万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ISはオバマ大統領が創った?ー相手を有利にするパワーバランスの変化

2016年08月14日 15時04分08秒 | 国際政治
核先制不使用宣言、困難か=有力閣僚や同盟国反対―米紙
 アメリカでは11月の本選を控え、”暴言王”とも称された共和党のトランプ候補の舌鋒も鋭くなっているようです。先日は、”ISはオバマ大統領が創った”と発言し、全米を驚かせています。

 国際社会の裏側では一般の人々の想像を絶する陰謀が渦巻くために、文字通りに捉える向きもありますが、イラクからの米軍の早期撤退が中東に”力の空白”を生み、ISを蔓延らせる皮肉な結果となったことを揶揄した発言とされています。もっとも、この発言は、パワー・バランスを敵対する相手に有利に変える行為が、直接的ではないにせよ、結果責任を問われることを示唆してもいます。しばしば、平和や国際協調を根拠として、”宥和政策”や”撤退政策”が採られることがありますが、、こうした政策は、ミュンヘンの融和の事例を持ち出すまでもなく、得てしてより望ましくない結果に至るものです、。例えば、日本国憲法の第9条が平和の実現を意図しながら、しばしば批判されるのも、領土的野心を抱く諸国の行動をエスカレートさせる効果があるからです。竹島は韓国に不法占領されたままですし、数多くの日本人が北朝鮮によって拉致されています。尖閣諸島に対する中国の挑発的行動も、憲法第9条の存在と無縁ではないのでしょう。そして、南シナ海における中国の傍若無人な振る舞いは、アメリカをはじめ国際社会が積極的に中国の違法行為の抑制に努めなかった結果とも言えるのです。平和主義者の人々は、自らが自発的に引けば緊張が緩和され、脅威も低減すると考えがちですが、現実には、その逆の場合が多いのです。

 オバマ大統領が検討しているとされる核先制不使用宣言についても、同様のことが言えます。ケリー国務長官や日本国をはじめとした同盟国が反対しているために、実際には見送られる公算が高いそうですが、中国や北朝鮮を利するようでは本末転倒となりましょう。”平和の先取り”こそリスクですので、目の前の現実の脅威に対処してこそ、平和は実現するのではないかと思うのです。

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