万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

教育無償化の対象は誰なのか?ー移民問題とのリンケージ

2017-11-04 16:44:50 | 日本政治
 教育無償化政策については、凡そ殆どの政党が、‘右向け右(左向け左か?)’の如く同じ方向を向いているようです。この方向性は国連の方針とも連動しているようですが、ここで思い出されるのは、民主党政権時代の2010年に起きた、“子ども手当”の支給対象をめぐる議論です。

 同制度導入に際して問題となったのは、支給対象の原則を属人主義とするのか、属地主義とするのか、という議論です。この時、民主党政権では、従来の児童手当制度を踏襲したとはいえ、日本国内における養育者の居住を基準とする属地主義を選択しています。このため、出身国に子供が居住している外国人の親にも支給される一方で、日本に子供が居住しながら親が外国にいるケースには支給されないとう、不公平な事例も発生したのです。現在では、特別措置法の成立によって、外国に居住する子供への支給は廃止されましたが、子供だけが国内に残る後者のケースは未だに支給対象外のままです(名称こそは児童手当に戻されたものの、今日でも、制度そのものは継続している…)。

 それでは、教育が無償化される場合、政策対象の範囲は、どのように定められるのでしょうか。幼児教育については、児童手当に倣って属地主義の原則が採用される可能性は高く、外国人を含む日本国内に居住する養育者が対象となるものと推測されます。一方、高等教育に関しては、仮に、学生が成人年齢に達している大学にまで無償化が及ぶとしますと、属地主義の原則を採用すれば、扶養者ではなく本人の居住地が基準となるかもしれません(留学生の場合、日本国内の外国人留学生は支給対象に含まれる一方で、海外の大学に留学した日本人留学生は対象外となる…)。あるいは、属地主義は、自然人ではなく、法人、即ち、学校の所在地が基準となる可能性もあります(朝鮮大学校も無償化?)。

 しかしながら、今日の日本国を取り巻く状況の急速な変化を考慮しますと、属地主義の原則については、再考を要するように思えます。経済特区の設置や規制緩和に伴い、近年、急速に在日外国人の数が増え続けており、既に200万人を突破しています。入国管理法の要件緩和により、永住資格を有する外国人も増加傾向にあり、日本国が教育無償化を実施した場合、この傾向に拍車をかける可能性もないわけではありません。特に中国では“一人っ子政策”が廃止されたため、教育費がゼロとなる日本国での子育ては魅力となるはずです。

 児童手当における国籍条項の撤廃については、日本国が1981年に加入した「難民の地位に関する条約」がしばしば根拠とされていますが、当条約の対象はあくまでも難民であり、移民一般ではありません。フランスなど、手厚い子育て支援の実施により人口が増加に転じた国もありますが、移民家庭の出産率の高さに因るところ大きく、結果的には国内の人口比の変化にも影響を与えています。教育無償化とはそれ自体が慎重、かつ、多面的な議論を要する政策ですが、無償化の対象に関する問題についても、諸外国に及ぼす影響を含め、国民的な議論を尽くすべきと思うのです。

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