クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

朝に“いがまん”を食べると何かが起こる?―河田市長と田舎教師―

2009年10月30日 | グルメ部屋
“いがまんじゅう”を食べると何かが起こる。
これはぼくが勝手に信じているジンクスである。

その何かとは、「普段あまり起こらないこと」になる。
“絶対”というわけではないが、
そう滅多に起こるものでもない。
例えば、市長とデートをするとか……

生まれて初めて、朝にいがまんを食べた。
前日にもらったもので、
秋らしからぬ暖かい気候を考慮して朝食にする。
ジンクスのことなどさっぱり忘れていた。

午前は社寺調査で、
“久保堂”という不思議な場所を調査した。
ボランティアの市民学芸員さんも多数参加してもらう。
市民学芸員さんには頭が下がる。

お昼は市民学芸員さんの“夏目さん”と“小野さん”と「味てつ」へ行った。
かなりラフな格好でラーメンを啜っていると、
ぼく宛てに店の電話が鳴った。
これから“河田晃明”羽生市長が館林の“田山花袋記念文学館”へ行くという。
そこに同行してほしいとのこと。
長が会議のため、急遽ぼくに白羽の矢が立ったらしい。

急いでラーメンを平らげ、資料館に戻ってスーツに着替える。
ネクタイを締めながら、
ふと朝に食べたいがまんのことを思い出した。
これはいがまんのジンクスか……

現在、田山花袋記念文学館では、
「花袋THE WORLD」を開催している。
副題は「田山花袋の『田舎教師』から100年」。

周知のように、花袋は館林生まれだ。
『田舎教師』出版百年を記念しての展示で、
河田市長は羽生はもとより、
桶川のさいたま文学館へすでにまわったという。

館林に向かったのは市長とぼくの二人だけである。
(運転手さんをのぞけば)
「デート」という表現はくだけているかもしれないが、
この拙ブログ内ではご勘弁してもらおう。
多少の緊張はあっても、
これを楽しまずして物書きではない、
と、勝手に思う。

と言うのも、羽生市にとって『田舎教師』は避けて通れないものだからだ。
今回の展示で実感しているが、
『田舎教師』のブランド性だ。
小説を読んだことはなくても、その作品名は多くの人が知っている。
羽生は文学の町と認識している人も、市内外問わず多い。
羽生を象徴する一つと言っても過言ではない。

そのシンボル的な作品と、羽生の顔である河田市長が向き合う……
時間を超えた歴史の対面のような気がした。
また、河田市長は元教員である。
「教師」で繋がっている。
これも歴史的なことに違いない。
ある新聞記者が「注目している」と言ったのも頷ける。

館では“田村敬”先生とばったり会った。
田村先生はぼくの母校の元教員であり、両親の恩師でもある。
また「教師」でつながった。
田山花袋や小林秀三が引きつけた縁だろうか。
ぼくはふと、朝に食べたいがまんのことを思い出していた。

同館は田山花袋ゆかりの品々を展示している。
館林の文化財担当者の方に案内してもらい、
特別に収蔵庫の中も見せていただいた。
花袋研究者のみならず、近代文学研究者には垂涎の品々だろう。

花袋の妻“里さ”は几帳面な性格で、
届いた手紙類などを大切に保存していたという。
著名な作家が書いた手紙を前に、
河田市長は感嘆の息をもらした。

「いらすごいね。普通の家なら捨てちゃうよ」
「市長もいまの内に保管しておいた方がいいですよ」
そのときは物書きではなく、
資料館調査員の血が騒いだ。

ところで、文学館から館林のつつじヶ丘公園は近い。
さらに言うと、“尾曳稲荷神社”が目の前だ。
館林城が別名“尾曳城”というのは、
この神社とゆかりのある所以である。

文学館を出たあと、市長は尾曳稲荷神社を目にして、
「あの神社が、文化ホールの緞帳にも見えるよね」と言った。
実は、羽生の文化ホールの緞帳(どんちょう)は、
田舎教師の教え子“小林三季”が描いた館林つつじの絵が、
そのままデザインとして使われている。

その絵の中に、「尾曳稲荷」の幟旗が描かれている。
この絵は、羽生郷土資料館の田舎教師展に展示中だ。
三季さん自らの解説も見逃せない。

ちなみに、文化ホールではNHKの「BS日本のうた」の公開録画が行われた。
“石川さゆり”や“水前寺清子”などが出演し、
当日は朝から多くの人たちが詰めかけた。
ぼくが個人的に好きな“あさみちゆき”も出演したらしい。

その開会のあいさつに、当然市長も出席されたわけである。
市を背負っている人はやはり忙しい。
気構えや覚悟も違う。
不遇でこの世を去った小林秀三のような、
いち田舎教師でないことは言うまでもない。

ちなみに、田山花袋は羽生の“太田玉茗”を訪ねたとき、
いがまんを食べたことはあっただろうか。
田植えや夏祭りのときにいがまんを食べる習慣と、
『田舎教師』が書かれた時期が重なるため、
口にしたことはあったかもしれない。

だから、『田舎教師』は花袋の代表作となって、
いまでも読まれているのではないだろうか。
と、そう思うのはぼくの勝手な想像であって、
もちろん根拠はない。

あるいは、いがまんを食べたのは小林秀三だったのかもしれない。
20歳で亡くなった青年は、
100年以上が経ったいまでも生き続けているのだから……



いがまんじゅう



社寺調査



「味てつ」のラーメン(埼玉県羽生市南5丁目)



田山花袋文学記念館(群馬県館林市)



尾曳稲荷神社(同上)



田山花袋記念文学館にて。
中央が河田晃明市長、左が館林文化財担当の方、右がわたし。
写真掲載の許可は市長からいただいている。念のため……


参照URL「羽生市ホームページ」内
http://www.city.hanyu.lg.jp/kurashi/madoguchi/hisyo/03_city/03_mayor/album/album.html

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昨日は… (近隣市民)
2009-10-30 07:50:45
突然の訪問失礼致しました。
 
閉館時間にそうですが、図書館外の休憩スペースも閉館直後には追い出されるという驚愕の体験も致しました(笑)
色々な図書館を利用していますが、これほど利用者に優しくない公立図書館は珍しいと思います。
 
と愚痴を言いつつも気が向けばまたお邪魔致します。
返信する
田山花袋記念館 (河田)
2009-10-30 17:01:16
 桶川の埼玉文学館、羽生市の郷土資料館、
館林市の花袋記念館の3カ所を見ることができた。館林市には、歴史に詳しい高鳥埼玉新聞タウン記者が同行していただいたので、実りある視察ができた。田舎教師について再認識するとともにこれからも大切にしようと思った。
返信する
近隣市民さんへ (クニ)
2009-10-31 03:03:56
先日はお会いできて嬉しかったです。
あまりに突然だったので驚きました。

羽生の図書館は行田や加須と違って単独で建っているので、
どうしても閉館時間が短くなってしまうんですよね。
昨年、実験的に閉館時間を延長したのですが、
利用者数はさほど変わらなかったようです。

「優しくない」かもしれませんが、質がいいのでぜひまたご利用下さいませ。
返信する
河田様へ (クニ)
2009-10-31 03:06:07
田山花袋文学記念館へご同行させていただき、大変ありがとうございました。
こういう表現が正しいのかはわかりませんが、とても「楽しかった」です。
歴史を目の当たりにするようで心が引き締まりました。
花袋記念館の展示物やお話の中で、いろいろと得るものも多かったです。

また、先日はマニフェスト検証大会に出席させていただきました。
活字やホームページとはひと味違う生のお声、
あるいは熱い魂がひしひしと感じられて、
大変有意義な時間を過ごすことができました。

厳しい状況が続いていますが、
羽生市に感じるのは前向きな姿勢です。
PRの仕方や民間ノウハウの導入、教育文化面の充実など、
いままでにない羽生が形成されてきていると実感しています。
よりよい町作りは行政の単独ではなく、
市民一人一人が一体となって作り上げていくということ……
微力ではありますが、
羽生の発展のために尽力したいと改めて思った次第です。
返信する
Unknown (近隣市民)
2009-11-03 08:41:31
単独で建っていることと閉館時間は関係ないのでは?
「質が良い」も疑問です。
携帯電話からの検索が出来ない(機種にもよるのかもしれないが…)事や、利用規約にない勝手なスタッフルールを作っていたり…
私が利用カードを作れる図書館のなかでは残念ながらワースト1です。
返信する
近隣市民さんへ (クニ)
2009-11-04 22:52:52
羽生近隣だと行田、加須、騎西が挙げられますが、
いずれも生涯学習センターの中に図書館が入っています。
羽生も七時まで開館時間を延ばしたこともあったのですが、
図書館のみの利用者というだけでは、
来館者数の大幅なアップは難しいようです。

ぼくは図書館を利用するとき、郷土資料室を見ます。
一般書籍ではなくそこにしか置いていない資料も多く、
いわば図書館の質の核となると勝手に思っています。
そういう意味で、羽生図書館は郷土資料の充実を意識的に取り組んでいますし、
ぼく自身ここで多くの資料と出会いました。
「質」は主観になってしまいますね。
もちろん、言いたいことがないわけではないのですが、
羽生図書館さんにはいつまでも生涯学習の拠点であり続けていただきたいと思っています。
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