栗太郎のブログ

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映画「君の名は。」

2016-10-13 21:01:42 | レヴュー 映画・DVD・TV・その他

『君の名は。』公式HP

8月末。yahoo!ニュースに踊る文字。
”興行3日で12億!!”
もともと興味はなかった。はじまるまで世間でもひとつも話題になっていなかった。
それが、3日で12億!?と聞いて驚いた。前日観た『後妻業の女』がイマイチのせいもあり、お口直し的な気持ちで観に行った。
『後妻業の女』なんてたったの三人だったのに、さすがこっちは話題作、8月31日の平日のレイトショーながら、なんとパッと見、半分近くも埋まっていた。

始まってみると、初っ端っから疾風のような速度で展開するストーリーに、置いて行かれないようにしがみ付くのが精いっぱい。
まるで目の前でカードマジックを見せられているように、目をぱちぱちしながら、ようやく話のスジが見えてくる。
あ、入れ替わっているのだった、と。
そして、仕草、言葉遣い、髪の束ね方、外部の物音、、、何かを頼りにしながらどっちの身体にどっちの中身が入っているのかかわるようになれば、しめたもの。
さっきまでは慣れない暴れ馬にまたがっていたようなもので、徐々にストーリーだけでなく、作画の美しさまでにも目が行くようになってくる。
なんて、きれいな風景なのだ、と。
アングルも見事ながら、光の届く位置、空の深さ、多彩な雲の色、、。風は強さだけでなく湿り気さえも伝わってくるようだ。
マニアックどころかフェチといいたくなるほどの、ディテールにこだわりを感じる。
なにより、ただの恋愛ストーリーでないところが憎い。
たとえば天文マニアなら彗星を(軌道に物言いがついているが)、歴史マニアなら神社の伝承を、文学好きなら万葉集を、SF好きなら「とりかえばや」を、地図マニアなら隕石湖とクレーターを。
幅広い好みの層を取り込んだ、嗜好をくすぐる仕掛けのような筋書きが憎い。
そして毎回肝心な場面で挿し込んでくるRADWIMPSの音楽が、絶妙なるタイミング。
50近いオッサンが、突然泣かされる場面が幾多。
ちょっとおかしなところも散見すれど(特に糸守湖の風景を同地方の住民が誰も知らないのはおかしいが)、その程度は、彗星の美しさと二人の一途さの前には脆くも消え去る類のもの。
最後に問いかけ合う再会とともに、どーんと「君の名は。」のタイトルバック。
まる、なのか、「君の名は?」じゃないのか、とドキリとした。
聞かずとももう君が探していた相手だとわかっている、名前だけ教えてくれればいいんだよ、君も探してくれていたんだろ、みたいなエンディング。
ようやく見つけたよ、と長い長い人探しの旅の終焉を告げるようだ。
とにかく、まいった。やられた、と思った証拠に僕は軽く笑ってもいた。

組紐を小道具に使うのも上手いなあと思う。
当然、「結び」の象徴であり、神様とのつながりであり、三年の時間差をつなぐものであり、彗星の暗喩でもあり、龍さえも連想する。
龍は水の神様であるし、龍の文字にサンズイをつければ、瀧だ。
宮水神社も「水」が関連していて、主祭神は、どうやらミズハノメ。
調べると、松尾神社の祀られているとか。松尾様は酒の神様、三葉たちが神事で「口噛み酒」を造るのもうなずけるのだ。
ついでに言えば、ミズハノメは滝御前の別名もあるとか。

そうこうしながら、あとから、それまで見てきた疑問が後から湧いてくる。
特に、婿入りする前の親父の経歴(テーブルに広げられた週刊誌の見出しに書いてあった)が、民俗学者ってなんだ!?って気になるし、
三葉が町長室に乗り込んでいった時、ばあちゃんはなんでそこに座っていたんだ!?ってのも気になる。
母の二葉が先に死んでしまったわけはあるのか?、親父との馴れ初めは?、ばあさんはどこまで気づいていたんだ?、彗星(隕石)の墜落は一度ではないのか?、
クレーターってあれも隕石だよね?じゃあ、石室の中の彗星の壁画は、文字を持たない時代に残されたものなのか?、、、なんだか気になる背景ばかり。
疑問は小説を読んで補完するしかあるまい、ということで早速、密林で購入したが、こちらの内容は、映画のスジをまんまなぞったもので、あえて新鮮味はなく、
台詞の確認作業のようなものだった。
おまけに文章が中学生向けで、読みながらちょっと恥ずかしくなった。

小説 君の名は。 (角川文庫)
新海 誠
KADOKAWA / メディアファクトリー


ならば、外伝的な「君の名は。Another Side:Earthbound」を読んでみよう・・・と思ったら、在庫なし。
なんとも大人気で入荷まで一週間以上かかるらしい。

君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)
田中 将賀,朝日川 日和,「君の名は。」製作委員会,新海 誠
KADOKAWA/角川書店


なんとか都内で見つけて買って読んでみると、三葉と四葉の話はたいしたことはないが、母・二葉が神がかった存在であったことが知れた。
二葉の早逝は、その能力の行使によって命を縮めていったということなのだろう。
そしてなにより、親父・俊樹のエピソードゼロ的ないきさつが面白い。
やはり、民俗学者の研究対象として宮水神社にやってきているのだが、全てを見通していた二葉との出会いから町長になるまでの流れが呑み込めた。
なんで町長なんだ?と思っていたが、「この世のすべてはあるべきところにおさまるもんやよ」という、つまり「結び」の所以だった。
隕石が落ちてくるときに、俊樹が町長でなくてはいけない理由があったのだ。
それは運命とでも言おうか、神の差配とでも言おうか。
なにを神の存在なんて、と鼻で笑おうとしてしたところで、そもそも入れ替わり自体がファンタジーなのだから、神様くらいいたって不思議には思えない。


そこまでして、さあ二度目の鑑賞。ひと月以上も経つのにいまだ多くの席を埋める人気にびっくりだ。
剛速球に目が慣れてからバッターボックスにたった打者のように、映画の流れが手に取るように読める。
はじめの、「たきくん。憶えて、ない?」でほろっと泣いた。
瀧の手首に巻かれた組紐をまずは見つけ、いつからばあさんが気付くのか気を配り、、、。
そこでこう来る、次にこいつがこうする、するとあいつがこう来て、ああなって。
「デートのあとに彗星が見えるね」なんて聞くと、三葉のほうではな、とぐっとくる。
ほぼ知ってるのに、また泣いた。
この映画は、まるでRADWIMPSの2時間の長編MVかと言っても差し支えないほど、曲とストーリーがマッチしているが、
特に「スパークル」が秀逸で、♪ついに時は来た~、のときにはゾクゾクした。
黄昏時、山の稜線で二人がようやく(二度目だけど)会えた場面なんて、またまた泣いた。
忘れるもんか!と誓ったはずが、あれ?名前は?なんて言うふたりをみて、またこぼれた。
黄昏時は、たそがれ、たれそかれ、誰そ彼、のこと。彼そ誰、かわたれ、とも言う。別名、逢魔が時。
万葉集にも、「誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ君待つ我そ」(万葉集第十巻2240番、柿本人麻呂)がある。
作中、古文の授業で黒板にも書いてある。その授業のなかで、この地方の方言で「かたわれ時」ともいうと言っていた。
「かたわれ」なんて聞いたことねえぞ、と流していたのだが、ふと「片割れ」の文字が浮かんだ。
あ、彗星から分裂した隕石、片割れ、のことか!
瀧と三葉も、それぞれがそれぞれの片割れ(ハーフムーンといったほうがロマンチックだが)ということか!とひらめいた。
ひらめくとまた、ほろっと泣けてきた。
この映画、仕掛けが憎くてイヤになるわ。
え、10月10日、興行収入145億円突破?すでに1,000万人が観てるって?
10人に一人の計算か。二回も三回も観ている奴もいるがな。参りました。

満足度は、8★★★★★★★★

映画「君の名は。」予告
 


※RADWIMPSの劇中歌は、ようつべで多数アップされています。が、何度も聞きたい場合はダウンロードをするかCDを買いましょう。

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