歯科コラム in BKK

タイでお住まいの方にとってお役に立てるような歯科情報を目指しています。

入れ歯

2012年05月21日 | 日本とタイの違い
前回は「口の中に金属が見えるような処置をされているのは日本人だけ。」ということで、充填、インレー、クラウン、ブリッジと固定性の修復物の素材を日本と日本以外の地域での違いを含めて紹介しました。今回は固定性でないもの、そなわち取り外し可能なものとして入れ歯のことをお話いたします。今回は素材のことに言及するよりも日本の処置に照らし合わせたほうがわかりやすいと思います。日本では大きく分けて保険適用の入れ歯と保険外(自費)の入れ歯の2種類があります。保険のほうは金額のことを心配しなければいけないようなものではありません。逆に歯医者からするとどうやっても赤字項目です。できればあまりやりたがらない歯医者さんのほうが多いはずです。一方、保険外となるといきなり何十万円と目の玉が飛び出すような金額を言われます。素材の違いで説明されていますが、本当はそれだけでなく入れ歯作りにかかる手間暇、来院回数、下準備が違うのですが、このことは患者さんには説明しにくいところなのかあまり患者さんいはいわれていないようです。タイでも(日本以外では)大きく分けて2種類あります。Temporary PlateとRemovable Partial Dentureです。Temporary Plateというのは直訳すれば一時的な用途のプレートとなるのでしょうか。素材に金属はなく人工歯とレジンのプレートでできています。入れ歯を安定させるために歯にひっかけるもの(歯医者はクラスプとよんでいます。)はワイヤーです。これが日本の保険適用の入れ歯にあたります。保険適用の入れ歯の場合、クラスプは鋳造した金属のものも適用なのでTemporary Plateよりは少しましです。私は最初、日本の保険相当の入れ歯がTemporary Plate(暫間的な入れ歯)とよばれているのを聞いて情けなくなったのを覚えています。日本の歯科治療ってその程度?と。自費の入れ歯になるとレジンのプレートの部分が小さくなって金属のプレートになります。レジンのプレートと金属プレートでは何が違うかですが、まず大きさと厚みが違います。口の中に入れるものですから、患者さんにしてみれば出来る限り小さく、そして薄くというのが願いです。レジンで小さく薄くしてしまうと壊れやすくなります。保険で入れ歯をお作りすると、その後「痛みもないし食事も問題なくできる。でもここをおとしてもらえませんか?」とか「ここを薄くしてもらえませんか?」とよく言われたものです。入れ歯を患者さんはだいたいご高齢の方が多いのですが、そんな人生の先輩のかたから何度もこういった要求をされると無下に断るのもどうかなとついつい患者さんの言うとおりしたこともありました。向こうが透けるぐらいまで薄くしたこともありましたし、手で少し力を加えて歪ませると簡単に歪んだり。患者さんの要求だからと要求にこたえてやってはみたものの、壊れそうだなぁと弱気になったりもしたものです。実際、こんなことをすると壊れます。でも大きかったり分厚ければ不快なようです。その問題点を解決するのが金属床です。金属床は保険外ということでいきなり高くなってしまいます。京都大学で医療経済をやっておられる西村先生NHKで述べられていましたが、保険の素材で歯科の教科書に沿った作り方をした場合の適切な料金が15万円ぐらいと言われていました。なんと15万円の入れ歯を作って、歯医者の時間給は平均的なサラリーマン程度ということでした。最低の素材を使って15万円ですから金属床のような歯科でまっとうとされる素材を使うとそれにプラスされるわけですから数十万円というのは理解されると思います。ここで入れ歯でお困りの方への情報です。総入れ歯を例にとれば保険相当にあたるTemporary Plateがタイでは1つ1万バーツちょっとぐらいでしょうか。これだと日本よりも高いです。同じ素材でと考えると高いですが、日本と違って製作工程を省略されないのでずっと具合のいいものができているはずです。西村先生の言うところの15万円の入れ歯相当です。よくポリデントのような入れ歯安定剤が入れ歯には必要と思っているかたがいらっしゃいますが、そんなものなしで安定して食事できます。そして金属床のほうですが、日本では数十万円ですが、タイでは2万、3万バーツで手に入ります。安いからといって手は抜かれていませんし、日本での自費の入れ歯に使われている素材よりもいいものが使われていると言っていいほど素材もいいものが使われているはずです。逆に日本は金属床といっても、その素材はピンキリです。むしろ1級品が使われることがほとんどないと言っていいほどです。自費なのに。しかしタイはマーケットが小さいせいか逆に1級品しかないと言っていいほどです。安い素材を探すほうがむつかしいぐらいですから。歯科関係に知り合いのいらっしゃる人は「バイタリュームの金属床でイボクラーの人工歯を使っていくらぐらいですか?」と聞いてみられるといいです。(バイタリュームもイボクラーも1級の歯科素材です。)50万円はくだらないはずですから。ネットでも調べられるかもしれません。実はこの日本で自費扱いの入れ歯がもっともお得感のある処置だと思えるほどです。クラウンでオールセラミックが10万円以上が日本の相場ですがタイでは1.5万バーツ程度でお得感がありますが、そんなものが霞むほどのお得感が金属床の入れ歯にはあります。日本で入れ歯でお困りだったかたにはタイは治療費も安く、いい国に来られたと実感されるはずです。