万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

モンゴル思考を受け継ぐ北朝鮮-アメリカへの脅しは本気では?

2017-07-27 15:39:20 | 国際政治
北朝鮮「米は滅亡の奈落に転がり落ちる」と威嚇
 北朝鮮のアメリカに対する挑発的発言は、しばしば失笑を買っています。国力において雲泥の差がありながら、核とICBMの開発に半ば成功したことで舞い上がり、大国アメリカまで屈服させると意気込んでいるのですから。

 傍から眺めますと滑稽なようにも思えるのですが、朝鮮半島もまたモンゴルの支配を受けた地域であることを思い起こしますと、北朝鮮は、案外、本気であるのかもしれません。北朝鮮にしてみますと、モンゴル帝国こそ、“小が大を呑み込む”模範とすべき前例であり、彼らにしてみますと決して不可能なことではないからです。

 『元朝秘史』によれば、周辺諸部族を征服、あるいは、糾合しながらモンゴル帝国を建設する台頭過程にあって、最初の頃の軍団の数はそれほど多くはありません。例えば、ケレイド族との戦いへと赴く途中にチンギス・カーンが兵数を数える場面がありますが、そこでは、2600と言う数字が記されています(第六巻175)。この数字が正確であるかどうかは分かりませんが、東西両軍の兵数が20万を数えたとされる関ヶ原の戦いと比較しても少ない数です。ところが、モンゴル族は帝国支配の技術を手にしたことで、東は西夏、金、南宗を滅ぼして元を建国し、南はホラズムやバクダード・カリフ朝等を征服し、西はロシアにまで支配下に置いたのですから、モンゴル帝国は、人類史上空前の領土拡張を記録したと言えます。北朝鮮もまた、たとえ数では劣っていても、モンゴルと同様に、戦争法や人道法を一切無視し、手段を選ばない戦いを展開すれば、たとえ相手が大国アメリカであろうとも、勝ち目はあると考えているかもしれないのです。

 加えて、もう一つ、モンゴルと北朝鮮との間の共通点を挙げるとすれば、それは、“我”に対する強い拘りです。『元朝秘史』には、一人称の表現が極めて多く散見され、収録されている詩にも、フレーズの末に“我”や“我等”を付している作品が見られます。

  “…黒き、足早き馬にのれり 我
  鋼の己の衣をまといたり 我
  鋼鉄の、己が槍を把れり 我…”

というように。北朝鮮の体制を支える国家イデオロギーの名称が主体思想であり、それが独裁者の自我としての主体のみを認める思想であるのは、モンゴル的な“我”の今日的な表現なのかもしれません。そして、“自我”への常軌を逸する執着は、“他者”の主体性の否定と侵害という“侵略”や“侵害”を帰結する傾向にあり、北朝鮮の自己中心的な思考回路を説明するようにも思えるのです。

 北朝鮮の発想の根源にモンゴル的帝国主義と自己中心主義が潜んでいるとしますと、アメリカに対する脅迫や攻撃予告も侮ってはならないのかもしれません。核やICBMさえ手にすれば、北朝鮮にとりましては(何れの国か何らかの国際組織が背後で支援している可能性も…)、大国アメリカへの挑戦は決して非現実的な行為ではなく、むしろ、世界征服までをも描く軍事大国化への現実的なシナリオの一歩であるのかもしれないのですから。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村
『政治』 ジャンルのランキング
コメント (6)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« オーストラリアの二重国籍閣... | トップ | 竹島は"韓国領”発言-米ロイ... »
最近の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お邪魔します (しゃちくん)
2017-07-27 15:48:08
どうもハワイにミサイルを撃ち込む噂が現実味を帯びてきましたね。

21世紀の真珠湾攻撃とでも言いたいのでしょうか?
Unknown (時は来たり)
2017-07-27 19:52:27
全く知らなかったモンゴルの変遷を教えて下さってありがとうございます。大陸に自分のご先祖様が住んでなくて良かったと思わずにはいられませんでした。

とにもかくにも日本人はのんきすぎで、淘汰される恐れがあるのが本当によくわかります。先祖代々の思考回路が全く違うのですから。
テレビでは毎日毎日、「日本に住んでいる欧米人」と「日本から遠く離れた国に住んでいる日本人」の番組を全局でやっています。みえみえです。
日本人の子孫がこれからも日本に住んで、しっかり生きていけるようにする責任が増していますね。
しゃちくんさま (kuranishi masako)
2017-07-27 20:49:41
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 他の諸国から見ますと、北朝鮮の行動は常軌を逸しておりますが、本人達からすれば、至極の”当然”の行動かもしれなません。現段階でも北朝鮮の長距離ミサイルは、ハワイまでは到達すると予測されておりますが、突然の奇襲攻撃もあり得るのではないかと懸念しております。
時は来たりさま (kuranishi masako)
2017-07-27 20:54:40
 コメントをお寄せくださいまして、ありがとうございました。

 古今東西、戦時にあっては油断していた側が敗北するか、あるいは、勝利したとしても相当の犠牲を払わされることとなります。日本国では、マスコミをはじめ、特に左翼の人々は、北朝鮮の暴発は”あり得ない”と吹聴しておりますが、それは、油断を誘う”罠”であるかもしれません。北朝鮮問題に関しては、アメリカも、そして、同盟国である日本国も、それが何であれ、覚悟を決める時が来るのではないかと考えております。
Unknown (北極熊)
2017-07-28 12:46:01
北朝鮮では、朝鮮戦争休戦協定締結日を、「戦勝記念日」としていると、今まで知らなかったのですが、無知とは恐ろしいものですね。 
ミサイルは、それはそれで問題ですが、一方で、日本海の我国EEZ内で、我国のイカ釣り漁船が北朝鮮や中国などの船、数百隻に取り囲まれたと言う事件が最近あったそうです。 一昨年でしたか、小笠原諸島近海の中国漁船の珊瑚漁も、これも、潜水艦運用のための偵察なんじゃないでしょうかね。 
北極熊さま (kuranishi masako)
2017-07-28 13:15:41
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 中国にせよ、北朝鮮にせよ、想像を絶する手法で日本国の侵略を目的とした戦略を実行に移しております。こうした現実に対して、日本国政府が十分な防衛、あるいは、対抗措置を行っているのかと申しますと、そうではないように思えます。思考や発想そのものが違うのですから、日本国政府は、相手国に合わせた対応を急ぐべきではないかと思うのです。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

国際政治」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。