クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

イニシャルDが説く“技術論”は? ―コトノハ(12)―

2012年06月03日 | コトノハ
 ドラテクってのはたった2、3日でどうにかなるようなもんじゃねーんだ。
 どうすれば思い通りにクルマが動いてくれるのかを…
 トコトン考えてトコトン走りこむしかない。
 オレなんざ現役で走ってるころは夢の中でさえも秋名を攻めてたぜ。
 寝ても覚めても考えることといえば走りのことだけだったよ。
 それでちょっとでも思いつくことがあれば夜中でもふとんからとび出して
 峠で試しにいくんだ。

『イニシャルD』1巻(しげの秀一著)に見える「文太」の技術論だ。
ぼくがこの漫画を読み始めたのは、免許取り立ての頃だった。
文太は続けて言う。

 ジョーシキでは考えられないようなすっとんきょうなことも試したな。
 10コ思いついたアイディアのうち9つは使いものにならなかったが
 それでも懲りずに走り続けたよ。
 技術ってなァそういうもんだ。
 教えられて身につくもんじゃねぇよ。
 自分でつくるものなんだ。

ぼくは何も走り屋になりたかったわけじゃない。
峠を攻めたかったわけでもない。
でも、この文太のセリフは好きだった。

職人でもプロでも、ある日目がさめて一人前になっているわけではない。
新人がいきなり家を建てられないし、
オリンピック選手にもなれない。

かと言って、「たった2、3日でどうにかなるようなもんじゃねー」。
技を積み重ねていくしかない。
プロは1日にして成らず。

どの世界や業界でも、文太の言葉は当てはまる。
この言葉は、作者のしげの秀一氏の技術論でもあるのだろう。

はじめから絵をうまく描く人はいても、
それを「作品」に仕上げるには技術がいる。
また、読ませる作品にするには、
画力の技術だけに留まらない。
あるいは技術を越えた向こう側なのかもしれない。

人はよく「将来は~になる」と言う。
でも、すぐには“成れ”ない。
こころざし、試行錯誤しながら、
技術なり自分のスタイルを見付けて出来上がっていく。

そうして身につけた技術は体にしみ込み、
忘れようにも忘れられない。
プロに王道はない。
最短を謳う方法はあっても、
持続させることで共通している。

成るのではなく出来上がる。
だとすれば、何もせずして一歩も進まない。
例え1日5分の練習でも、
継続することで腕は上がる。
自分の求める場所に近付いていく。

ただ、技術はそれ以上でも以下でもない。
技術を身につけた先に独自性がある。
そこから己の世界が拓けていく。
いつかは身につけた技術を破らなければならない時がやってくる。
新しさはいつも、技術や旧来の少し向こう側にあるものだから……

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2 コメント

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写真の車も痛車? (りんご)
2012-06-03 21:10:54
ずっと続けるって大切なことだとつくづく思う今日この頃。
仕事でも趣味でも普段の事でもコツコツ続けて上達するっていうか…
知識と経験を積み重ねて極めるんだろうなぁ
りんごさんへ (クニ)
2012-06-04 23:50:29
続けていくことこそ拓けていく道、身に付いていく技術がありますね。
ひと角に立つ人って、やはり続けてきた人だと思うんです。
途中でやめてしまう人がほとんどですから。
すぐに結果が出なくても、大きく飛ぶための力をためる期間だと思えば、続けていけますね。
ちなみに、写真の車は羽生市商工観光課の公用車です(笑)

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