万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ウォール街デモ―なぜ”チャイナ・バッシング”は起きないのか

2011年10月05日 15時26分47秒 | アメリカ
格差にNO、全米へ飛び火 NYウォール街でデモ(朝日新聞) - goo ニュース
 リーマン・ショック以降、アメリカの失業率は高止まり状態にあり、大卒でも長年のキャリアがあっても、一旦失業すると、再就職は非常に難しいそうです。雇用問題悪化の主たる原因は中国にあるのですが、アメリカで”チャイナ・バッシング”が起きないことは不思議なことです。

 オバマ政権は、中国政府に対して比較的寛容であり、公然と元安政策を実施してきたにも拘わらず、為替操作国にも指定しませんでした。この結果、中国製品の輸出競争力は不当に強化され、アメリカ市場も中国製品で溢れることになりました。自国企業が生産拠点を海外に移転させ、かつ、中国製の廉価な商品が大量に国内市場に出回れば、国内の雇用機会が減少し、所得水準が低下することは当然のことです(最近でも、中国との競争に敗れ、アメリカの太陽光発電メーカーが倒産している…)。失業問題を根本的に解決するためには、アメリカに働く場所がない、という”産業の空洞化”を改善しなければならないはずです。この点、中国に対して為替政策の是正を求めたり、自国政府に対抗措置の実施を訴えた方が、雇用の面からしますと、はるかに効果は期待できます。かつて、激しい”ジャパン・バッシング”が起きたことを考えますと、中国は、アメリカ国内で、自国への批判を抑えるための巧妙な世論操作を行っているのでしょうか。それとも、中国の軍事力が影響しているのでしょうか。

 ウォール街のデモ隊が叫ぶように、金融業への課税を強化すれば、確かに政府の歳入は増えますが、現在の米政府の財政赤字状態では、雇用が急激に増えるとも思えません(それとも、金融優先による産業の空洞化への抗議か?)。少なくとも失業問題を改善させるためには、デモ隊は、中国に対してもシュプレヒコールを上げるべきなのではないでしょうか。

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