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福島県の甲状腺がん 115+59=174人 本格検査の推定発症率(8.72)は先行検査(3.83)の倍以上

2016年10月02日 | 東日本大震災・原発事故
2月以降作業できていなかったのですが、6月と9月発表のデータを一緒にチェックしてみました。結果としては新たな変化はなく、これまでと同じペースで甲状腺がん(確定・疑い)が増えており、その解釈は三巡目以降の変化にかかっているという点でも見解は変わりません。
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先行検査①(2011-13)
       甲状腺がん     有病率   推定発症率
       確定+疑い=合計  1/10万 (※1)
2015年8月  98 14 112 37.3  3.73
2016年6月 101 14 115 38.3  3.83
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本格検査②(2014-15)
       甲状腺がん     有病率   推定発症率
       確定+疑い=合計  1/10万 (※2)
2016年2月  16 35 51  21.6  8.64
2016年6月  30 27 57  21.3  8.52
2016年9月  34 25 59  21.8  8.72
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(これまで折れ線グラフで表記していましたが、各時点での検査の進捗状況を<増加>と誤解しやすいので、縦棒グラフに変更しました)

9月から三巡目の本格検査の結果も公表されていますが、まだ判定結果は出ていません。混同を防ぐため、ここでは先行検査①、本格検査②、本格検査③と表記することにします。

先行検査①では経過観察の中で確定が3人増加し、115人に達しています。本格検査②でも51→57→59人と増加し、その中で確定例の割合も増加しています。

ここで、先行検査①(115人)と本格検査②(59人)を足して174人に増加したと書くことは、それ自体間違いとは言えませんが、それぞれの検査の性格と経時的変化を見誤ることにつながるので、ここでは「足して増えたと騒ぐ」のではなく、「割って比較する」ことを続けています。

有病率(検査集団における発見率)は一次検査受診者数を分母にして単純に割った数字で、推定発症率は当ブログでは独自に次のような方法で比較しています。
 ※1 先行検査① スクリーニング効果を10倍として 1/10
 ※2 本格検査② 検査間隔を2.5年として 1/2.5

繰り返しになりますが若干の説明を加えます。スクリーニング効果にもっと大きい数字を入れれば先行検査①における推定発症率は低くなりますが、本格検査との差がより大きくなってしまいます。本格検査②の検査間隔は2年の人が多いので、平均すれば2.5年よりも短くなるので、2.5で割っているのは保守的な数字です(実際よりも低く見ている可能性が大きい)。

推定発症率は、
先行検査①が2016年6月の時点で 3.83
本格検査②が2016年9月の時点で 8.72

本格検査②の59人の、先行検査①の結果は「A判定が54人(A1 28人、A2 26人)、B判定が5人」です。

スクリーニング効果が大きいと思われる先行検査①の115人で大騒ぎしている人が、その後たった2〜2.5年で59人(本格検査②)も発症(*)していることに鈍感なのは、繰り返しになりますが、「割らずに足している」からだと思われます。

*ここで言う「発症」は、がんが実際に発生した時期に関わらず、検査で検出されて診断されるまで増大したことを意味します。

本格検査②だけで判断すれば、これまでと同様に「先行検査①と比べて増加は明らか」となりますが、これが実際に意味のある数字なのか、何らかの影響による見かけ上のものなのかは、三巡目以降の結果を追っていかないと判断できません。

その意味でも、福島県小児科医会の要請は言語道断と言えます。その点については、稿をあらためたいと思います。

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