Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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「あの日」から1年 Vol.2

2012-04-11 11:22:52 | 日本
畠山フク子さん(81)宮城県気仙沼市

フク子おばあさんと出会ったのは昨年3月、気仙沼の瓦礫のなか。大型漁船がうち上げられていた湾沿いの新浜町だった。

「貯めたお金を、探してるの。火事があっても焼けないように、消防士さんの服と同じ布で包んでおいたんだけど、どこに流されてしまったのかねえ。。。」

遺産として、息子のために貯めてあった箪笥貯金だ。少なくはない額だったが、結局このお金は見つかることはなかった。それどころか、瓦礫の上を行ったり来たりしているうちに、腰も痛め4ヶ月入院する羽目になってしまった。

「夜になると咳ばりしてたし、足も弱ってたので、息子に行くなといわれてたんだけど、黙ってさっささっさと行き来してたの。午前中にご飯食べていって、今度お昼食べてもまた行って、そのうちどうも腰が痛くなってきたなあ、と思って」

退院し、9月に仮設住宅に入居。震災前に介護センターに入所しており助かった夫の興治朗さんも10月に退所し、現在は2人で暮らしている。 興治朗さんはほとんど動くことができず、寝たきりだ。

「ケースワーカーさんが運転して看護士さんつれてくるの。毎週月曜日。『おばあちゃん大変だねえ』というんだけど、いつものことだもの。大変でもねえよ。わたし自分で頑張れるだけ頑張っからいいんだ」

トーンは高いが、なんだか心地よいやわらかさをもった声で話すフク子おばあさん。今年で81歳になるが、まだまだ気丈だ。

住んでいた土地は地盤が沈下し、もう家を建てることはできない。気仙沼市の現在の計画では公園になるようだが、まだはっきりとはわからない。市役所にかけあったこともある。

「役所に自分の土地さ勝手に公園にされても困るって、言ってきたの。だけど、『5年くらいかかるからどうなっかわからないんです』と言われたの。もう私たちが生きているうちに、良くはならないね」

歌が好きなフク子おばあさん、若い頃からよく歌っていたという。

「夜寝ててね、なんだか、頭が変になるから、夜中の12時あたりになったら、歌うたってるの。じいさんが歌えーっていうときは一晩中歌ってっけど、昔のようには歌えねえんだよ。調子っぱずれになってしまって」

頼むと、ちょっと照れくさそうにしながらも、やさしい声で一曲歌ってくれた。「お吉物語」だった。



泣いて昔が返るなら

なんで愚痴など言うものか

花のいのちは一度だけ

よしておくれよ気休めは

。。。


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