万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

対北政策における日米の温度差ー奇妙な安倍首相の発言

2017-04-18 16:48:35 | 国際政治
米副大統領、対北朝鮮「力で平和達成」=安倍首相、トランプ政権の姿勢評価
 本日午後、日本国の安倍首相は、アメリカのペンス副大統領と会談し、北朝鮮問題に対して意見交換を行ったそうです。マスメディアの報道ですと、方向性について意見が一致したような印象を受けるのですが、両者の主張を聞いてみますと、相当の温度差があるように思えます。

 報道によれば、アメリカのペンス副大統領が”力での平和達成”を主張したのに対して、”安倍首相も、北朝鮮が真剣に対話に応じるよう圧力をかけていくことが必要だ”と述べたとしています。この文章構成ですと、ペンス副大統領の意見に対して安倍首相も同調したと読めます。しかしながら、両者の意見は、天と地ほどの違いがあります。何故ならば、安倍首相は、アメリカがあらゆる手段を用意していることを評価しながらも、対話路線への回帰を暗に勧めているからです。”北朝鮮が真剣に対話に応じる”ことが、軍事的圧力の目的と述べているのですから。

 これでは、安倍首相は、対話に持ち込みたい北朝鮮のためにアメリカを説得しているようなものです。しかも、対話に持ち込んだとしても、北朝鮮に、核・ミサイル開発の放棄を期待することはできません。1994年の米朝合意でも、六か国協議でも、北朝鮮は、表向きでは放棄を約束し、その素振りを見せながらも、結局は、アメリカをはじめ国際社会を欺き、密かに開発を継続していました。その結果が今日の危機であるとしますと、対話路線への回帰は、もう一度、この誤りを繰り返すことになります。それとも、首相が語る”対話”の意味するところは、北朝鮮による全面的な”降伏”なのでしょうか。

 安倍首相をはじめ、政界の一部の人々には、カルトを疑うほどの”対話”への拘り、即ち、”対話信仰”が見受けられます。対話路線の結果として引き起こされた危機的事態に対して対話に戻れと説くのはあまりにも非論理的ですし、北朝鮮に有利な状況をももたらしかねないと思うのです。

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8 コメント

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Unknown (メイ)
2017-04-18 18:53:19
対話によって拉致被害者の奪還も出来ない日本政府が対話の力を信じているとは思えないのですが、拉致被害者は北の人質のようなものであり、北は拉致被害者の命と引き換えに米軍の軍事行動を阻止するよう日本に圧力を掛けてきているのでしょうか?
拉致被害者家族の願いは米軍による北の無力化と家族の奪還でしょう。
日本政府には拉致被害者奪還のチャンスを不意にしないで欲しいと思います。
ご家族も高齢で先が長くないのですから。
メイさま (kuranishi masako)
2017-04-18 20:09:23
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 1994年の米朝合意以来の対話路線は、北朝鮮に、核とミサイル開発の時間を与えることにもなりました。この間、拉致被害者の救出も進まず、北朝鮮の軍事的脅威も増すばかりです。対話路線の失敗が明白な以上、この路線への回帰はあり得ず、日本国政府は、ゆめゆめ北朝鮮を利するような発言はすべきではないと思うのです。
Unknown (神社百景)
2017-04-19 03:36:14
亡命と引き換えの拉致被害者救出の実現のため、対話シナリオは残しておきたい、そのための訪露であろうと推定しております。
また、発足したばかりのトランプ政権には、ロシアとの外交チャンネルがなさそうな気がしており、安倍首相は、アメリカ外交の特使みたいな感じなのかもしれません。
訪露が済むまで、安倍首相は、対話路線は放棄しないと推定しております。
神社百景さま (kuranishi masako)
2017-04-19 09:06:38
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 人社百景さまも申されております”亡命”とは、金正恩氏が日本国に亡命を求めるということなのでしょうか。それとも、日本国の橋渡しによるロシアへの亡命ということなのでしょうか。後者といたしますと、安倍首相の言う”対話路線”とは、金正恩氏による亡命同意の申し出となりますので、事実上の”降伏”、あるいは、”投降”ということになりましょう。この意味でありますならば、”対話路線”は、以前の”戦略的忍耐”とは著しい質的な違いがありますので、試みる価値はあるとは思います。ただし、時間稼ぎの可能性や亡命後の北朝鮮の政権については、リスクを含めて考慮しておくべきとも考えております。
対話がカモフラージュなのかも (Suica割)
2017-04-20 12:48:11
その間に根回しするのですかね?

戦略的奇襲をするなら、中国かロシアの侵攻はあり得そうです。

アメリカが中国かロシアの侵攻を認める。
名目は核兵器拡散阻止。
そのあとに、即時撤退するならば、傀儡政権樹立又は、放置の許可。
脅威解消の名目でザード配備の撤回と反対給付としての中国の韓国制裁の解除。

とくに周辺国に損する事項はありません。
北朝鮮国民にとっても、金体制が消えるので、損ではない。
Suica割さま (kuranishi masako)
2017-04-20 13:09:15
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 ネット上などでは、金正恩のロシア亡命説が流れておりますが、確かに、金王朝の排除は、全ての関係国、並びに、国際社会にとりまして、朗報となることと思います。ただし、中国やロシアが軍事介入した場合、北朝鮮軍が、反撃する可能性も否定はできません。北京などは、アメリカよりも近く、核攻撃を受ける可能性もあります。また、金王朝排除に成功したとしても、その後の政権次第では、さらに危機が深まる事態もあり得ない事でもありません(ロシアや人民解放軍による占領と軍事拠点化など…)。楽観視するのは、早すぎるようにも思えるのです…。
Unknown (竹槍)
2017-04-22 13:05:36
理想的帰結。こうなってくれると助かります。
http://or2.mobi/data/img/154087.gif
Unknown (Unknown)
2017-04-22 13:38:23
コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 ご紹介いただきました地図は、ドイツ占領期の四カ国共同管理体制を思い起こさせます。この状態を実現するには、四カ国の軍隊が進駐する必要ありますが(この時、米中ロ韓は”同盟軍”となるのでしょうか?)、北朝鮮側が戦勝国の共同管理を受け入れるという形態ではない限り、やはり、北朝鮮軍の反撃も予想されます。それとも、北朝鮮に、四カ国の占領区を設けるように迫るのでしょうか。もっとも、中央部に”北朝鮮領”が残っておりますので、完全に北朝鮮を占領下に置き、体制転換可能なレベルには至っていないようであり、この点も、核・ミサイル放棄のみならず、金正恩氏の排除という目的からしまして、懸念材料となるように思えます。

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