万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トランプ大統領のアジア歴訪は歴史に何を刻印するのか?

2017-11-05 15:30:48 | アメリカ
トランプ米大統領、初来日=6日に安倍首相と会談―北朝鮮にらみ結束確認へ
本日、アメリカのトランプ大統領夫妻は、大統領専用機であるエアフォースワンから米軍横田基地に降り立ち、アジア歴訪の最初の訪問国である日本国に到着しました。アジア諸国への訪問は大統領就任以来初めてであり、東アジア・サミットの出席を予定しているために内外の関心集めていますが、今般のアジア歴訪は、それ以上の意味があるように思えます。何故ならば、今後のアジア全体の凡その勢力図が、トランプ大統領の歴訪によって決定づけられる可能性が高いからです。

 先日、中国と韓国は、THAADの配備問題で悪化してきた両国関係の改善を発表しております。配備に反対する中国から執拗な経済制裁を受けてきた韓国側が音を上げた形での合意となりましたが、それは、取りも直さず韓国が半ば中国の軍門に下ったことを意味します。懸案であったTHAAD問題については、韓国側が中国側の懸念に留意するとし、THAADの運用は対北朝鮮に限定する意向を示しています。この合意は、米韓同盟は対中関係では機能しないことを意味しており、韓国は、対中包囲網から脱落したものと考えざるを得ないのです。昨今、安全保障分野において日米印豪が防衛協力関係を強化しているのも、昨今の中韓の動きと無縁ではないのでしょう。トランプ大統領は、訪韓に際して文在寅大統領に米韓同盟の将来についてその見解を質すかもしれません。

 そして、何より注目されるのが、トランプ大統領の中国訪問です。中国側はオバマ前大統領の訪中時とは打って変わって“熱烈大歓迎”で迎え、国賓を越える待遇でもてなすとも報じられており、米中首脳会談に臨む習近平国家主席の並々ならぬ意気込みが感じられます。おそらく、中国側は、今般の米中首脳会談こそ、“新たな大国関係”、即ち、米中両国による“世界二分割構想”への合意を迫る絶好の舞台と見なしており、それ故に、最大級の待遇を以ってトランプ大統領を迎える必要があるのでしょう。もしかしますと、北朝鮮問題をも取引の材料の一つとするかもしれません。

 トランプ大統領が中国側の要請をそのまま受け入れるとは思えませんが、アメリカ側にとっても、米中首脳会談は、中国の真意を最終的に確認する重要な機会となるはずです。北朝鮮問題に対して中国側の協力を得られず、南シナ海問題においても何らの進展もなく、貿易不均衡の是正も望み薄となれば、アメリカは中国に対して完全に見切りを付け、中国封じ込め政策へと明確に舵を切るかもしれません(これは同時に、中国は、最早アメリカを“利用”できないことを意味する…)。アジア歴訪は、トランプ政権の対アジア政策の輪郭を明確にする可能性もあるのです。

以上に述べてきましたように、トランプ大統領のアジア歴訪の後、アジアの政治勢力地図が大幅に塗り替えられる可能性があります。中国が韓国を含む朝鮮半島を自らの勢力圏に含める一方で、それを外側から包囲するかのように日米印豪が連携を組むという新たな構図の出現も予感されるのです。あるいは、アメリカが北朝鮮問題の軍事制裁による解決を選択し、体制崩壊にまで持ち込むとしますと、朝鮮半島全域がアメリカの勢力範囲に入ります。中国が積極的に切り崩しを図っている東南アジアの足並みは乱れるでしょうが、米比相互防衛条約の下でアメリカの同盟国でもあるフィリピンは、同大統領の訪問を機に、韓国と同様に旗幟を鮮明にするよう迫られるかもしれません。一方、南シナ海問題でめぐり中国と鋭く対立しているベトナムは、今般の訪問を機に、親米路線をより明確にする可能性もあります。

何れにしましても、米ソ間の冷戦を背景として成立していたアジアの構図が劇的に変化するとしますと、トランプ大統領のアジア歴訪は、それを象徴する出来事として歴史に刻まれることとなるのではないでしょうか。

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