万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国の国民統合の構図の変化の必要性ー天皇の地位問題

2017-06-15 15:19:12 | 日本政治
 現行の日本国憲法の第1条では、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって…」と記されており、日本国の国民統合の構図においては頂点の位置に置かれています。図として描けば、全ての国民から等距離にある超越的な上部に天皇が置かれ、下部の国民を求心力を以って纏める三角錐の構図となります。

 頂点求心型のこの統合の構図は、古来、太陽神信仰や一神教にも見られますし、世俗のカリスマ支配や独裁体制もこのタイプに分類されます。現行の日本国憲法では、明治憲法を踏襲して三角錐の構図を維持しつつも、求心力、即ち、統合力の具体的な内容について記していないため、憲法上の構図と現実との間に齟齬が生じています。宮内庁幹部の”一人一人の国民と向き合っていることが、国民の安寧と平穏を祈ることの血肉となっている”とするカルトじみた先般の発言も、統合力の憲法上の”白紙状態”に起因しているとも言えます。それでは、日本国の未来を構想した場合、天皇は、どのような構図にあってどの位置に存するべきなのでしょうか。

 大日本国帝国憲法体制への回帰を支持する人々は、天皇を頂点とする三角錐の構図を維持するために、明治憲法第3条の「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」を復活させ、神代より連なる皇統の正統性を以って超越的な地位への復帰を望むことでしょう。自民党の憲法改正案における”天皇元首化”の思惑にも、この方向性が潜んでいると推測されます。もっとも、これらの明治体制回帰派の人々には韓国併合時代と重なるために北朝鮮派も混入していますので、神聖性なき天皇親政、即ち、金王朝と同様の独裁体制の成立を画策するかもしれません。

 しかしながら、皇室の現状をつぶさに見つめますと、最早、三角錐の構図への回帰は不可能としか言いようがありません。第一の理由は、昭和天皇による人間宣言、並びに、婚姻の自由等によって、天皇は、既に神聖性において国民に超越する存在ではなくなっていることです。今になりまして、”現人神宣言”をいたしましても、既にマスメディアやネット等を通して皇族の俗物的な行動が国民に伝わっており、国民の大半は、この宣言を信じることはないでしょう。犯罪への関与が噂されるようでは、なおさらのことです。それでは、天皇一身が帯びる皇孫としての神聖性に代わる求心力を、今日、他に求めることはできないのではないでしょうか。第二の理由は、天皇位を世襲制とする限り、個人的なカリスマ性による求心力も期待できないことです。昭和天皇のカリスマ性が現行憲法においも暫くの間は、辛くも三角錐の構図を維持し得た理由でもありますが、現皇室にはカリスマ性が備わっていませんし、否、マスメディアやカルト集団が動員によって天皇の”偶像(アイドル)化”を試みましても、それは、パーソナル・カルトとならざるを得ません。

 以上から、将来に亘って日本国の統合の形態が天皇を頂点とする三角錐の構図を維持することができないとしますと、今後、天皇は、新たな構図において位置付ける必要性が生じてきます。三角錐の構図における頂点とは、基本的には”神”や”法”といった超越的存在が置かれる位置ですので、生身の人間にその役割を求めることには本質的には無理があるのです。しかも、今日の現皇室には多様性を背景に様々な勢力が入り込んでおり、国民統合どころか、国民分裂を引き起こしかねない状況にあります。天皇の位を完全に廃止せよ、との意見もありましょうが、日本国の二千年以上に及ぶ歴史と伝統を考慮しますと、憲法において天皇位を国家祭祀の伝統を継承する祭祀長として位置付けるのが、最も穏当なる方法なのではないでしょうか(ただし、厳正なる調査の結果、皇統が断絶していた場合には現皇室の廃し、正統なる皇統保持者によって天皇位は継承されるべき…)。

 国民統合の構図としては天皇を頂点とする三角錐型ではなくなりますが(縦型から横型統合へ…)、現代国家にあっては、伝統文化の継承や保護という観点から天皇位を公職の一つとする方が、余程、天皇の地位は安定しますし、日本国民が被る”皇室リスク”も軽減できるのではないかと思うのです。

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