万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国を国際法に従わせる方法とは?

2016年08月22日 15時09分37秒 | 国際政治
 中国が無法国家であることは、先月12日に下された南シナ海問題に関する仲裁裁定の拒絶により、誰もが認識するところとなりました。遵法意識が欠如しているのですから、たとえ様々な法を制定して縛ろうとしても、その努力は水の泡となるどころか、中国に有利に働くことさえ予想されます。

 中国に対する懸念は、核兵器禁止条約でも同じことが言えるのですが、それでは、中国を国際法に従わせる方法はあるのでしょうか。曲がりなりにも国際社会International communityを称するのであるならば、”無法国家”を放置したのでは、もはや”社会”とは言えなくなります。仮に、”国際ルール”と”中国ルール”が併存する状態に至れば、それは、国際社会そのものの分裂を意味するからです(同様に国際法を無視するISと然程変わらない…)。中国に対しては、既に、日本国をはじめ、国際社会は仲裁裁判所の裁定の受け入れを強く求めていますが、未だに南シナ海における状況が改善されたとする報告はありません。中国が、なおも”話し合いによる解決”を主張していることは、結局は、仲裁裁判所の判決に従わないということの裏返しであり、言葉による説得には無理がありそうなのです。となりますと、中国を国際法に従わせるためには、不服従の態度から生じる不利益を最大化させる必要があります。

 第一に、経済制裁としては、中国経済が不安定化している現状を考慮しますと、輸出入の禁止措置、資本の一斉引き上げ、中国共産党幹部の海外資産の公開と全面的凍結・接収などが効果的かもしれません。特に中国の兵器や軍事システムには、日本製を含む輸入品が使用されてもいますので、経済制裁は、戦争の続行を不可能とします。

 第二の方法は、中国に対して軍事的圧力をかけることです。現行の制度では、国際法の常設の執行機関は設置されておらず、特に安保理の常任理事国が無法国家である場合、国連は機能不全となります。これは、国連のシステム上の重大な欠陥ですが、この欠陥を補うには、国際社会が結束し、中国を上回る軍事力を以って国際法の遵守を迫る必要があります。この点、核戦力を見ますと、米中間では、今のところ相互確証破壊の段階に至っておりませんので、アメリカは中国に対して軍事的に優位にあります。核におけるアメリカの対中優位が、核兵器禁止条約の締結が時期尚早である理由でもあります(優位性の自発的放棄…)。

 中国がしばしば自慢する孫氏の兵法の極意は”戦わずして勝つ”というものですが、これを逆手に取れば、経済制裁や軍事的圧力を以って中国を負かす、乃ち、国際法に従わせることも不可能な事ではありません(この間、防衛技術開発による中国の核の無力化も進める…)。国際法の執行機関の欠如という現実がある以上、中国に対しては、国際社会が協力し、実行力のある制裁を課すべきではないかと思うのです。法の支配の確立こそ、恒久的平和への確かなる道なのですから。

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2 コメント

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Unknown (北極熊)
2016-08-23 09:57:08
TPPは、緩やかな経済制裁効果もあり、国際ルールを守る必要性を理解させるための良い方法だと思うのですが、アメリカ大統領が新しくなるとどうなっちゃうかな、、、という不安はあります。 もっと、本格的な経済制裁のためには、国連決議とかが普通は必要で、でも、中国も常任理事国だからな、、、。
北極熊さま (kuranishi masako)
2016-08-23 10:32:32
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 常設仲裁裁判所において既に裁定が下され、かつ、中国は、その決定に従わないというのですから、たとえ国連決議が成立しなくとも、各国とも、国際法上、合法的に対中制裁措置が採れるのではないかと思います。また、TPPにつきましても雲行きが怪しく、その成立を待っていたのでは手遅れになる可能性もありますので、時機を逸しないよう、日本国政府をはじめ、各国政府とも対中制裁を急ぐべきと考えております。

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