栗太郎のブログ

一人気ままな見聞記と、
手づくりのクラフト&スイーツ、
読書をしたら思いのままに感想文。

「深い河(ディープ・リバー)」 遠藤 周作

2009-09-28 00:26:00 | レヴュー 読書感想文
自分の感じること、信じることに正直な大津。
汎神論(もしくは多神論というべきか)的考えを持つ大津は、唯一神を説くキリスト教から見ると異端なのだという。
そういう排他的な思考こそ、独善的ではないのだろうか。
救済の宗教といいつつ、偽善ぶった生臭い香りがプンプンしてくる。
むしろ、大津の語る言葉は、「やおよろずの神々」に馴染む日本人にはしっくりくると思うのだけどね。

そんな悩み苦しむ姿にイエスを重ねて、遠藤周作は描いていく。

そして他にも、美津子や磯辺や沼田や木口や三條や江波など、みんな心のどこかに善悪の二面性を持っている。
インドの女神も、また、慈悲と醜悪の二面性を持つ。
母なるガンジス河も、また、生と死の二面性を持つ。

遠藤周作は言う。
『・・・仏教で言う善悪不二でして、人間のやる所業には絶対に正しいと言えることはない。逆にどんな悪行にも救いの種がひそんでいる。何ごとも善と悪が背中合わせになっていて、それを刀で割ったように別けてはならぬ。分別してはならぬ。・・・』

まさに、池波正太郎の「鬼平」のなかで、蛇の平十郎がいうセリフだ。

この本で言いたいのは、それなんではないか。
ひとつの答えでくくれないもの。
正解なんてないもの。
だから人生は、答えを探す長い旅のようなもの。
その道筋で迷った時の拠り所が、大津にとっては玉ねぎ(イエス)なのだ。


じゃあ、僕にとっては、何があるだろうか。
ガンジス河に行けば何かが見つかるかもしれない、そう思わせるものはある。



10点満点中オススメ、結局答えが見つからない、が答えなのか7★★★★★★★

深い河 (講談社文庫)
遠藤 周作
講談社

このアイテムの詳細を見る


最新の画像もっと見る

コメントを投稿