万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

レッドラインを越えた北朝鮮-近づく最終局面

2017年09月03日 16時16分14秒 | 国際政治
北朝鮮、核実験か=北東部で地震―「ICBM用水爆」の可能性
 本日午後正午過ぎ、北朝鮮が第六回目の核実験を実施したとする速報が飛び込んできました。地震規模にしてマグニチュード6.3前後の揺れが観測されており、過去最大級の核実験との見方もあります。

 今般の核実験において注目されるのは、アメリカのトランプ大統領の決断であることは言うまでもありません。アメリカは、硬軟取り混ぜた姿勢で北朝鮮と対峙してきたものの、北朝鮮に対しては、越えてはならないレッドラインとして核、並びに、ICBMの実験実施を挙げてきたからです。ICBMについては発射されたミサイルの飛距離等の判断によって基準が曖昧となりますが、核実験に関しては、その並外れた爆発力と‘ゼロ’という震源の深さから容易に判別がつきます(ICBM搭載用の水爆とも…)。言い換えますと、北朝鮮は、レッドラインを越えることを承知の上で、核実験を敢行したのです。

 この実験により明らかとなったことは、北朝鮮は、核の保有こそ自らの命綱と考えていることです。否、“はったり”ではなく、核保有の裏付けの下でアメリカ、周辺諸国、並びに国際社会を脅迫し、自らの要求を呑ませるために核実験を急いだとも言えます。核兵器の開発と保有が前金正日政権から受け継がれた至上命題である限り、94年の米朝合意も六か国協議も、全く以って無駄であったことがよりはっきりしたのです。

 となりますと、米朝の解決に関する立場は逆転し、今後、アメリカに対して“対話”を強く要求するのは、北朝鮮側となることが予測されます。もっとも、北朝鮮が求める“対話”とは、核やICBMの放棄を取引材料とする外交交渉ではなく、北朝鮮を正式に核保有国として認めさせ、アメリカに対してTHAADの撤廃や対北敵視政策の放棄等を迫る脅迫の舞台としての“対話”です。言い換えますと、核実験に踏み切ったことで、北朝鮮は、この問題に関して自国が無傷で済む選択肢は、対米対話要求一択に狭まったのです。仮に、予告通りにグアム沖に向けてICBMを発射するなど、実際に攻撃を仕掛けようものなら、アメリカによる報復攻撃により、自国の破壊と破滅が待っているのですから。

 その一方で、アメリカ側の対応は、対話路線から武力、あるいは、経済制裁路線へと大きく傾くことでしょう。今般の核実験によって、北朝鮮とは逆に、対話は解決の手段として後退するのです。核・ICBMの放棄を前提としない北朝鮮との対話など、全く意味がないばかりか、アメリカが暴力国家に屈することに他ならないからです。

 早々、国連安保理でも緊急会合が開催されるそうですが、北朝鮮がNPTや国連決議等に明白に違反した以上、国際社会においても制裁強化への流れはさらに強まり、武力制裁を容認する決議も視野に入ってくる可能性もあります。なおも中ロの出方が懸念されるところですが、今般の核実験によって、北朝鮮問題の最終局面はいよいよ近づいたのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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