うどん 熊五郎のブログ

日替わりメニューの紹介や店での出来事など徒然なるままにつづりたいと思います。

連載106

2013年02月26日 | 学習室
熊五郎と12名の仲間達


熊五郎は中学時代、成績の良かった姉と比較された記憶がある。元々、大の勉強嫌いであった熊五郎は反発して野球にのめり込んでいったのである。受験の際、母に合格率八割と担任から言われたことを盾に母は、県北の進学校を受験をさせようと近くに住む伯父まで動員して説得された嫌な思い出がある。志多には五歳上の姉がいて、県北の進学女子校に合格している。その姉も小学一年生から中学三年生まで指導をした。志多も姉には及ばないが県北の進学校に十分合格できる学力は備わっていた。
「志多君。もしかしてお姉ちゃんと比較されてるのかな。」
その言葉を聞くなり志多は涙を流しながら
「はい。」
と頷いた。
「そうか、解った。実は俺もな、姉さんと比較されて辛い思いをしたことがあるんだ。志多君の気持ち、解る気がする。」
その言葉に今度は声にならないような声でしゃくり上げるように志多は泣き始めた。
「志多君。いくら比較されても志多君は志多君でしかないんだよ。お姉ちゃんはお姉ちゃんで一人一人、それぞれが別人なんだ。俺はお姉ちゃんも九年間指導したけど、数え切れない程、お姉ちゃんより良いところ見つけてるぞ。黙っていないで話してごらん。」
「実は、親にいつも姉ちゃんと比較されているのが辛いんです。」
始めて志多は口を開いた。
「そんなに辛いか。」
「はい。俺には姉ちゃんのような才能がないんです。」
「そんなことはないよ志多君。この前、英検の準二級合格したじゃないか。それだけでも勝ててるんだから才能がないと思っちゃ駄目だよ! それに、優しいところいっぱいあるし、頑張り屋だし、俺が見て勝てるところいっぱいあるぞ。」
「はい。」
「それにな。一番大切なことはお姉ちゃんと志多君は一緒じゃない。それぞれが別々なんだよ。総てが一緒じゃロボットと一緒だよ。一人一人の個性をもっと大切にしようよ。」
熊五郎の話に徐々に志多も心が落ち着いてきたのか笑顔が見られるようになった。それから熊五郎は自分が比較されたことの辛さを総て志多に話して聞かせた。一時間程二人の会話は続いた。志多も心のつかえが下りたのかいつもの笑顔を取り戻していた。182
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