クニの部屋 −北武蔵の風土記−

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

館林城下で女性の“龍神”が現れた?

2012年02月22日 | 奇談・昔語りの部屋
大きな沼や渕、池、井戸、川などにまつわる伝説は多い。
農耕を営む人々にとって、水は欠かせないものである。
また、人間の暮らしにとって、水は命の源だ。

ゆえに“水神”を祀り、祈りを捧げた。
水場を神聖化し、感謝と畏れの感情があっただろう。

館林城には、自然要害として広大な沼が横たわっていた。
いまもその沼は残り、「城沼」と呼ばれている。
沼に棲む龍神が城を守った……と言いたいところだが、
館林城下で膾炙されていたのは稲荷である。

城郭の一部に稲荷社が祀られ、
押し寄せてきた北条氏政や石田三成の軍勢の前に、
稲荷が怪奇を起こしたなどと伝えられている。

では、龍神はいないのかと言えばそうではない。
龍神は館林城下に現れた。
ある日、町の一角にある福寿院の境内で、突然水が吹き出た。
すると中から現れたのは、女官の姿をした龍神。

出現した龍神を前にして、何とも思わない人間はいない。
龍神が現れたこの井戸を尊び、
“青龍の井戸”と呼ばれるようになった。
戦国時代も終わった延宝年間(1673〜1681)のことである。

徳川綱吉の母“桂昌院”も黙ってはいない。
“青龍権現社”を再建し、
10石の朱印地を寄進したという。

現在もこの青龍の井戸は残っている。
駅前通りを城へ向かって左側にある小さな社だ。
さすがに井戸には蓋が閉まっているが、
平成10年の調査では7メートルもの深さがあったという。
落ちたらひとたまりもない。

湧き水、しかも神社やお寺に関係するものは神聖視する傾向がある。
埼玉県旧騎西町の玉敷神社では、
境内の御手洗を沸かして風呂にしたら、
病気が治るご神湯として大ヒット。
無論、商売ではないが、神の水は人を呼ぶ効果もある。

青龍の井戸も、延命長寿の霊験があると信じられていた。
そこで、7月10日の縁日では、
この水を貰いにくる参拝者で賑わっていたという。

いまでは目立たない場所にポツンとあるが、
龍神に畏れと親しみを覚える人は少なくなかっただろう。
蓋の閉められた井戸に、もう龍神はいないのだろうか?
深い井戸の底では、いまでも水が湧いているというが……。

※最初の写真は青龍の井戸(群馬県館林市)
ジャンル:
群馬県
コメント (2) |  トラックバック (0) |  この記事についてブログを書く
Messenger この記事をはてなブックマークに追加 mixiチェック シェア
« 春は“館”できざみ... | トップ | 子ども学芸員は将... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
館林 (jun)
2012-02-25 03:48:43
今回の館林特集、市民としてはうれしい限りです。興味深く読ませていただきました。
私のブログの方でも紹介させていただきました。
想像力広がる内容がよいですね。
junさんへ (クニ)
2012-02-25 07:47:44

最近、館林のラーメン屋さんによく足を運んでいます。
ついでに図書館とウォーキングもしているので、
館林にカメラを向けることが多くなりました。
と言っても、閉館後なので夜なんですけどね。

紹介していただき、ありがとうございます。
館林は幼い頃からよく足を運んでいた町なので、
とても愛着があることを再確認中です。

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
※文字化け等の原因になりますので、顔文字の利用はお控えください。
下記数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。この数字を読み取っていただくことで自動化されたプログラムによる投稿でないことを確認させていただいております。
数字4桁

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL

あわせて読む