万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トランプ米大統領の降伏勧告―“完全破壊”回避には北朝鮮の白旗しかない

2017-09-23 15:48:31 | 国際政治
米大統領、水爆実験なら「大惨事」=高官も「前例ない侵略」と警告
 先日、9月19日の国連総会におけるトランプ米大統領の初演説は、北朝鮮に対して“完全破壊”という極めて厳しい表現を使ったことで注目を浴びました。早々、北朝鮮の金正恩委員長は反発を露わにし、9月21日には批判声明を発表しています。

 この声明文におけるトランプ大統領批判の内容の大半は、そのままそっくり金委員長自身に当てはまるのですが、特に上記の“完全破壊”という言葉に強い反応を示し、「“完全破壊”という歴代のどの米大統領からも聞いたことのない、前代未聞の無知で粗暴ならっぱを吹いた。…反人倫的な意思を国連の舞台で公然と言ってのける米大統領の精神病的な狂態は、正常な人の物事の筋道と冷静さも失わせる。…」といった罵詈雑言を並べ立てています。しかしながら、金委員長は、この声明によって自らの墓穴を掘ったのではないでしょうか。

 歴史を振り返りますと、“完全破壊”と同様のフレーズを史上初めて使った米大統領はトランプ大統領ではなく、トルーマン大統領です。この言葉を耳にしたとき、真っ先に思い浮かんだのは、第二次世界大戦にあってアメリカ主導の連合国が日本国に対して降伏を勧告した、かのポツダム宣言です。同宣言の末文には、「右以外の日本国の選択は、迅速且完全なる壊滅あるのみとす」とあります。北朝鮮に対する演説部分も、ポツダム宣言と同様に条件付きであり、「…アメリカ、並びに、同盟国の防衛のために致し方ない場合には、我々は、北朝鮮を完全に破壊する以外に選択肢はなくなるであろう」と述べているのです。金委員長は、恰も無条件でアメリカが北朝鮮の壊滅を企図しているかのように批判していますが、トランプ大統領の演説は事実上の降伏勧告であり、金委員長に対して速やかなる降伏か、否かの選択を迫っていると理解されるのです(北朝鮮は国際法違反を繰り返す犯罪国家なので、“降伏”の意味合いは犯罪者の投降に近い…)。

 となりますと、“完全破壊”が実行されるか否かは、北朝鮮の独裁者である金委員長の決断にかかっています。仮に、非難声明において糾弾したように、同委員長が“完全破壊”を本心から“反人倫的な意思”と認識しているならば、自らが白旗を上げて投降すれば、“完全破壊”は回避され、北朝鮮の国民は大参事に見舞われることなく救われます。今般の同委員長の声明は、あるいは降伏勧告の拒絶の意思表示かもしれませんが、北朝鮮に残された時間は僅かしかなく、仮に、降伏を拒めば、後世の歴史書には、北朝鮮の“完全破壊”の全責任は、数々の国際犯罪に手を染めつつ、自己保身のために誤った決断を行った同国の独裁者にあったと記されることとなりましょう。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村
『政治』 ジャンルのランキング
コメント (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 北朝鮮問題-善悪を区別しな... | トップ | 諸悪の根源は“金王朝”軍事独... »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (オカブ)
2017-09-23 20:38:46
倉西先生
まず、冒頭に申し上げますのは、昨日私が「最後」と申し上げたのは、昨日のテーマで先生にご質問させていただくのを、これで「最後」とするという趣旨でして、もし先生をご困惑させた結果になったとすれば、深くお詫び申し上げるとともに、今後ともご指導の程深くお願い申し上げる次第でございます。
さて、今般のテーマにつき、まずトランプ大統領も米国議会も、軍事オプションの行使は極力、避けたいというのが本音であるというのは、確実であると考えます。
しかし、北朝鮮を「交渉」のテーブルに引きずり出すには、軍事オプションの行使の選択肢を放棄することはできず、しかも、その選択肢は現実的なものでなくてはなりません。
嚙み砕いて言うならば、「戦争をしたくない」と「北朝鮮を完全破壊する」が米国中枢の中では、なんの矛盾もなく存在するという、逆説的な構図が存在します。
では、米国はあわよくば北朝鮮を引き出せた「交渉」において、どのような着地点を想定しているのでしょう?
私は、それはホワイト・ハウスでも議会でも、未だ定まっておらず、米国内世論、国際世論、関係国の反応、そして何よりも中ロの反応を観つつ、試行錯誤しているのが現状と私は見ています。
交渉の最終ゴールを北朝鮮の無条件降伏、すなわち検証可能な形での核・ミサイルの放棄と、米国が定めているかは、残念ながら非常に微妙なところだと思います。
米国はトランプ大統領の国連演説での恫喝と、空母派遣などの実力行使の可能性をデモすることにより北朝鮮に脅迫をかける一方で、北朝鮮との「交渉」の落としどころを、未だ模索中というのが現状ではないでしょうか?
もちろん、国際社会が国際秩序を維持していくうえでも、また特に日本の立場としては、米国が北朝鮮に、無条件降伏か、完全な破滅か、の選択を迫ってほしいのは山々ですが、米国がその手前でゲームを降りる可能性は山々です。
ただし、世界、米国内とも現状、事態は混沌としており、最終ゴールを描き切れてはいないのが今の状態だと思うのです。
次にランダムに昨今の関連するニュースの事実から、注目すべきものを2つ拾ってみたいと思います。
まず、トランプ大統領が国連演説で北朝鮮の国内問題に触れたこと。これは、従来の金王朝体制の維持を認める代わりに核放棄を迫る姿勢から、完全に金王朝を消滅させる姿勢に舵を切ったとも読み取れるのです。
第二に、米軍首脳が北朝鮮が太平洋上で水爆実験を行った場合、そこが「分水嶺」になると発言したこと。
このことについて私は、随分ハードルを下げた、と思いました。過去の状況で、十分、臨界点に達しているにもかかわらず、米国自身がゴールポストを後ろに下げたのです。
以上、こうした事実から、現在の米国の意図は、混沌としていると考えても良いのではないでしょうか?
私も、先生ご指摘のように、米国が金委員長に無条件降伏か破滅か、の選択を突き付けてほしいと考えていますが、過去の悪しき前例のように、最悪の妥協をする可能性も無きにしも非ずです。
だからこそ、日本の立場としてはトランプ大統領の背中を押す姿勢を貫くしかないのですが、認識のない一部の者は「ハシゴを外される」と囃し立てています。
今回こそは、是非とも米国、日本とも毅然とした態度を貫いてほしいものです。
前回、先生に絡むような形になってしまい、重ねてお詫び申し上げます。
今後とも、ご指導お願い申し上げます。
オカブさま (kuranishi masako)
2017-09-24 09:36:15
 こちらこそ、文意を読み取らずに誤解してしまい、申し訳ありませんでした。今後とも、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

 アメリカの対応が迷走している、というよりも、民主党勢力をはじめとしたリベラル派による、武力行使に対する抵抗が思いのほか強いのではないかと推測しております。アメリカ国内のみならず、国際社会におきましても、中ロのみならず、独仏なども反対を表明しております。既存政治の打破を訴えたトランプ大統領が、融和路線を断ち切るのかどうか、極めて、重要な局面に至っていると思います。

 もっとも、太平洋上での水爆実験については、トランプ大統領は、北朝鮮側の誘導に載せられてしまった観があります。北朝鮮高官の唐突な発言に応える形で即応したため、、レッドラインの引き下げと受け取られかねない事態となったからです。北朝鮮という国は、常に反対解釈をいたしますので、太平洋上の水爆実験さえしなければ、核やICBMを含めてあらゆる実験ができると見なすことでしょう。この点については、アメリカは、太平洋上で水爆実験も武力行使に及ぶ一つのケースであることを、明言しておく必要があるかもしれません。

 何れにいたしましても、如何なる展開となろうとも、日本国政府は、柔軟に対応できるように全方位的に準備を進めておくべきです。それと同時に、同盟国であるアメリカに対しましては、最終手段としての武力行使への理解を示すと共に、悪に屈することなく、筋の通った解決を要請してゆくべきではないかと考えております。

 

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

国際政治」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。