歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

越前和紙の産地を訪問してきました

2010-01-24 19:24:11 | ものづくり・素形材

 先日の福井出張で、越前市の福井県和紙工業協同組合を訪問してきました。JR武生駅から車で20分ほどかかりました。
 平成21年の調査によると全国に手漉き和紙の生産業者は約300軒ありますが、越前には35軒の業者が集中しており、機械漉きの業者、加工業者も含めると、組合員は64軒に上ります。また和紙の漉き師の人間国宝は全国に3名しかいませんが、うち1名は越前の方です。和紙の産地としては高知、美濃、富山の八尾などもありますが、越前は日本最大の産地なのです。
 しかし全国的に和紙生産は減少しており、越前和紙も厳しい状況に直面しています。原因は景気後退というよりも、生活の洋風化に伴う障子紙などの需要の減少、株券(和紙で作られていたのです)の電子化、学校における書道教育の縮小などがあります。また、和紙を使った小物類はタイで作られているものが多いのだそうです。和紙の原料となるこうぞは国産品は高額であるため、安いタイ産を多く調達しているうちに、ある産地がタイで和紙もOEM生産させるようになったとのことでした。



 越前和紙は、現代風のデザインを積極的に取り入れた便箋、封筒、化粧箱など小物類の商品開発を積極的に行っているのですが、小物類の生産額は全体の5%にも満たない小さなものです。生産のほとんどは写真のような素材としての和紙で、これらは通常は産地問屋を通じて流通しています。問屋からどのようなところに販売されているのか、どのように使われているのか、越前和紙の生産者には全く把握できないのですが、組合の方がおっしゃるには「おそらく全国のどの家庭にも最低でも1つは越前和紙が使用された商品があるのではないか。残念ながらそれが越前和紙だということは誰にもわからないが」、とのことでした。
 流通は産地問屋に任せて生産者は生産活動に専念する、という事業の形態は、かつては効率的だったのでしょう。しかし市場が縮小している現代では、消費者の感性に訴える要素が大きい商品だけに、地場産品の生産者はもっと市場に直接アクセスしていく必要があるのではないかと思いました。

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3 コメント

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Unknown (ぐるぐる)
2010-01-25 12:35:28
市場に直接アクセス。全くその通りですね。

でも、障子紙は日本の全家庭に普及とのことであれば、市場が広すぎ、なかなか有効なアクセスができない。どのようにセグメントするかが課題でしょう。和物小売店やその顧客などですかね。言うは易し行なうは難しです。
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Unknown (KADOTA)
2010-01-25 23:14:25
こんにちは。あちこち見学されていますね。確かに和紙の生産地はあまり聞いたことがありません。ずいぶん前に紙すきのまねごとはしたことがありますが。
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コメントありがとうございます (Kunihiko_ouchi)
2010-01-25 23:40:48
こんばんは。
越前市では和紙のほかに打刃物の産地も訪問しました。いずれこのブログで報告します。
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