KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

リアル一ノ倉(本谷~4ルンゼ)

2010年10月16日 | 沢登り

天候:時々
同行:タケちゃん
行程:ベース・プラザ4:55-一ノ倉沢出合5:50-幻の大滝7:25-二ルンゼ出合9:50-稜線14:20-トマの耳15:20-登山指導センター17:35
参考:「チャレンジ!アルパインクライミング」廣川健太郎・著、東京新聞出版局

 さて、今回は相方タケちゃんからのリクエストで、一ノ倉沢本谷。
 これまで一ノ倉沢へは何度か出かけているが、本谷というのは知らなかった。
 というのも昔は一年中雪に埋もれて登攀の対象になっていなかったからで、それが近年(地球温暖化の影響もあって?)姿を現すようになったらしい。
 なんでも一ノ倉沢を本谷通しに行くことを「リアル一ノ倉」、そして核心となる滝はなかなか姿を現わさないことから「幻の大滝」と呼ばれているとか。

 前夜のうちに現地入り。
 紅葉シーズンで週末は一ノ倉沢出合まで車で入れないため、ベースプラザ付近からヘッデン点けてトボトボと歩き始める。

 一ノ倉の出合で夜が明ける。
 時代の流れか衰退気味の本チャン・クライミングだが、本日は天気も良く、そこそこパーティーが集まっている様子。
  
 今回は「沢通しで」というタケちゃんの要望で、出だしから水流通しに行く。
 足回りは二人ともアクア・ステルス。念のため、岩の核心部用にフラット・ソールも持ってきている。

 

 出だしは小さな釜が連続する平凡な沢の様相。
 白く磨かれたスラブをペタペタと上がっていく。
 二ノ沢や三ルンゼに行くパーティーもいて、てっきり右岸の巻き道で上がっていくのかと思ったら、彼らも沢通しに登ってきた。で、やはり同じようにアクア・ステルスを履いている。
 
 要所要所にフィックス・ロープがセットされている。結構、新しいものもあり、沢通しも意外と歩かれているようだ。
 タケちゃんはアクアのフリクション性能を確かめるように、極力フィックスに頼らず登ってくる。私はそれほど無理しないで、使えるものは使います。

 

 
 
 「一ノ倉、初めてなんでガイドよろしく!」というタケちゃんに応えて「これが衝立前沢、上に見えるのが衝立岩で・・・。」と、にわかバスガイドになって遡行を続ける。
 ヒョングリの滝まではあっという間。右岸の巻き道を行くより楽だし早い。

 

 そして、ここからが本谷の見どころ。
 どこか日本離れした広大なスラブ帯。ブッシュさえなければ、どこかの星の巨大クレーターの底にいるようだ。
 真っ白いスラブに黒い染み出しが幾何学模様を描くSF映画のような風景。
 テール・リッジからは絶対に見ることのできない「もう一つの一ノ倉」がここにある。

 

 

  

 急峻なスラブの左側面をトラバースするように上がっていくと、左手から二ノ沢が入ってくる。
 ここでタケちゃんは「沢のHPの人ですよね。」と声を掛けられる。
 「犬も歩けば~」じゃないが、「沢を歩けばこの人に当たる」というわけですな。さすが!

 

 そのまま本流通しに詰めていく。2~3の小滝を上がっていくと、いよいよ「幻の大滝」。
 おぉ、これかぁ!・・・しかし、大滝といってもそれほど大きくない。
 せいぜい20m、いや、そんなにもない感じ。
 ただ両側を急峻な壁に挟まれ、悪そうなイメージは十分。
 写真など撮りながら、しばし観察する。

 一息ついたところで、そろそろ行きますか。
 で、タケちゃんに声を掛けると、「やっぱ、ここは通常通り左壁で巻きですよね。」と言う。
 えっ!そうなの?いつもはイケイケなのに相方らしくない発言。ナンか、らしくねーんじゃねーのか(←ルカワか!)

 そこで再び真下まで近づき、幻の大滝をシゲシゲと観察。
 狭いチムニーがそのまま真直ぐ上に伸びて、上の方はチョックストーンが挟まっているが、うまく潜り抜けていけるようにも見える。
 「まさか!それは無理でしょう。」
 何言ってんだ、このおっさんは・・といった顔でタケちゃんは笑うが、まだ時間に余裕はあるし、ここはダメ元でトライしてみることにした。

 で、私のリード。
 いきなり、身体がスッポリはまるチムニーで最初の段差に足が上がらない。
 背中を壁に押し当てて身体を浮かし、何とか一段せり上がると、同じ要領でズリズリと中間地点まで行くことができた。
 ここで上部CSは潜れないことが判明。つーかチムニー自体も狭過ぎてとても入り込めない。タケちゃんの言うとおりだったが、ここまで来て諦めるのももったいない。
 
 カムでランナーを取り、保険としてハーケン1枚打ち足し、さらに上がっていく。だが、最上部、ハングした濡れた岩の部分で行き詰まってしまう。
 「エイリアンの頭」のような黒い岩を避けるため、左右どちらかに逃げたいが、なかなか移れない。
 左の方がホールドありそうだが濡れてて壁が立っているし、タケちゃんが薦める右側は岩が乾いてフリクションは効きそうだが、これといったホールドが無い。
 さぁ、どーする?どーする!・・・考えているうちにステミングしている両足が次第に痺れてくる。

 ジャストフィットではないが、もう一つカムが決まった。もう思い切って行くしかない!
 「(ビレイ)頼むよ!」と声を掛け、「エイリアンの頭」を跨いで右足をチョックストーンへ。届いた!だが、バランスが悪く、しかもロープがチムニーで屈折してしまい、めちゃくちゃ重いっ!
 ヤバっ!落ちる・・・と思いながらも何とかバランスで耐えて核心突破!

  ここまでは何とか・・・

  核心「エイリアンの頭」。ここがシビれる

  YEAH~

  やっほ~ 

 体感グレードとしてはⅤ(Ⅳ+、A0)といったところか。なかなかシビレた。
 フォローのタケちゃんはさすがにスイスイ上がってくるが、それでも最後の部分はちょい力が入った様子。
 で、「いやぁ、これはもしかして大滝初登だったりして?」なんてヨイショしてくれるが・・・まさかね。
 でも、確かにここだけまったく残置が無いし(我々も一本打ったクロモリは回収)、そもそもが岩屋の領域。わざわざ濡れたチムニーに突っ込む物好きクライマーはいないだろう。
 これまでも二人で行った沢では、和名倉沢の「通らず」を通っちゃったり、オツルミズのサナギ滝上段もシャワーで正面突破しちゃったりと、ガイド本無視の掟破り?をしてきたが、また今回も「あいつらアホだ」と言われそうなネタを作ってしまった。
 
 大滝を過ぎると、またまた大スラブ帯。
 しかも、次第に傾斜を増してくる。
 左手、滝沢下部の染み出した黒い壁が何とも悪そうなのが印象的だ。

 

 

 私はできるだけ安易に右側のリッジ状を行くが、タケちゃんは岩に吸い付くようなアクアのフリクションがよほど気に入ったのか「おぉーっ!滑らない。」とか言って、スベリ台のような急峻なスラブをどんどん登っていく。
 うーん・・・こっちから見るとナンかスゴイとこ登っちゃってますけど。

 

 この辺り、ロープを結ぶには中途半端。お互いを信頼してスラブの感触を楽しみながら、それぞれ好き勝手に高度を上げていく。
 烏帽子奥壁や二ルンゼ方面からは、盛んに「ラークッ!」の声や悲鳴とも罵声ともつかないコールが聞こえてくるが、本谷のスラブ帯はいたって静か。

  
 滝沢下部(左)と衝立岩

 で、いよいよ上部、四ルンゼに突入。

 もちろん正面突破の方針で行く。
 トポではFナンバーが付いているが、イマイチ判然としない。
 どれもこれもチムニー状のCS滝って感じだ。

 

 トポにあるF滝、F1はよくわからないまま通過。左手に三ルンゼが分かれる。

  

 すぐにF2(8m)。
 中間部で岩が覆い被さっていて、そこを抜け出す部分がヌルヌル。アクア・ステルスが最も苦手とするヤツだ。
 古い残置スリングが残っていて、だましだましそれに足をかけて突破。抜け出た上もやや悪いが、何とかこなす。

 続いてF3(15m)。
 見た目、ホールド豊富で簡単そうだったが、濡れていて結構悪い。
 残置ハーケンはベタ打ちだが、どれもこれも古く、ハンマーで叩けば崩れてしまいそうなボロばかり。
 何とか凌いで滝を越え、ここでピッチを切りたいところだが、草付が不安定。
 自然と左の草付スラブへ追いやられ、ランナウトしたまま約20m伸ばすが、ここまで来ると明らかにルートミス。
 ハーケン2本で支点を作り、とりあえずタケちゃんを迎える。
 上がってきたところで、そのまま微妙な右トラバースをしてもらい本流に戻った。

 
 
  

  

 ここから本谷は幅が狭くなり、小滝がいくつか続く。右岸のスラブ伝いに一気に越えて行く。

 適当な所で沢筋に降り、7mほどのCS滝にタケちゃんがtry。得意の「突っ張り」で一段上のCSの上に乗るが、ナントこの岩がグラッと動く。
 タケちゃんはすぐに上に逃げ、私は安全のため、お助けロープを出してもらってフォロー。

 

 

 さらに2段10m(F5?)もチムニー状。私が先に取り付き下段までは突破するが、上段がかなり狭い上に右壁がヌルヌル。
 アクア・ステルスが最も苦手とするパターンで、 チムニーに身体を挟んだまま動くに動けず。壁をタップして思わず「ギブ・アップ!」
 タケちゃんがすぐさま右から巻き上がって、お助けロープを出してくれた。(調子に乗ってスミマセン・・

 

 この先も小滝があるにはあるが、そろそろ源頭部の雰囲気となる。
 で、ちょっと開けた所に出ると、そこで「ブンッ!」と何やら大きな蜂が飛ぶような音が聞こえた。
 ん、今の音、何?・・・ってふと上を見ると、大小20個ほどの落石が突然降ってわいたように飛んできた!

 「ヤバイーっ!!よけろ、よけろっ!」
 二人ともまだスラブの途中に張り付いているので、走って逃げるわけにはいかない。
 何とかやり過ごしたが、それでもタケちゃんは飛んできた小石に手の甲を1cmほど切られてしまう。
 落ち着いてから応急処置をするが、先行パーティーがいないこの位置だと、おそらく人為ではなく自然落石だろう。改めて谷川の恐ろしさを実感する。

 午後になると曇って視界が利かなくなってきた。ガスの中を次第に細くなる沢筋に沿って忠実に詰めていく。

 最後は一ノ倉尾根に合流。谷川特有の深い熊笹の詰めとなる。
 何年か前の秋、南稜から一ノ倉尾根を詰めた時はけっこう快適な道だったのに・・。稜線まで詰めるパーティーなど年々少なくなっているのだろう。
 稜線に出てガッチリ握手。お疲れさまでした~。

  我々、こういう趣味はございませんが・・・。

 

 下山は西黒尾根にしたが、四ルンゼの最後の詰めの辺りから私はエネルギー不足で、もうヘロヘロ。
 対して、相方は負傷しても相変わらずタフ。つい最近の健康診断では実年齢40半ばにして身体年齢19歳!という評価が出たとか・・・。マジっ?

 それでも、何とか残業とならずに無事下山。うーん、久々に充実の一本でした!


p.s.今回は不意の落石に見舞われてしまったが、それでも本谷~四ルンゼは烏帽子奥壁や二ルンゼなどに較べて浮石は少なく、いたって快適。
 ただ、長丁場なので体力つけてスピード勝負で臨みたい。
 装備としては今回、我々はアプローチから遡行、登攀、下山に至るまで全てアクア・ステルスの沢靴で通した。またカム(キャメの#0.5~#1)が非常に有効。
 最初から沢登りのつもりで濡れるの覚悟で行けば、「幻の大滝」直登は面白いと思います。

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キャ~ (zekku)
2010-10-26 11:00:29
素人ですが、一気に読んでしまいました。
読後、ドキドキ鼓動が暫く止まりませんでした。
あのタケシさんがこの人と信頼される現場監督さん…世の中には凄い人がいるんですね。

キャ~(2) (はなこ)
2010-10-26 11:35:19
私も一気読み。
昨年、たけしさんと現場監督さんの記録を頼りにオツルミズに突っ込み、台風&虫敗退したことを思い出しました。そのあとも、お二人の記録を頼りにオジカ沢にトライ。これはなんとか抜けたものの、トーゼン、記録通りにはいかず。あらためて世の中にはスゴイ人がいるんですね、と思ったのでした・・・一ノ倉は雪の世界だと思ってました・・・
キャ~(3)? (現場監督)
2010-10-26 22:05:10
 こんにちは!見ていただき、どーもです。

 う~ん、タケちゃんは確かに凄いけど、私は吉野家でいうなら380円、いたって「並」ですよ。

 「オツルミズで台風&虫」ってのもスゴイですね。最も運の悪い沢屋?・・・「ダイ・ハード」みたいです。

 まぁ、ちょこちょこと出かけておりますので、どこかの山で見かけたらお声掛けください。

 

 
こんな物作ってみました! (takeshi)
2010-10-30 23:36:09
コメント書けるようになった途端、スゴイ事になってますね(笑)

Windowsムービーメーカーなるものを利用して
こんな物作ってみました。
台風きてるし、下棚、篠沢、滝ハナも作っちゃいましたョ
私のhpから全部見れるようになってます。
一応このリンク先はは監督さんに『連れて行ってもらった』一ノ倉沢です。
吉野屋の380円まで届かない”すき屋”290円のTakeshiでした(^^ゞ
リンクが・・・ (takeshi)
2010-10-30 23:37:15
これです
なるほど! (現場監督)
2010-10-31 22:28:49
これなら動画と違ってルート全体のイメージが掴めちゃうわけですね。なんて親切なんでしょう。

それにしても、お互い「並」と言いつつ、なぜか内容は「メガ盛り」になっていることが多いような?・・気のせい?

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