玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

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サダムの名はサダム

2006年12月30日 | 日々思うことなど
死刑を宣告されていたサダム・フセイン元イラク大統領が処刑された

今後のイラク情勢がどうなるか心配だけれど、個人的にはマスコミで使われる「フセイン大統領」という呼び方のほうがずっと気になる。おかしい。変だ。聞いてるうちに恥ずかしくなる。

私はアラブ文化のことは何も知らないけれど、それでもNHKのニュース番組で何度も大野元裕氏(中東研究会上席研究員)の解説を聞いているうちに元大統領の名前が「サッダーム・フセイン・アッ=ティクリーティー」略するときは「サッダーム」であると教えられた。「フセイン」は父称であって日本人の考えるような姓とは違うらしい。生前のサダム・フセインは「俺はサダムだ」と名乗ることはあっても「自分はフセインです」とは言わなかったんじゃないか。

人名 イスラム圏の名前 - Wikipedia
アラブ人の伝統的な名前はクンヤ(「某の親」)、イスム(本人の名)、ナサブ(「某の子」)、ニスバ(出自由来名)、ラカブ(尊称・あだな)の要素から成り立っている。

クンヤ
(引用略)

イスム
イスムは本人の名である。男性にはムハンマド、ウマル、ウスマーン、アリーなどイスラム初期の指導者の名や、イブラヒーム(アブラハム)、ムーサ(モーゼ)、イーサ(イエス)など預言者たちの名のほか、神のもつ99種の別名に奴隷を意味する「アブド」をつけたアブドゥッラー(神の僕)、アブドゥッラフマーン(慈悲深き方の僕)などの名も好まれる。女性にはハディージャ、ファーティマなどムハンマドの家族に由来する名前や、ヤスミーン(ジャスミン)、ズフラ(美)、ヌール(光)など女性らしさ・美しさを表す名前がよくつけられる。

ナサブ
ナサブは「イブン=某」(某の息子)、「ビント=某」(某の娘)という形を取る。また、某(本人の名)・イブン=某・イブン=某・…と本人の名の後にナサブを連結して先祖をたどる表現もできる。イブンはビン、ブンと言うこともあり、イラクなどでは、元イラク大統領サッダーム・フセインのように「ビン」が省略されて、ナサブ(この場合はフセイン)をイスム(この場合はサッダーム)の後ろに直接連結する(イラクの例の詳細は後述)。

ニスバ
ニスバは出身地・所属部族・所属宗派に形容詞形語尾「イー」を付けた形を取る。マグリブ出身ならばマグリビー、アフガニスタン出身ならアフガーニーとなる。

ラカブ
ラカブは本人のもつ尊称である。例えばアイユーブ朝の建設者ユースフ・ブン=アイユーブはサラーフッディーンのラカブを持ち、このラカブが転訛した「サラディン」の名がよく知られている。

以上からわかるように、本来アラブ人には親子代々が継承する姓は厳密には存在しないが、部族民や上流階級などの成員で、祖先がはっきりしている者は、ナサブやニスバやラカブが『家名』のように用いられることもある。日本や欧米の人々には一般に姓と見なされているオサマ・ビン=ラディンのビン=ラディンは、何代前もの先祖某の名を使った「ビン=某」がいわば『家名』のようなものとして用いられた例にあたる。

現在はスンナ派とシーア派、北アフリカ地域とアラビア半島地域とで異なるというように、集団・地域による傾向に大きな差が存在する。

例えばサウジアラビアではパスポートに記載される名前は、「本人の名(イスム)、父の名によるミドルネーム(ナサブ)、祖父の名によるミドルネーム(ナサブ)、『家名』(先祖のナサブ、ニスバ、ラカブなど)」という順に表記される。

イラクの場合は、元大統領サッダーム・フセイン・アッ=ティクリーティー(Saddām Husayn al-Tikrītī)はティクリート出身のフセインの子サッダームと読み解ける。サッダームの長男ウダイ・サッダーム・フセイン・アッ=ティクリーティー(Uday Saddām Husayn al-Tikrītī)はティクリート出身のフセインの息子サッダームの子ウダイ、サッダームの次男クサイ・サッダーム・フセイン・アッ=ティクリーティー(Qusay Saddām Husayn al-Tikrītī)はティクリート出身のフセインの息子サッダームの子クサイとなる。ウダイとクサイの例からわかるように、地名によるニスバは必ずしも当人の出身地を表すのではなく、父や祖先の出身地を表す場合もあるので注意が必要である。

たった4文字増えるだけなんだから、マスコミは「フセイン元大統領」じゃなくて「サダム・フセイン元大統領」と呼んでやれよ。首を吊られてしかも名前まで適当に扱われるのはいくらサダム(フセインの息子・ティクリート出身)が悪党でも気の毒だ。
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4 コメント

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日本人の間違ってること (てんてけ)
2006-12-31 07:11:42
例えばアメリカ国歌の名前は「星条旗」であるのに、
軍楽の行進曲である「星条旗よ永遠なれ」と名前を
広めているのもマスコミです。
UK (玄倉川)
2007-01-03 13:18:36
>てんてけさん
連合王国(The United Kingdom of Great Britain and Ireland)を「イギリス」と呼ぶと非イングランド人の英国人(ウェールズ人・スコットランド人・北アイルランド人)は納得しないでしょうね。

まあ私もついイギリスと呼んでしまいますが(苦笑)
Unknown (大野)
2007-03-11 23:48:06
ブログで扱っていただき、ありがとうございます。

無断で恐縮ですが、アラブ人の名前について小生のブログで扱う際に、玄倉川さんのこの記事を引用させていただきました。無断で申し訳ありません。

名前については、ご指摘の通り、やはりサッダームと呼ぶのが、アラブ人にとっても最もしっくりくると考えています。といっても、アラブ人は正式にはフルネームで名乗ることが多いと思います。

重ねて、取り上げていただきましたことを感謝します。
門前の小僧 (玄倉川)
2007-03-13 19:45:58
大野さん、コメントありがとうございます。

イラク問題は先行きが見えずどんどん憂鬱になりますが、NHKで大野さんの解説を聞くと冷静な見方を取りもどすことができます。大野さんと江畑さんのお姿がテレビに映ると何をおいても画面の前に座り込んで拝聴しています。

さて、当ブログを読んでいただきましてありがとうございます。
せっかく引用していただいたのにこういうことを言うのは心苦しいのですが、この記事自体がWikipediaからの引用なので、孫引きされることにあまり意味があるとは思えません。私はアラブやイラクについてほとんど何も知らず、ただ「面白いな」と思って引用しただけなのです。門前の小僧がお経の真似事をしてえらいお坊さんに褒められたような面映い気分です。

大野さんのますますのご活躍を祈り、あわせてイラクが治安を取りもどし再建への道を歩むことを願います。

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