万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

怪しい日本政策投資銀行とワールド社の共同ファンド設立

2017-07-04 17:18:55 | 日本政治
 7月3日付の日経新聞の3面に、にわかには信じがたい記事が掲載されておりました。それは、日本政策投資銀行と民間アパレル会社のワールド社が、ファッション特化型ファンドを共同で設立すると言うものです。

 ファンドの名称は、「W&Dデザインファンド」であり、約50億円の運用資金は両者折半とのことです。経営が不安定となり易いファッション業界に対する成長支援が目的であると説明されていますが、日本国の政策金融機関である日本政策投資銀行が一民間企業と共同で融資事業を行うことには疑問があります。

 日本政策投資銀行(株式会社政策投資銀行)は、2014年を目途に完全民営化が計画されていたものの先延ばしとなり、現在においても国が100%出資しています。公的金融機関は、その活動や融資対象の選定に関して兎角に政治利権化するリスクがあり、それ故に、より厳しく公平・中立性が求められる立場にあります。

この観点から本件を見ますと、第1に、公的金融機関と一民間銀行との政治的な癒着が疑われます。官民一体ファンドは、最近では、サウジアラビアの政府系ファンドがアップル社やソフトバンク社等の民間企業と共同で出資ファンドを設立した事例もありますが、こうした手法は、公私混同の政治文化が根付いている国や地域、あるいは、国際組織に見られます。日本政策投資銀行は、ヘルスケア分野でも、三菱UFJリース株式会社と共同ファンドを設立しており、この種の手法が拡大すれば、特定の企業への利権付与になりかねません。

第2に、ワールド社は、自らがファッション業界の事業者であることです。市場では公正・公平な競争が強く求められますが、国をバックとした大手事業者による融資活動は、市場における競争を歪めるなど、独禁法に抵触する可能性があります。出資は半々ですので、ワールド社が自らの市場支配力や囲い込みを強める事態ともなれば、政府の責任が問われることとなりましょう。この点、共同ファンドの相手が一般の金融機関であった方が、まだ、官民ファンドの理屈は通ったかもしれません。

第3に、どのような経緯でワールドが共同出資者となったのか、その経緯が不透明なことです。政府調達の場合には、公正・公平な競争入札が義務付けられていますが、共同ファンドの設立といった活動の場合には、恣意的な選定が行われる余地があります。仮に、政府が政治的コネクション等によって選定したとなりますと、利益誘導に対する批判を免れることはできないのではないでしょうか。

 先日の都議会議員選挙では、自民党は歴史的敗北を喫しましたが、その要因の一つとして挙げられているのが、加計学園問題です。真偽を判断するには情報不足なのですが、少なくとも、野党が政権に対する絶好の攻撃材料としているように、国民の多くが政治家の私的人脈等による利益誘導を政治腐敗と見なしていることだけは確かなことです。今般の日本政策投資銀行のワールド社との共同ファンド設立にも、不自然、且つ、不公平である故に、背後に何かが蠢いている気配を感じさせるのです。

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