくてリニアでやるって話に膨らんできて、その弟子の1人である金丸信副総理が山梨県にリニアの実験線を持ってくるのだが、ここでも結論は先送りされている。

 もちろん、JRや国や鉄建公団はCルートありきで考えていたのは誰にでも想像できるんだけど、最終的にどうするかは先送りしてきたんだよね。みんな。グレーゾーンにしておけば、とりあえず政治的軋轢は生じない。


長野県民もBルートで一本化されているって訳でもないんですよ

 まあ、長野県民以外にとっては諏訪に行こうが行くまいがどうでもいい。飯田経由・Cルートでいいよとは思う。ネットの住民が長野県庁や長野県知事、商工関係団体などの言葉に反発を感じるのも当然。おらが県にだけ2つ駅を造れ……と主張するのはワガママにしか見えないし、土木業に依存してきたここ数十年の地方政治の汚い側面を見せつけられたような気がするから。ネットでは賛同者はへとんどいなさそうだし、信濃毎日新聞など長野県絡み以外のマスコミもスルーしている。

 そして、長野県は、1989年にリニア中央エクスプレス建設促進長野県協議会で県内ルートは諏訪回りのBルートで一本化。県議会で議決したり、イベントを開催したりしながらBルート当然というスタンスを固めてきた。もう20年間も。これじゃあ後戻りできない。振り上げた拳を収めるタイミングを失った。
(中略)
 結局、中央新幹線構想の節目で重要な役割を果たしながらも、無責任にプロジェクトを決めてきた田中角栄と金丸信が悪いんです。全て。国土と財政と地域の破壊へとまっしぐらに向かっている高速道路や空港や港湾を大盤振る舞いしてきたのもこの2人が原因だし。角栄と金丸が悪かったんだと、あの世に逝った2人に責任をなすりつけることで長野県も「1県1駅」で納得してくれないかな……と思ったりもする。


ルート問題をあいまいにして先送りしてきたツケが長野県に回ってきた、ということらしい。勝手に期待したほうも悪いが、知っていて気をもたせ続けたほうも悪い。
彼女が「クリスマスイブには素敵なレストランで食事をして、高級ホテルに泊まって…」と夢を語っているのに彼氏が「あー」とか「うーん」とか生返事しかしなかったらどうだろう。男は「俺の給料知ってたらそんなこと本気で言うはずがない」とたかをくくり、女は「否定しないのは真面目に考えてくれているからね」と思い込む。街でジングルベルが聞こえるころ悲劇が起きる。こんなとき「ぜんぶ女のほうが悪い」と決め付けるのはフェアじゃない。
女性に同情するとしても、実際のところ男性の懐が寂しくてホテルの予約を取ってなければ素敵なプランを実現するのは無理だ。夢見る女性には現実を知ってあきらめてもらうほかない。こんなとき「俺がいつ約束した?勝手に期待されても困るんだよ!」と切れる男はガキである。理不尽だとは思いながらも彼女の機嫌をとり、高価じゃなくても気の効いたプレゼントを贈って笑顔を取り戻させるのが「大人の男」だ。
えらそうなことを言ってしまったが私自身もいい年してガキである。「それならお前はどうなんだ、怒ってる女性をちゃんとなだめられるのか」ときかれたら「ごめんなさい」と謝るばかり。そもそもクリスマスを一緒に過ごす彼女が(略


…えーっと、気を取り直して。
長野県(のBルート派)がずいぶん無理なことを言っているのはまちがいない。だが、彼らが主張する理由は理解できる。「自分が彼らの立場ならやっぱりそう言うだろうな」と素直に思う。だからといって「JR東海は6000億円負担してBルートでリニアを作れ」とは言わないけれど。
むしろ、「長野県けしからん!」と憤る人たちのほうが理解しがたい。そんなにカッカしてもしょうがないでしょうに。「バカ叩き」してストレス解消したい、という動機であれば理解はできるけれど、自分が真似したいとは思わない。

日本が「定価社会」であることが怒りの原因のひとつなのかな、という気もする。
日本中どこに行っても、たいていの店でほとんどの商品が定価販売されている。この場合の「定価」とは店が決めた価格(言い値)の意味でメーカー希望小売価格ではない。正札どおりの値段で値引き交渉せずに買うのが普通の消費行動だ。
関西ではわりと普通に「おっちゃん、ちょっと負けてや」「しょうがないな、特別サービスやで」というやりとりが行われているらしいけれど、それにしても理不尽な「吹っかけ」というのはあまりないだろう。私が思うに、日本人は「吹っかけ」に対して経験値が低く、すぐカッとなってしまう純情なところがある。

たとえばインドあたりでは、観光客に地元民価格の何倍も吹っかけるのが当たり前らしい(行ったことはないので旅行記を読んだ印象)。100ルピーの商品に対して300ルピーとか言われても驚いてはいけない。
そんなとき言い値で買うのはバカげているけれど、「吹っかけやがったな!俺をなめてるのか!」「インド人は恥を知れ!」とカッカするのもつまらない。交渉ごとでは冷静さを失ったほうが損をする。「300ルピー」と聞いたら目が回ったふりでもして、「そんな大金払ったらこの店が全部買えるよ」と笑ってみせる。「50ルピーなら考えてもいい」「そんな殺生な、せめて200ルピー」「冗談じゃない、75がせいぜいだ」「大負けに負けて150」「100、これ以上ビタ一文出せない」「うちには4人の子供が腹をすかせて待ってるんです… 125ではいかがで」「赤ん坊のミルク代ならしょうがない、120で買うよ」「ありがとうございます」というのが面倒くさいけれど面白い、「正しい値引き交渉」というものだ(地元民価格よりちょっと高いのはしかたない)。

長野県の県民性は理屈っぽくて議論好きだそうで、その点インド人とちょっと似てるかもしれない。いや、別に似てなくてもいいのである。大事なのは、日本人とインド人が「他者」であるように、Bルートを主張してやまない長野県民(の一部)もまた立場と考え方が違う他者である、ということだ。
他地域の住民が「日本全体の交通網」とか「技術的・資金的問題」から考えてアルプスを貫くCルートを良しとし、長野県民が地元の発展を考えてBルートを望む。単に立場と考え方が違うだけで、道徳的にどうこう言うような問題じゃない。
リニア建設は国家的な大事業(事業主体はJR東海だけど)であり、地域住民がローカルな利益を主張するのは当たり前のことだ。立場の違い、利益の対立があるから政治という営みが必要になる。頭ごなしに「自重しろ、我慢しろ」と押し付けるだけなら簡単だが、それは独裁国家のやり方だ。経済論や技術論、社会論としてBルート派を批判するのは結構だけれど、倫理的問題であるかのように決め付けて叩くのはよろしくない。かえって問題を感情的にもつれさせ、ややこしくするだけだ。
『社会』 ジャンルのランキング
コメント (1)   トラックバック (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« あえて「地域エゴ」を擁護する | トップ | 東国原英夫の野望(全国版) »
最近の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (K)
2009-06-20 22:32:34
長野県が6000億円出して、支線を造れば良いのではないの?長野県営リニアw
本戦は直通で良し。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

関連するみんなの記事

2 トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
リニア3ルート試算提示 (歌は世につれ世は歌につれ・・・みたいな。)
JR東海は18日、2025年に開業を目指す首都圏-中部圏のリニア中央新幹線の建設費の試算結果を発表しました。同社が実現を目指す南アルプスを貫通する直線のCルートが5兆1000億円と最も安く、一方で長野県が要望する南アルプスの北側へ迂回するBルートは5兆7400億円と、建設...
中央新幹線のルートと長野県 (交通機関に思うこと)
もう今さらという感じではあるが、ネット検索で色々な意見を読む限り、長野県知事への支持は殆どないと言ってよい。リニア新幹線・東京~名古屋のルートに関してである。 以下は6月18日の記者発表でJR東海より出された建設費などのデータである。 ...