黒古一夫BLOG

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「怒り」を武器に!(19)――消費税増税「再延期」に異議あり

2016-06-01 09:56:06 | 仕事
 5月26,27日の「伊勢志摩サミット」において、「世界経済はリーマン・ショック級の危機的状況にある」ということを、ドイツやフランスなどの首脳から「異議」を突きつけながら言い出したときから、安倍自公政権による消費税増税の「再延期」は待ったなしだな、と思っていたが、サミットが終わって旬日をおかずに、自民党内の「反対派」(どうやら結果的にパフォーマンスだったようだが)を説得し、「再延期」を決定した安倍首相、この人の言葉が「軽く」「信用できない」というのは、これまでの政権運営において嫌と言うほど見せられてきたが、今回の「再延期」決定は、果たして国民に受け入れられるだろうか。
 確かに、各種の世論調査が如実に物語るように、この経済悪化(生活苦が増大している)の時代にあって、消費税増税を歓迎する人などいないだろう。僕も消費税増税はすべきではない、と思っている。それは、民進党を中心とする野党も安倍首相より先に「消費税増税反対」を打ち出したことからも分かる。しかし、本気で消費税増税の「再延期」を言うのであれば、まず1年半前の2014年11月に消費税増税の延期を宣言し、その際に「再延期は絶対にない」と言って、衆院を解散したことを「反省」すべきである
 言葉を換えれば、多くの経済学者や識者が指摘するように、第二次安倍自公政権が「目玉」として掲げた「成長」を基底とする経済政策(アベノミクス)が「失敗」であった、と認めるべきである。つまり、アベノミクス)によって一部の上場企業や富裕層は「恩恵」を受けたが、非正規労働者の割合が全労働者のうち「40%」を占めるようになったことが象徴するように、中小零細企業がアベノミクスの恩恵を受けることはなく、「貧富の格差」は広がるばかりであるという現実をまず安倍首相や政権幹部は認めるべきだということである。
 僕は、アベノミクスに関わる安倍首相のこれまでの言動を見てきて、結論的に思ったことは、この人は所詮「国民=庶民の暮らし」のことなどに関心はなく、あるのは「日本を取り戻す」とか「戦後レジュームからの脱却」が如実に表しているが、戦後の「平和と民主主義」に彩られた日本(国)、つまり「戦争放棄」を謳った第9条を中心とする「平和主義」と「国民主権・基本的人権の尊重」の日本国憲法を否定し、「戦前」のような「国家主義」的な国にすることを念願するウルトラ・ナショナリスト(ネオ・ファシスト)だということである。
 その意味で、アベノミクスという経済政策は、ウルトラ・ナショナリズムを実現するための「隠れ蓑」に過ぎず、安倍首相は自分の「思い」(思想)を実現するためには、いくらでも国民を「騙す(嘘を言う)」ということである。
 今回の「再延期」だって、第一義的にはアベノミクスの「失敗」を隠すためだと思うが、本質的にはこのまま「公約」通り消費税を増税したら、とうてい参議院選挙で勝利し、憲法改正に必要な3分の2の議席を確保できないと思ったが故の結果だった、と僕は思っている。安倍首相にとって、全ての政策は「憲法改正」に繋がるものなのである。だから、本来は「福祉」や「年金」のことを考えて増税されるはずだった消費税増税に対して、いとも簡単に「再延期」を宣言することができたのである。毎晩高級料亭やレストランで食事している安倍首相に、庶民の暮らしに思いを馳せる気持など端からないことを、僕らはしっかりと認識すべきである。
 僕が、安倍首相(自民党)に「騙されてはならない」と繰り返し言うのも、安倍自公政権下において特定秘密法が施行され、集団的自衛権行使が容認され、いよいよこの国が「戦争のできる国」に変質されようとしているからであり、「反戦」を思想の根幹において批評活動を行ってきた僕としては、どうしても安倍自公政権のやり方を認めることができないからである。政権内部に存在することで「甘い蜜」の味を知ってしまった公明党が、「平和と福祉の党」という看板をかなぐり捨てて、自民党の「補完物」になってしまったことを批判し続けるのも、同じ論理である。そんな安倍自公政権に「50%」もの支持率を与える我が日本国民、この国はどうかしてしまったのだろうか。
 僕は、消費税が20%、30%の国で暮らす人のことをいくらか知っているが、それらの国々では高い消費税や所得税のほとんどが国民の「教育」や「福祉」に使われていることに比べて、「教育」や「福祉」の代わりに、防衛費や国会議員の歳費、一部上場企業の利益のために、湯水の如く国債が発行され(現在国の借金は1500兆円を超える)、所得税や消費税に使われる日本。
 本気で国の仕組みを換えなければダメなのではないか、と思う

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2 コメント

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アベ地獄 (石井透)
2016-06-01 22:12:56
黒古さんのご意見にほぼ全面的に賛同いたします。しかし、それにしても、これほどひどい政権でありながら、どうして国民世論がアベ降ろしに動かないのか不思議でなりません。

実際は、アリ地獄ならぬ「アベ地獄」に吸い込まれているというのが私たちの現状です。時間が経てば経つほど抜け出すことが難しくなる「アベ地獄」。生活に苦しむ人々は水を求めるように蜃気楼オアシスのようなアベノミクスに望みを託す。望みを託せば託すほど喉が渇き、更に蜃気楼オアシスに頼ろうとする。

一刻も早く、それが蜃気楼に過ぎないことに気づいて(分かる人は最初からそれが蜃気楼に過ぎないことに気づいていましたが)、方向転換していかないと、この国そのものが「アベ地獄」の中に命を落とすことになりかねない状況にあると思います。

7月の参議院選挙がこの転換のための大きな一歩となることを私は心から願っています。まずはなんとかして「アベ地獄」から抜け出ましょう!
おっしゃるとおりです。 (黒古一夫)
2016-06-02 05:31:18
石井さんへ

 おっしゃるとおりです。
 後世の人間は、「アベ地獄」に落ちたこの時代の人々の在り様を、自嘲しながら(自戒を込めて)「戦後史の7不思議」の一つに挙げるのではないでしょうか。
 それにしても「嫌な時代」です。早く脱却したいものです。お互い、頑張りましょう。

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