万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

希望の党の敗因は“孫子の兵法”にあり?

2017年10月23日 13時54分06秒 | 日本政治
自民19県独占=希望、東京は1勝のみ―開票状況【17衆院選】
一時は政権政党の座まで狙う勢いにありながら、衆議院選挙の結果を見れば、野党第二党に終わった希望の党。その敗北要因の一つは、“孫子の兵法”にあったのではないかと思うのです。

 希望の党の代表を務める小池百合子都知事も“孫子の兵法”の信奉者の一人であり、産経新聞の紙面でも、「女子の兵法」というタイトルでコラムを執筆しておられます。東京都知事選の手腕を見ますと、“孫子の兵法”の申し子とも言えるほど巧妙な戦術を駆使して勝利を手にしており、同兵法が氏の指南書であったことは想像に難くありません。しかしながら、今般の選挙の敗因として既に“策に溺れた”とする指摘があるように、“孫子の兵法”は、現代という時代においては、敗北を招く公算の方が高いように思えます。

 中国大陸において『孫子』が執筆された時代とは、諸説があるものの、春秋戦国時代と推定されており、まさに打ち続く戦いの連続の時代でした。こうした乱世にあっては、“勝つためには手段を選ばす”が行動原則となり、『孫子』もまた、謀略、裏切り、逃亡さえも許容しています。否、武力という手段よりも、こうした非軍事的な手段を“戦わずして勝つ”を上策とする立場から高く評価していたのです。しかしながら、現代の民主主義国家において“孫子の兵法”をその教え通りに実践しますと、一般の人々からは、“危ない人”、“信用の置けない人”あるいは、“警戒すべき人”と見なされがちです。何故ならば、その全ての言葉は、“勝つため”の方便に過ぎず、その全ての行動も、“勝つため”の打算に過ぎないからです。

 民主主義国家において求められる政治家像とは、国民のために働く誠実なる公僕であり、勝負師でも、権力闘争に興じる支配者でもないはずです。希望の党は、既成政党への抵抗勢力として自らを未来型の政党に位置づけながら、その実、権謀術数を常とする前近代的な手法を以って裏から政界を操ろうとしたのですから、一般の有権者からは、やはり“危ない政党”、“信用の置けない政党”、あるいは、“警戒すべき政党”と見なされてしまったのではないでしょうか。見えない内には効果はあっても、策略とは、それが衆人に見えた途端、その効果は吹き飛んでしまうものなのですから。

 そして、“孫子の兵法”を以って敗北した希望の党の事例は、古代兵法と現代とのミスマッチをも現しています。既成政治に対抗するのであるならば、その思想や手法も現代という時代に相応しいものであるべきでした。誠実さや正直に優るものはありませんので、これを機に、現代の政治家は、政治不信の元凶ともなりかねない古代兵法とは決別すべきなのかもしれません。

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