万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

フランス大統領選挙の実像ー保守対新自由主義

2017-05-06 15:24:03 | 国際政治
【仏大統領選】オバマ氏がマクロン候補にエール「フランス万歳」
 明日、5月7日に第二回目の大統領選挙の投票日を控え、フランスでは、両陣営による白熱する舌戦が続いています。こうした中、前米大統領のオバマ氏がマクロン陣営に”参戦”し、他国の内政への関与として批判の声も上がっているようです。

 しかしながら、国境を越えたオバマ前大統領のマクロン陣営支持ほど、今日の世界を取り巻く政治状況を象徴しているものはありません。何故ならば、今日のリベラルとは、国境を越えた広がりを持ち、グローバリズムの名の下で世界経済の掌握を目指す新自由主義勢力を意味しているからです。マスメディア等は、マクロン氏については”中道”と表現し、一方のルペン氏については”極右”とのレッテルを張っています。これらの表現は政治的対立の実像を誤魔化しており、マクロン氏の政策を見れば狂信的とも言えるほどの新自由主義者であるのは一目瞭然です。にも拘らず、マスメディアは、氏のイメージを和らげるために敢えて”中道政治家”というマスクを被せ、冷淡な新自由主義者としての顔を隠そうとしているのです。

 その一方で、ルペン氏については、”極右”というマイナスイメージを植え付け、ルペン氏、並びに、同氏への支持者を危険な人々と見なす社会的風潮を演出しようとしています。フランスにおける極右に対するマイナス・イメージは、第二次世界大戦におけるドイツ占領下にあってナチスに協力した者、即ち、”売国奴”のイメージと結びついている面があります。ところが、今日、ルペン氏の支持が伸びた背景には、こうしたフランスにおける極右の歴史的位置づけとは異なる、別の要因があるように思えます。その要因とは、第二次世界大戦における”対ドイツ協力者”が再び出現したのではなく、ナチス台頭期のドイツの国内状況が現在のフランスの状況と類似しているということです。

 第一次世界大戦の敗北に莫大な賠償金を課されたことにより、ドイツ人の経済的苦境は甚だしく、国民は、八方塞の状況に置かれました。その一方で、先祖代々受け継がれてきたドイツ人の資産の多くは、戦時にあって財を成した富裕なユダヤ人等の手に渡ったそうです。こうした格差拡大と貧困化に対する当事のドイツ人一般の不満は、現在のフランスの一般国民と共通しております。しかしながら、フランスのナチス協力者ともドイツのナチスとも違う点は、今日のフランス人の経済的苦境は、”ユダヤ人”という特定の民族集団による経済的支配と言うよりも、弱肉強食を容認するリベラルな新自由主義の世界大での跋扈に起因している点です。もちろん、新自由主義勢力にはユダヤ人も多く含まれていることでしょうから、一見すれば、ルペン氏の移民反対はナチスの反ユダヤ主義と重なって見えますが、フランス国民一般からすれば、移民問題は、フランス文化の喪失、フランス人のマイノリティー化、テロの脅威、失業問題等に鑑みて切実な問題であるのです。

 そして、今日の新自由主義者と第一次世界大戦後のドイツの富裕なユダヤ人とは、一般国民を置き去りにして財を成しているという点において共通していると言えるかもしれません。もっとも、相違点としては、今日の新自由主義者は、’世界市民的な観点’や’人道的な観点’という仮面を被りながら、移民を積極的に擁護してる点が挙げられます。究極まで合理性を追求し、移民労働力を利用することで自らの利益を最大化し、併せて諸国民の破壊による世界支配を目指して…。

 今日のマス・メディアは、新自由主義に反対する勢力に対しては有無も言わさず”極右”のレッテルを張り、ナチスと同一視させようとしています。ルペン氏の移民反対も、ナチスのユダヤ人迫害との連想を以って反対者に”極右”のレッテル張るには格好の口実です。しかしながら、反対者の主張とは、容赦なく弱者に牙を剥く新自由主義者から国民を保護し、国民一般の利益を図ろうとするところにあるのですから、むしろ、国家や国民を大事にするという点において、”保守”と表現した方が適切かもしれません(もっとも、ルペン氏陣営が何らかの勢力の傀儡でないとすれば…)。保守対新自由主義の対立は、ナショナリスト対グローバリスト、国民対世界市民、あるいは、国家対市場など、様々な表現があり得るのでしょうが、何れであれ、両者の相克は、今日、あらゆる国家を舞台に政治的対立軸として浮上してきているように思えるのでです。

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8 コメント

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右派の反グローバルの政治家がいない (あずみ渚)
2017-05-06 19:00:03
こんばんは 日本のマスゴミはルペン氏の事を極右というレッテル貼りをしていますが、彼女の経済福祉政策を見ますと定年年齢引下げや公務員増員等がありむしろ社会主義的なものを感じます。 

それに引き換えわが国では反ゴローバリズムを掲げているのは共産党しかいず 右派の反グロバーリズムの政治家が皆無とういうのが情けないです
私は憲法改革を謳いながら9条は据え置き、新自由主義的な政策を立て続けに打ち出す自民党は保守とは思えません

日本にも国民戦線のような政党が一定数の議員を
国会に送り込めば政権与党の牽制になるのではないかと思います
あずみ渚さま (kuranishi masako)
2017-05-06 20:21:07
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 マクロン氏は、12万人の公務員削減を公約に掲げており、全く以ってルペン氏とは正反対の道を歩もうとしているようです。こうした二者択一の状態は国民を引き裂くことになりますので望ましいことではなく、私としましては、統治機能に沿った、より調和的な”いいとこ取り”を目指すべきと思うのですが…。日本国の政党の問題は、ご指摘の通り深刻であり、再編を要するように思えます。近日中に、この問題を記事にしたいと考えております。
あずみ渚さん (竹槍)
2017-05-07 04:34:17
結局、保守派の日本人に占める割合が少ないから、保守派は反日左翼に対抗するために、新自由主義者勢力や利権主義者たちと共闘せざるを得ないのですよ。
人類全てが百か国語をしゃべる時代 (Unknown)
2017-05-07 04:44:14
トヨタの工場などでは、大勢の外国人研修生が働いている。この人たちとのコミュニケーションがスマホみたいな機器で簡単にできる時代が到来する。そうした時代では経営者は、国籍にかかわらず能力を重視して雇用するだろう。高度な技術者も国籍にかかわらず採用するだろう。経営合理的にはそうしなければ競争に敗れる。やがてレクサスは外国人が日本で作っている車になるかもしれない。
新自由主義を批判しても、根っこには技術発展がある。だから批判したぐらいでは衰退しない。
竹槍さま (kuranishi masako)
2017-05-07 09:08:36
 あずみさまへのコメントへのコメントとなることをお許しくださいませ。

 ここ数年の左翼の退潮ぶりを見ますと、日本人に占める保守派が少数とは思えないのです。むしろ、一般日本人の利益を代表する政党が存在しないところに、問題があると考えられます。
Unknownさま (kuranishi masako)
2017-05-07 09:12:00
 日本の企業が、日本国内において国籍に関係なく雇用するとしますと、それでは、職を失った日本人はどうなるのでしょうか?人類すべてが百の国語をしゃべる時代が来るならば、まず、Unknownさまが、自らをそれを実践し、可能であることを証明しててみてください。語学の天才でも、100の言語は無理です。Unknowさまのように、人間の能力を超える未来像を語るからこそ、新自由主義者は、一般の人々から反発を受けるのではないでしょうか。
Unknown (竹槍)
2017-05-07 10:13:09
それは先生が定義する保守の幅が広いからじゃないですか?保守にもいろいろありますけど、皇室廃止論を唱えたり、内廷皇族を批判する保守は超少数派ですよ。というか、ほとんどの保守は先生や私を保守だと認めないでしょう。先生や私は保守から見たら保守ではなく、せいぜい反日じゃないリベラルだと思います。グローバリズムに反対する日本人はたくさんいるでしょうけれど、彼らは必ずしも保守ではないし、彼ら自身も自分が保守だとは思っていないと思いますよ。日本のこころは典型的な保守ですけど、選挙では自力で1議席も得ることが出来ませんでした。結局、中道が反日左翼陣営から抜けてるだけで、保守に転向したわけではないのではないかと思います。
竹槍さま (kuranishi masako)
2017-05-07 11:30:44
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 今日の混沌とした政治情勢を見ますと、政治的な立場については、確かに、定義を明確化しませんと、議論が混乱するばかりとなりましょう。もしかしますと、政策に対する賛否で政治的立場を判断した方が、適切であるかもしれません。少なくとも、国家破壊を目的とする新自由主義と手を組む保守が真の保守とは思えませんし、外国等と結託し、犯罪にまで手を染める皇室を無批判に礼賛し、国民に崇敬を強要する保守も、真の保守ではないように思えます。

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