万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国のソフトパワーは逆効果?

2012年02月19日 15時53分23秒 | 国際政治
中国の「ソフトパワー」米を拠点化 国際社会への影響力拡大狙う(産経新聞) - goo ニュース
 軍事大国と経済大国と兼ね備えた”超大国”を自負する中国政府の次なる目標は、世界中の人々の認識に影響を与える”文化大国”となることかもしれません。その布石も着々と打たれており、ライバル国であるアメリカにおいても、大々的な宣伝活動を行うとともに、記者を各国に配置することで、中国中心の情報発信網を世界大に構築したいようです。

 チベット問題など、人権問題を抱える中国が発信する情報については、既に”偏向”が懸念されていますが、中国中央テレビや新華社による情報が中国国内のみならず、他国への発信されるとなりますと、必ずしも、中国の思惑通りの反応が返ってくるとは限らないと思うのです。例えば、中東諸国などの民主化運動を報じる際に、中国系の通信社の記者が、マスメディアなどを通して民主化を否定するような見解を述べたとしますと、大多数の人々は、中国の態度に怒りを覚えることでしょう(国連総会ではシリアの非難決議が成立…)。また、再度、劉暁波氏のように、中国の民主化運動家がノーベル平和賞といった賞を受賞するとしたら、中国の通信各社は、これをどのように報じるのでしょうか。おそらく、黙殺するのでしょうから、欧米系の通信社と比較して、中国の非民主的、かつ、人道軽視の姿勢だけが際立つことになります。

 このことは、ソフトパワーを駆使し、影響力拡大と自己正当化のために積極的に情報発信を行うほどに、自らの悪しき側面をも海外に広めてしまうことを意味します(世界中の人々が中国は酷い国であると理解する…)。つまり、自らが、自分自身の暴露者となるのですから、中国のソフトパワー戦略は、両刃の剣であると思うのです。

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