万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

共産主義国家中国はモンゴル帝国の再来か?

2017-07-25 17:31:35 | 国際政治
 13世紀のはじめ、ユーラシア大陸東部のモンゴル高原に突如現れたチンギス・カーンは、騎馬団を率いて周辺諸国に攻め入り、アジアからヨーロッパ東部にかけて広大なる帝国を築きます。草原の彼方から土煙が上がるのが見えたが最後、モンゴルの騎馬団に襲われた村々は、凄惨なる掠奪と虐殺の場と化したとされます。モンゴル軍の強さの秘密は騎馬軍の移動、並びに、戦闘能力の高さによって説明され、しばしば現代における戦車の登場にも喩えられます。しかしながら、『元朝秘史』を読み通しますと、モンゴル帝国出現の要因は、その野蛮性のみではないようなのです。

 チンギス・カーンを帝国の主に押し上げたもの、それは、侵略の自己目的化と、それに伴う被征服民族をも組み込んだ国家ぐるみの“掠奪・分配システム(集・配システム)”の構築です。『元朝秘史』の前半部分には、統治機構について触れる箇所は殆どなく、昔ながらのモンゴル族やその周辺諸族攻防が描かれています。この段階での部族間抗争は、洋の東西を問わず、人類史上、特に、古代においてしばしば見られるありふれた光景です。ところが、第六巻におけるケレイド族の殲滅あたりから様子が変わってきます。そして、同巻の後半部分に、以下の興味深い一文を見出すことができます。

「オングッド族のアラ・クシ・ディギド・クリの許より、アサンという“商人”(サルタクチン:回回)が駱駝を連れて、…そこでチンギス合罕に会った。」

 オングッド族とはトルコ系の遊牧民であり、商人の漢語表記は回回であることから、トルコ系遊牧民族と取引をしていた諸国をめぐる人、即ち、ここでは商人と訳されています。しかしながら、回教徒、即ち、イスラム教徒との解釈もあり、この人物の名がアサンであることから、ハッサンというイスラム系の商人であったのかもしれません。何れにしても、軍事的な記述が大半を占める『元朝秘史』にあって、外国人商人の名がはっきりと記されているのはこの箇所のみです(その後の巻でも、アサンに関する記述はない)。次いで第七巻に入りますと、突然に、単純な部族社会であったモンゴルが、帝国へとその統治機構を編纂、変貌させてゆく過程が克明に描かれるようになります。そして、その組織化の手法には、ペルシャ帝国、ローマ帝国、中華帝国などの統治技術が散見されるのです。

 かくしてモンゴル族の支配地には、チンギス・カーン独裁体制を維持するための親衛隊(宿衛人)なども組織される一方で、非征服民族、並びに、服属民族をも対象とした軍制が敷かれ、一万戸、千戸、百戸といった住民編成に基づく徴兵制度も整えられます。いわば、征服のための常備軍を設けたのであり、周辺民族や他国は征服事業のターゲットとして位置付けられることになるのです。こうした統治技術が、アサンといった“お雇い外国人”から齎されたことは想像に難くなく(『元朝秘史』には記述はないが、遼の耶律楚材も登用…)、征服事業に伴って獲得した略奪品や捕虜奴隷は、イスラム商人やユダヤ商人等の手で遠方に売り払われたのでしょう。そして、“鉄車”なる兵器の記述は、征服事業で得た資金を先端兵器の購入に充てていたことを窺わせるのです。

 モンゴル帝国建設の過程は、見境なき殺戮を許す“野蛮性”と帝国の統治技術との結合の恐ろしさを伝えています。そして今日の中国も、共産主義体制と言う“集・配システム”の下で中央集権化が進められております。統治目的が国民一般の福利ではなく、国際社会における覇権の確立へと向かう時、それは、モンゴル帝国の再来になりかねないと思うのです。

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2 コメント

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支那は侵略国家 (あずみ渚)
2017-07-26 12:51:46
こんにちは 鎌倉時代に起こった元寇  これは高麗王が元の皇帝を唆したようです 日本を攻めてきた兵は殆ど高麗人だったとか、九州対馬も彼らの略奪に遭い多数の男女が奴隷として大陸に連行されたようです 高麗国だけではなくマルコ・ポ-ロのような外国商人も利益を貪ったかもしれません

現在の支那は漢民族の国ですが、元帝国のDNAは確実に引き継いでいるでしょう 今月も支那の軍艦が尖閣だけでもなく 津軽海峡にも侵入しています
沖縄の知事は離島に外国人を就業させたいと工作員丸出しの発言をしています 
なのに国会では加計問題ばかりで、危機感がかなり欠けてます 今度は神風が吹くという確率は低いと思います 
あずみ渚さま (kuranishi masako)
2017-07-26 13:13:04
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 加計問題の背景には、中国等の工作員の活動があるのではないかと疑っております。モンゴルもまた、遠征に先立っては諜報活動を行っており、現代においても、その侵略的戦略は変わらないのではないでしょうか。バドゥの征西に際しては、ヨーロッパ諸国もまた、クビライ汗の死去という神風が吹き、九死に一生を得ましたが、中国の覇権主義は、14世紀と同様に、我が国のみならず、全世界的な危機をもたらすのではないかと懸念しております。

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