万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

憲法改正は項目ごとに国民に問うべきでは?-一括選択は“抱き合わせ販売”に

2018年02月20日 15時36分17秒 | 日本政治
自民党では、本格的に改憲草案の作成作業が始まっており、論点となってきた教育の無償化については、第26条の3項に政府の努力義務として加える方針のようです。そう遠くない日に憲法改正を問う国民投票が実施されるのでしょうが、実施に先立って、重要な議論が抜けているように思えます。

 それは、国民投票の実施に際しての国民の投票形式です。今般の改正項目としては、(1)第9条、(2)緊急事態条項、(3)参院選の合区解消、(4)教育無償化の4つに絞られています。しかしながら、この4項目、国民は、個別に選択することができるのでしょうか。

国民の中には、4項目全てには賛成できないけれども幾つかは承認したい、あるいは、何れかの一つだけは絶対に賛成しかねる、といった人々も存在しているはずです。仮に、一括選択方式が採用され、個別の項目について国民が一つ一つ丁寧に判断できないとなりますと、改正憲法が国民の選択を正確に反映したとは言い難い状況に至ることも予測されます。例えば、これらの4項目の中には、大多数の国民が反対するような改正項目が含まれているにも拘わらず、他の項目に対する賛意が牽引する形で改正が成立するかもしれません。また逆に、国際情勢等に鑑みて必要とされる改正が、他の項目に対する反対多数の影響で見送られてしまう可能性も否定はできないのです。ア・ラ・カルトで国民が個別に選択することができない一括選択方式では、いわば、“抱き合わせ販売”になりかねず、最悪の場合には、憲法改悪という予期せぬ結果を招くかもしれないのです。

 憲法改正は、日本史上において初めての出来事であり、不安を抱く国民も少なくはありません。政府であれ、政党であれ、まずは、どのような形式で国民投票を実施するのか、国民に詳しく説明する必要があるのではないでしょうか。そして、憲法改正案の提案方式について議論するに際しては、一括方式に内在する上記の“牽引効果”及び“ブロック効果”の両面を十分に考慮し、是非とも、個別選択方式を検討していただきたいと思うのです。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ROM)
2018-02-22 12:21:15
先生ご無沙汰しております。
まったくもって同意いたします。
そもそも教育の無償化など(私はそもそも反対ですが)、憲法に盛り込むようなことでしょうか。
個別選択方式の採用を強く望むものです。
ROMさま (kuranishi masako)
2018-02-22 13:16:26
 こちらこそ、ご無沙汰しております。また、本記事へのご賛同をいただきまして、ありがとうございました。

 おそらく、多くの国民が、個別選択方式を望んでいるのではないかと推測いたします。この件については、今のところ、政府や自民党など政界から国民への説明がなく、不安を抱いております。
Unknown (竹槍)
2018-02-24 01:57:03
私も教育無償化を憲法に盛り込むことには反対ですが、それを国民投票にかけることには賛成です。自民党が教育無償化を改憲案に盛り込むことをやめたのは、まさに先生が懸念している抱き合わせ販売だからではないでしょうか。
竹槍さま (kuranishi masako)
2018-02-24 07:52:39
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 複数の重大事項を同時に選ばぜる、という方法は、優先順位等に関する複雑な計算を要しますので、国民にとりましても、おそらく、提案する側にとりましても、予測不可能なリスクを伴うものなのではないかと思います。こうしたリスク面を考慮しますと、やはり、個別選択方式の方が国民も納得するのではないでしょうか。自民党内で、選択方式に関する議論がなされているのか、疑問なところなのです…。

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