万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

政治家も学者も”現実”を知ることは不可能

2012-02-12 16:16:34 | 日本政治
橋下氏が議論に強い理由の一つ 論理的でない突飛な発言にあり(NEWSポストセブン) - goo ニュース
 大阪市長の橋下氏は、テレビ・カメラを前に、論客たちを次から次へと言い負かし、議論強さを国民に印象付けているようです。ある番組では、学者を相手に”学者は現実を知らない”と、反論を封じたそうです。

 市長の発言は、必ずしも論理的ではないとの指摘もありますが、実際に、政治家も学者も、人間である以上、全ての”現実”を知ることは、全くもって不可能なことです。政治家であれ学者であれ、個人としては、今日に至るまでの生い立ちや就いた職業など、極めて限られた経験しかすることができません。知識や情報の大半は、書物や経験者との対話などによって、自らの経験以外から獲得したものなのです(書物などによる知識の獲得は、先人達の経験知や知見を引き継ぐことでもある…)。神の如くに全知全能でない限り、一人の人間が、現実を全て見通すはできませんので、”現実を知る者しか発言ができない”とばかりに、政治家や学者に発言資格として現実の経験を求めることは、議論の封殺にも繋がりかねません。橋下市長自身、弁護士であったわけですから、自らは、”現実”を知らずして政治の世界に飛び込んだことを、どのように説明するのでしょうか。

 人間には経験のキャパシティという限界があります。そうであるからこそ、政治においては、謙虚にこの欠陥を自覚し、”現実”を知る現場や、政策の影響を受ける一般の人々の意見こそ尊重すべきと思うのです。この意味においても、市長の発言は、独裁型のリーダーシップを目指す自らの方針にも反しているのではないでしょうか。

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