「あい」の風景画

短いものがたり、そしてふぉとに添えた言葉たち

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初めまして、のご挨拶(このブログのコンセプトについて)

3004年12月21日 | 読んで下さる方々へ
「あい」には様々な形がある。
恋愛、友愛、家族愛、夫婦愛……。
ひとがいればひとの数だけ、
「あい」があって、新しいものが生まれてくる。
そんな無数の「あい」の形を、
無限に存在する「色」のイメージに置き換えて、
エッセイのような短編のような言葉のスケッチにしたい。


ココは私、久米はるかのオリジナル小説ブログとなっています。
どうか文章の無断転載などはしないで下さいませ。
(そんなこと誰も考えないだろうけど、一応☆)

全ての作品はフィクションです。登場する人物、地名などの固有名詞
およびできごとは全て架空の物語です。

※2007年9月追記※
『フォト小説』『ふぉと言葉』という試みを始めました。
各作品の写真はクリックすると拡大表示できます。
ことばと一緒にふぉとぐらふもお楽しみ下さい。
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風が鳴く

2008年07月04日 | てきすたいる・スケッチ
おうちが広くなった

ベッドが広くなった

車も中が広くなった


アナタとあたしの距離も広がった


いつだって手の届く場所にいたいのに。
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自覚外

2008年05月11日 | 炎色のスケッチ
最初から完璧な「母親」になれる人なんかいないわよ。
「母親としての自覚」なんて赤ちゃんと一緒に育ってくるから。
どんな子供嫌いの人だって、自分の子供はかわいいものよ。
産んでしまえばなんとかなるものよ。

「みんな経験してきたことなんだから、大丈夫」。


誰もが口を揃えてそう言った。
あたしは自分には無理だと思ったから堕ろそうと思ってたのに。
みんながあまりにも同じ事を言うから。
そんなものかも知れないって思って。
信じたのに。

かわいくなんか思えない。
育てる自信なんかいつまで経ってもできやしない。
誰も助けてくれない。
わかってるよ、あたしまだ子供なんだってば。
だから無理だって言ってたんじゃん!
それでも何とかなるなんて、嘘ばっかりだ。
何ともならないじゃんか!
嘘つき! 誰が責任取ってくれるのさ。

イライラする イライラする
目の前で泣き続けるこの物体
黙らせたい ねぇ どうして
それでもあたしが悪いことになるわけ?
騙されたあたしが悪いってこと?
無責任にあたしに吹き込んだ人たちは
あたしを後ろ指さしながら
「あの子は異常だ、フツーじゃない、理解できない」
って囁くわけ?

何も考えたくない
一人になりたい
一人にして
一人になるわ
一人にさせろ

一人に、なるんだ

なってやる。
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遅咲きの春

2008年04月25日 | 雪色のスケッチ
懐かしい人の顔を見つけた。
それはインターネットのウェブサイト。

シモヤカズトシ。
もう10年も昔に、わたしのお客さんだった人。
きっともう、40に手が届いているはずの人。
博多の、普通の家に生まれた二男坊。
進学校に通っていたのに二男には大学は必要ないと、行かせてもらえなかったという。
周りはみんな国公立や有名私立大学に進学が決まっていた。
自分だけ就職することはプライドが許さなくて、外国に渡った。
そこで就職した会社は世界規模のところで、気付いたら日本支店に配属になって帰国した。
「周りはみんなバカばっかだ」
「いつか周りのやつらやオヤジを見返してやる」
酔っ払っていつも口癖のように言ってたっけ。
「スーツを着て髪を短くしてれば仕事ができるのか? 違うだろう」
言い続けて、ジーンズにTシャツ、ロン毛のスタイルを貫いていた。
そして酔いが深まるとわたしの手を握って涙を流す。
悔しいんだ、と呟きながら。
わたしが昼間の仕事に就職して、夜の世界から足を洗った後も、しばらくはメールだけが続いていた。
そしていつの間にか、途切れた。
どうしてるかな、たまに思い出していた。

そんなシモヤさんのことをふっと思い出して、彼の口にしていた会社名をインターネットで検索をしてみたのは、ほんの気まぐれにすぎなかった。
まさかと思ったけれど、サイト内で名前を検索したら、あっさりと引っかかった。
マネージャーだって。
写真入りで、メッセージまで載っている。
あんなに反発していたはずのスーツを着て、髪を短くして。
笑顔より悲しい顔の記憶の方が大きいのに、そこにあった写真を見てすぐに彼だとわかった。
少し太ったかな。
休みの日は子供と遊ぶのが楽しみ、だって。
結婚したんだ。子供もできたんだね。
もう寂しくないね。あなたを理解してくれる人と出会えたんだね。
もう夜に一人で、悔しさをぶちまけながらお酒を飲まなくてもいいんだね。

良かったね、本当に良かった。
少し遅くても、ちゃんと春は来たんだね。
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14610分の一夜

2008年03月16日 | 闇色のスケッチ
あと何回の夜に こうやって
あなたの腕に抱かれて 眠れるだろう?
温かい 日なたの匂いいっぱいの
あなたの胸に 抱かれて 眠れるだろう?

365日かける40年

たったの14610日
たったの14610日
なのに
例えばあなたやあたしが 入院したら
14610日はあっという間に減ってしまう
例えばもしも明日 あたしが命を落としたら
14610日は残りゼロになってしまう

今夜もちょっぴり 言い争いをしたけど
明日の夜もちゃんとこの腕に抱かれて眠れますように
願いながら
そっと 身体いっぱいに
あなたの匂いを吸い込んで


眠る
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見えない鉄壁

2007年11月20日 | 錆色のスケッチ
初めてその人と出会った時、美知は何かこれまでに感じたことのない強さで引っ張られた。
引っ張られた、という表現が何よりもぴったりだった。
それが、恋と呼んでいいものなのか、尊敬の念のようなものなのか、それすらもわからない。
入ったばかりの職場で、まだほとんどの人の名前も覚えていなかった。
そこへ外回りから帰ってきた「彼」がやってきた。
自分の感情が何なのかもわからないまま、けれども次の日から、美知は毎日視線の先に彼の姿を探していた。
連絡で電話が来る。
書類に彼の筆跡を見る。
引継ぎで言葉を交わす。
その小さな積み重ねがやがて美知の中ではっきりとした形になるまでにはさほど時間はかからなかった。
けれども彼女はその「形」がなんであるかを自覚したり、認めたりするわけにはいかなかった。
仕事の合間の清涼剤。
美知は毎朝、自分自身にそう言い聞かせるようになっていた。

それでも自分の心に嘘はつけない。
気持ちの中だけの遊び、自分だけの秘密。
言い聞かせれば聞かせるほど、「形」は大きく膨らんでいく。
あの人にもっと近付きたい。触れたい。
二人きりで話をしてみたい。仕事とはまるで関係のない話を。
でもそうやって近付いて、それからどうしようと言うの?……

彼の左手の薬指には、きらびやかに輝くリングがある。
美知には将来を約束した相手がいる。

ダメと思うほどに、余計に抑えられない想いだけが膨張していく。
はっきりと見えているのに近付くことのできない、場所。
手を伸ばせば触れられそうなのに、触れることのできない、場所。
ガラス越しだからこそ美しく見える景色なのかも知れない。
でも。

その先に何が待つのかを想像すらできないまま、彼女は今日も空調の効いた部屋の中から、ガラスにぴったりと頬をつけて向こう側の景色を掴もうともがいている。

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ごっこあそび

2007年10月19日 | 無色のスケッチ
あのね、
小さい頃にやったみたいにさ、
ごっこ遊びができたらって思うことあるよね。
家族もお友だちも自分の姿も、
ぜぇんぶ都合のいいことにしちゃってさ。
でも遊びだから。
ごっこだから。
ホンモノじゃないから。
何があっても、
どんな自分になってても、
「おしまい!」でみんな消せるの。
例えば 誰かが 死んで ても、
ちゃんと生き返れるの。
大人になったらやっちゃいけないって誰かが決めた?

……インターネットネットはきっと大人のごっこあそび
でもうまく「おしまい!」が言えなくて
今日も誰かが仮想と現実の境目を踏み外す……

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遠い記憶

2007年09月05日 | 錆色のスケッチ
あの夜 ただただ歩き続けた 月のない海辺
打ち寄せる暗い波に 目印のように光っていた火花
青い火花 ウミホタル はじけた波の合間で
ここまでおいでって ここからがあなたの行きたい場所だよって
教えてくれた 誘ってた 早くおいでって呼んでいた

知らなかったんだ 
彼女がいるって聞いていた
一緒に住んでるって聞いていた
でも 結婚してるなんて 聞いてなかった
子供もいたんだって
でき婚 0歳の子供 じゃあ私といたあの瞬間は
家で相手にしてもらえないからの暇つぶし

街なかで泣き叫ぶ 赤ん坊の姿
あの女の子供も あんな感じ?
首を絞めて 飛び出した目と舌を引きずり出して
腹を切り裂いて 内臓を全部握りつぶして
ねぇ そんな姿になった我が子でも
あなたは「かわいい」と言い続けられる?
悪いのは私じゃない 私をそう仕向けたあなたのせい
責めるなら自分を責めて 当然の代償
安心して あなたを切り裂いたりはしないから

今のうちに止めて 早く お願い
止めてくれないの どうして
私はあなたが止めてくれないなら
自分で自分を止めるしかないのね
自分自身の時間を 今すぐに
今すぐに

あの夜 ただただ歩き続けた 月のない海辺
打ち寄せる暗い波に 目印のように光っていた火花
青い火花 ウミホタル はじけた波の合間で
ここまでおいでって ここからがあなたの行きたい場所だよって
教えてくれた 誘ってた 早くおいでって叫んでた

一歩踏み出した時に 鳴り出したケータイ
大切な友人からの 何気ない着信
そして私は ウミホタルに背を向けた

光らない波に洗われる 錆びた自転車
戻ることもない 遠い記憶

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ぬれぎぬ

2006年10月25日 | 月色のスケッチ
毎週土曜日は、朝から隣町の公園にあるテニスコートへ会社の連中とテニスをしに行くのが、長年の柴山のならわしだった。
キャンプ場や野球場まである大きなその公園には、テニスコートのすぐ脇にイチョウ並木があって、吹き抜ける風の心地いい散歩道になっている。
秋になれば雌木が実をつけ、熟しては次々と道に落ちてくる。
これがいい酒の肴になるので、時期になると妻は必ず「お土産をよろしくね」と柴山にせがむのだった。
ギンナンは、食べる部分は硬い殻に覆われているが、その外側の柔らかいところは熟すとなんともいえない悪臭を放つ。
本当ならそこを洗い流してから帰りたいのだが、公園に水場はあっても、ラケットを持って電車で通うその場所へバケツまで持っていくことはできないし、一つ一つ手に持って洗い流すのは手間がかかりすぎる。
自然、拾ったギンナンは外側の軟い部分を残したまま、ビニール袋を二重三重にした形で持ち帰ることになる。
その日も柴山は、念には念を入れて袋の口をきっちりと縛り、仲間の車で駅まで送られてから電車へと乗り込んだ。
夕暮れ時の各駅停車の座席は、行楽帰りで疲れた家族連れで座席はほぼ埋まっていた。
柴山はラケットと袋を乗せると、つり革に捕まって影の長くなった町の景色をぼんやりと眺めた。
電車はやがて重たそうに走り始めた。
テニスの後の心地よい疲れと、レストハウスで軽くあおったビールのおかげで、柴山はついたったままうとうととしかかった。
「あれっ」
と、突然、若い女の小さいながらも鋭い声がして、柴山はハッと目を覚ました。
彼の前の座席には5歳くらいの女の子が、母親に寄り添うようにしてちょこんと腰をかけている。
声はその母親が発したようだった。
女の子はきょとんとした顔で母親を見上げている。
一方の母親は眉間に深いしわを寄せて女の子をにらみつけていた。
「あんた、またやっちゃったでしょう」
「してないよ」
「嘘おっしゃい。臭うわよ」
「してないってば」
母親は声を殺しながらも厳しく追求をし、子供はすでに半べそをかきながら懸命に母親に自分じゃないと訴える。
その時柴山は思わずあっと声を上げそうになった。
女の子が粗相したと疑われている「その臭い」の正体に思い当たったのだ。
そっと目線を外し、二人の真上にある網棚を見る。
そこにはきっちりと口を閉じたはずのビニール袋が置いてある。
口は緩んでもいないし、ビニールに破れができたわけでもない。
けれど、臭いの元がそこから来ていることは疑いようがなかった。
「泣いたってダメよ、本当にあんたって子はもう……」
母親の低い小言が続き、女の子は鼻水と涙でぐしゃぐしゃになりながら俯いている。
柴山は女の子の疑いを晴らしてあげるべきだ、と思いつつ、今さらどう切り出そうと考えあぐねているうちに、とうとう下車駅のホームに電車が滑り込んだ。
ラケットと一緒に、ギンナンの袋を網棚から下ろす。
とその時、母親が顔を上げて目で袋を追った。
「ごめんなさい」
柴山は鋭い視線が自分の手元に注がれているのを痛いほどに感じながら、小さな声でそれだけ言って逃げるように電車を降りた。

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物言う株主

2006年06月07日 | 炎色のスケッチ
翌朝、僕の消極的な制止を振り切って、妻は9時きっかりに会社に電話をかけた。
「柴田の家内です。いつも柴田がお世話になっております」
声は穏やかに聞こえるが、その奥に秘めたマグマのようなものがふつふつと音を立てているのが聞こえるようだ。
電話は、やがて社長に取り次がれたようだった。
「先日の主人の件ですが」
そう切り出す妻に、返事をしているらしい社長の低いバスが、受話器を通してかすかに聞こえてくる。
と、一瞬にして妻の表情が変わった。
「バカにしくさるのも大概にせぇよ!
家計を握る主婦っちゅうのは、物言う株主や。
家族と財産守るためなら口も出して当たり前やろ!
ダンナっちゅう大事な財産を会社に投資してるんやから。
こっちの判断の甘さで損するんは自己責任やけど、会社の勝手な都合ならこっちも黙っちゃいられないんでね。
公平な場所できっちり白黒つけさせてもらうんで、覚悟しや!」
郷里の言葉を交えながら次々とまくし立てている、結婚生活15年の中で初めて遭った妻の姿を、僕は恐れと尊敬の念を抱きながらぼんやりと眺めていた。
やがて妻が勝ち誇った笑みを浮かべたまま電話を切った。
さて、明日はどんな顔をして出社すればいいだろうか。
いや、明日は会社に行く必要はないのだった。
明日どころか、あさっても、その次も。
僕の会社生活は昨日、まったく突然に幕が引かれてしまったのだから。
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