万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

リスクに満ちたTPP11ー新自由主義は原理主義

2017-05-18 14:05:13 | 国際経済
TPP11視野に協力=対北朝鮮、南シナ海で連携―日・NZ首脳
 トランプ政権の誕生により、自国経済へのマイナス影響を理由にアメリカがTPPから離脱したにもかかわらず、日本国政府は、アメリカ抜きのTPP11に向けて邁進しております。自民党内の新自由主義派の方針なのでしょうが、新自由主義こそ、’原理主義’、や’過激派’という名が相応しい危険思想ではないかと思うのです。

 フランス革命時のスローガンである”自由、平等、博愛”を経済分野に当て嵌めてみますと、第二次世界大戦後の自由貿易体制の基本方針とおよそ一致します。これらの三つのスローガンは、”障壁のない自由な貿易”、”国による差別のない貿易”、及び、”いかなる国とも通商関係を結ぶ多角的な貿易”と読み替えることができるからです。理想的なスローガンとしては人々を惹きつけるのですが、フランス革命がロベスピエールの恐怖政治の下での強圧的な社会改造や大量虐殺、並びに、革命戦争に端を発する侵略戦争に帰結したことは無視できない歴史です。無制限、かつ、無条件にこれらのスローガンを追求しますと、天国のはずが地獄へという、思わぬ逆転劇に見舞われないとも限らないのですから。

 新自由主義とは、まさしくこの基本方針を極限まで貫き、さらには貿易の概念さえも越えて、自らがどこの国でも自由に障壁なく事業を展開できる一つの”グローバル市場”に世界を変えることを理想とする思想です。この理想を実現するためには、すべての国々に対して、その障害となるあらゆる国境措置や政策の排除が要求されます。そして、”グローバル市場”が誕生した暁には、格差を利用したビジネスの自由な展開が可能となり、レッセフェール型の自由競争の下での弱肉強食も容認されるのです。

 各国の既存の社会は、利益の最大化を目的とする新自由主義勢力によって”グローバル文化”と称される無味乾燥としたモノトーンの文化へと改造され、経済の分野における雇用喪失や低賃金労働は、一般の国民にとりましてはいわばフランス革命期の”経済的虐殺”に等しくなります。また、各国の市場開放は、新自由主義勢力による自国市場の席巻を招きますので、”経済的侵略”ともなりかねないのです。国境や政府の政策による、自国民、並びに、自国企業の保護は一切許されないのですから。そして、新自由主義者にとっては、当然に、貿易の不均衡など問題外であり、”グローバル市場”における利益の確保こそが最大の関心事なのです。

 自由も、平等も、博愛も、それ自体は、尊重されるべき価値ですが、これらの理想は、もとから相矛盾しているという欠点があることに加え、制御なき原理主義的な暴走は、混乱と破壊、そして、人々の失望と怒りをもたらすことになりましょう。こうしたTPP11に潜むリスクを考慮すれば、今は、立ち止まるべき時なのではないでしょうか。

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2 コメント

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う~ん、難しい (Unknown)
2017-05-19 04:53:36
TPPの肝はISD条項と知的保護権の条項でしたね。ISDは要するに会社が政府より優越する。長すぎる知的保護は人類福祉に反すると言うことですね。要するに国家のあるいは人類の利益より会社の利益を優先すると言う思想ですよね。トランプさんが壊してくれてよかった。
TPP11はたぶん、これらの条項を除きます。そうするとアメリカが再び参加することはなくなります。
では何のためかといえば、対中競争のためでしょう。他の10か国をバックにして、RCEPで中国に対抗するためでしょう。そうしないと交渉力が弱まりますから。ASEAN全部、中国の影響下というのも困りますからね。アメリカが引きこもり、内戦ではそうそう従属路線もとれないでしょう。
もう政治家や官僚は除いて、AIで各国の優越産業、劣等産業を考慮して最適解を出すほうがよいでしょう。
Unknownさま (kuranishi masako)
2017-05-19 07:17:50
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 市場の拡大ばかりを求める地域経済圏の形成には疑問があります。EUでは、結局、経済の弱い国が財政問題を引き起こす事態に陥っており(単一通貨を導入しなくとも、同様の財政問題は起き得る…)、必ずしも、全ての国がwinwinとはならないようです。また、AIではなくとも、労働コストにおいて先進国が劣位となり、資本力において後進国が劣位になることは分かっております(先進国の中間層が破壊され、後進国は経済支配される…)。こうしたメカニズムを考慮すれば、TPP11には、慎重であるべきと思うのです。

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