万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米比対立でも中国の立場は好転しないー国際法秩序の問題

2016-09-18 14:18:58 | 国際政治
「中国と対話の用意ない」=南シナ海仲裁判決めぐり―比外相
 
 昨今、その過激な発言で注目を集めているフィリピンのドゥテルテ大統領。南シナ海をめぐる仲裁裁判では事実上の全面勝利を得つつも、フィリピンの立ち位置については、どこか不安定感が漂っています。

 フィリピン外交の不安定性の要因は、米中の狭間にあるドゥテルテ大統領の一種の”孤立政策”にあります。ドゥテルテ大統領の祖父は中国出身とされ、同大統領の親中姿勢もこのバックグランドに由来します。その一方で、同大統領の”フィリピン・ファースト”の方針は髄所に見られ、国際的な批判をものともせず、国民の支持を背景に麻薬取締に辣腕を振るってきました。この姿勢は”南シナにおける中国との対立でも一先ずは貫かれており、”中国に領土は絶対に譲らない”と宣言し、中国との間の距離を国民に見せつけています。対中強硬姿勢からしますと、誰もが、対中戦略上、親米政策に傾くと考えがちですが、ドゥテルテ大統領の対米政策は大方の予測とは逆に、むしろ悪化の方向に向かっているようです。オバマ大統領に対する暴言のみならず、同盟関係にありながら米軍の撤退(ミンダナオ島の米軍特殊部隊…)にまで言及しているのですから、事態は深刻です。

 激しさを増す米比対立は、中国から見ますと願ってもないチャンスであり、アメリカの後ろ盾を失ったフィリピンを懐柔すれば、南シナ海の仲裁裁定も”棚上げ”、あるいは、”なかったこと”にできると読んでいることでしょう。権謀術数に長けた中国ですから、裏では積極的に米比離反工作に暗躍しているものと推測されます。『孫子』にも、戦争には詭道も必要として、”敵が親しみ合っている時にはそれを分裂させよ”とあります。

 しかしながら、中国の米比離反作戦は、狙い通りに功を奏するのでしょうか。たとえ、米比関係が悪化の一途を辿っても、アメリカが、仲裁裁定の支持を取り下げるとは考えられません。何故ならば、この問題は、中比二国間ではなく、国際社会全体に関わる国際法秩序の問題であるからです。戦国春秋時代の思考を以って現代の問題に対応しようとする中国は、時代を見誤っていると思うのです。

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