第十三章
回想結婚
瑠美の毅然とした眼が、脳裏から離れない。「変な女が、訪ねてきて、参ったよー!馬鹿じゃない。初対面の人に対してあれは、性格悪いよ。親の顔が観てみたい、どこが良くて付き合ってるの、男って、単純の固まり」健二に大きな声で叫べたら、どんなに楽だろう。聞きたいことが、ある時に限って、残業続きの健二に、会えない。携帯電話で話すには、内容が重たい。健二が、しつこい話しが嫌いなことは、久兄さんの話しを、ほとんど聞かず相槌を上手くうつ態度で解る。
「江美ちゃん、今日もひとり?」
テレビの台風情報を気にしながらマスターが聞く。
「あのね、みんなどうして、結婚するの?」「妻を亡くして、三年のヤモメには、ちょっとキツイ質問だなー僕以外の人に聞いてほしいなあー」マスターがカズの顔をチラッと伺う。「こっちに振ってくるかー、今日は口のかるーい人が欠席だから、たまには、江美ちゃんのお話に付き合ってみるか」
「それって久兄さんのこと」江美が振り向きながら、カズを見る。「女は誰でも最初は初々しいわけよ。付き合ってる時は喧嘩して拗ねても、言い訳するタイミングを余裕で空けてくれてたしー」
「結婚したらどうなった?」江美が、椅子ごと体勢を変えながら、声を弾ませる。
「余裕なんて、全然ナシ!自分のことは、棚に上げといて、文句マシンガンの連打、あれは、お経の世界だよ。毎日同じこと言ってるよ」カズは、グラスを空けて、マスターに合図を送る。
「なんか、気の毒だなー」江美は、割り箸を指でなぞる。
「だろう、かわいそうだろー。あいつも昔はちょうど、今の江美ちゃんみたいに恥じらいがあったんだよー。帰れるものなら、今の子供達連れて、あの頃のあいつと一緒になりたーい」
「マスター、カズ兄さん、今日はよくしゃべるね」「江美ちゃんに気を遣ってるんだよ。久に聞いたんだよ。久が瑠美ちゃんに江美ちゃんのこと話したって、健ちゃんにはそれとなく言っておくよ、それより、江美ちゃん顔色悪いよ、風邪じゃない?」「うん、アリガトウ。私の風邪より、台風が心配だね。マスター、明日、台風来たら、帰れなくなるね。徳島であるんでしょう、奥さんの法事」
「うん、お墓は、藍住だからねー女房の口癖だったから。死んだら親の隣にお墓造ってって。なんて言いながら、親のほうがまだ元気で長生きしてるよ」
「マスター、結婚してよかった?」「よかったから、もう一度したい」
マスターが、暖簾を片付けながら、自分のジョークに笑っていた。つけっぱなしのテレビから、台風22号の予想針路が、流れていた。降り出した雨音が江美の小さなクシャミを、そっと掻き消していった。
回想結婚
瑠美の毅然とした眼が、脳裏から離れない。「変な女が、訪ねてきて、参ったよー!馬鹿じゃない。初対面の人に対してあれは、性格悪いよ。親の顔が観てみたい、どこが良くて付き合ってるの、男って、単純の固まり」健二に大きな声で叫べたら、どんなに楽だろう。聞きたいことが、ある時に限って、残業続きの健二に、会えない。携帯電話で話すには、内容が重たい。健二が、しつこい話しが嫌いなことは、久兄さんの話しを、ほとんど聞かず相槌を上手くうつ態度で解る。
「江美ちゃん、今日もひとり?」
テレビの台風情報を気にしながらマスターが聞く。
「あのね、みんなどうして、結婚するの?」「妻を亡くして、三年のヤモメには、ちょっとキツイ質問だなー僕以外の人に聞いてほしいなあー」マスターがカズの顔をチラッと伺う。「こっちに振ってくるかー、今日は口のかるーい人が欠席だから、たまには、江美ちゃんのお話に付き合ってみるか」
「それって久兄さんのこと」江美が振り向きながら、カズを見る。「女は誰でも最初は初々しいわけよ。付き合ってる時は喧嘩して拗ねても、言い訳するタイミングを余裕で空けてくれてたしー」
「結婚したらどうなった?」江美が、椅子ごと体勢を変えながら、声を弾ませる。
「余裕なんて、全然ナシ!自分のことは、棚に上げといて、文句マシンガンの連打、あれは、お経の世界だよ。毎日同じこと言ってるよ」カズは、グラスを空けて、マスターに合図を送る。
「なんか、気の毒だなー」江美は、割り箸を指でなぞる。
「だろう、かわいそうだろー。あいつも昔はちょうど、今の江美ちゃんみたいに恥じらいがあったんだよー。帰れるものなら、今の子供達連れて、あの頃のあいつと一緒になりたーい」
「マスター、カズ兄さん、今日はよくしゃべるね」「江美ちゃんに気を遣ってるんだよ。久に聞いたんだよ。久が瑠美ちゃんに江美ちゃんのこと話したって、健ちゃんにはそれとなく言っておくよ、それより、江美ちゃん顔色悪いよ、風邪じゃない?」「うん、アリガトウ。私の風邪より、台風が心配だね。マスター、明日、台風来たら、帰れなくなるね。徳島であるんでしょう、奥さんの法事」
「うん、お墓は、藍住だからねー女房の口癖だったから。死んだら親の隣にお墓造ってって。なんて言いながら、親のほうがまだ元気で長生きしてるよ」
「マスター、結婚してよかった?」「よかったから、もう一度したい」
マスターが、暖簾を片付けながら、自分のジョークに笑っていた。つけっぱなしのテレビから、台風22号の予想針路が、流れていた。降り出した雨音が江美の小さなクシャミを、そっと掻き消していった。











